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ならはくの仏像:奈良国立博物館の仏教美術 / 奥健夫(石川県立美術館特別展「まるごと奈良博」記念講演会;2024年7月20日)

日時:2024年7月20日(土)13:30~
場所:石川県立美術館ホール
講演者:奥 健夫(武蔵野美術大学教授)

まだ展覧会の方は観ていないのですが,7月6日から石川県立美術館で行われている特別展「まるごと奈良博:奈良国立工芸館至高の仏教美術コレクション」の関連企画として標記の講演会が行われたので聴いてきました。実は…7月15日に石川県立美術館で行われた「笑い飯の楽しい仏教美術トークショー」の方に行き損なったので(申し込みしようと思ったら既に満席),今回こそという思いで参加してきました(今回もほぼ満席)。

今回の奥先生の講演は,奈良博で所蔵している仏像に絞った内容で,最初に仏像についての概説的な話があった後,日本の仏教史に沿った形で今回展示されているいくつかの仏像について解説がされました。私自身,仏教についても仏教美術についてもあまり知識はないのですが,スライドを使って具体的に説明をされたので,仏像のスタイル・種類や材料の変遷などについての知識を得ることができました。以下,概要や印象に残った点などを紹介します。

1.仏教と視覚イメージ

  • 仏教は紀元前5~6世紀頃に創始された後,いろいろな国に伝播しながら豊かな視覚表象の世界を生み出してきた。

  • この「伝播」がポイント。特定の土地を越えて広めようとする際,コミュニケーションの手段として視覚イメージが必要になる。逆に言うと特定の地域内等で既にイメージが共有化されているような場合,必ずしもイメージは必要にはならない((例)神道などはそういう場合が多い)。

  • 伝播については次の2つのパターンがある。①伝播して現地の内容に翻案されるパターン,②翻案されずそのままの形で伝えられ,超越性や神秘性が強調されるパターン

  • 仏像の機能には次の2つがある,①造られるもの=造ることで功徳が得られるもの,②拝まれ,力を及ぼすもの

2.具体的な仏像についての解説

こういったことを踏まえ,奈良博像の代表的な仏像についての解説がされました。各時代,各タイプごとに結構細かいチェックポイントがあり,スライドの写真だけではちょっと分からない部分もありましたが,鑑賞する際の参考になると思いました。説明のあった仏像の名前は大体メモしてきたので,奈良博のWebサイトに乗っていた画像情報と一緒に紹介しましょう

(1)如来立像
この像だったか…少々自信はありません。百済から仏教が伝わった後の過渡的な時代のもの。頭部だけは新しい様式とのことでした。
https://www.narahaku.go.jp/collection/1256-0.html

(2)十一面観音立像(重要文化財)
奈良博のものが最初の日本製の十一面観音像とのこと
https://www.narahaku.go.jp/collection/882-0.html

(3)薬師如来像(国宝)
木造なのですが「観念上の乾漆像」とのこと。なで肩が良いですね。
https://www.narahaku.go.jp/collection/645-0.html

(4)地蔵菩薩・龍樹菩薩
穏やかで優美な定朝(定朝)のスタイル。穏やかで優美な仏像の典型(当時の美意識は類型的なものが尊ばれたとのこと)https://www.narahaku.go.jp/collection/1014-0.html

(5)獅子(重要文化財)
時代によって形が違っているとのこと。これは平安時代の作品。
https://www.narahaku.go.jp/collection/758-0.html

(6)愛染明王像(重要文化財)
非常に短期間で造られた,まとまりの良い小さな像。清浄な木を選ぶなど材料にもこだわりがあるとのことで,この像も東大寺大仏殿の木(消失した際に残った木)を使って造ったとのこと。
https://www.narahaku.go.jp/collection/958-2.html

(7)伽藍神立像
これは一度見たら忘れられない像ですね。従来「走り大黒天」として親しまれていたそうですが,実は大黒天ではないことが判明。生活の乱れたお坊さんに懲罰を与える神様とのこと。ただし,大黒天も元々は罰を与える神だったのが,福の神に転じたものとのこと。
https://www.narahaku.go.jp/collection/1077-0.html

この展覧会には8月に観に行く予定なので(本日も大盛況のようでした),絶好の予習になりました。

PS. 奥さんと石川県立美術館との関わりは,1998年の百済観音展以来とのこと。「百済観音展を見た方はいらっしゃいますか?」と奥さんが尋ねたところ,パラパラと手を上げる人がおり驚いたのですが,奥さん自身もびっくりされていた感じでした。この辺は石川県ならではなのでしょうか?


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