見出し画像

一人静(ヒトリシズカ)を見つけた千ヶ滝

人がまだ山に訪れない頃にひっそりと咲き、人知れず散ってゆくという花があります。その名も、一人静。
印象に残る名前なので存在だけは知っていましたが、見つけることは難しいんだろうなと思っていました。ところが、ひょんな場所で出会ってしまったのです。

大門川三滝の1つ、千ヶ滝

北杜市には有名な滝がいくつもあります。
大門川の水系だけでも、上流から宮司の滝、千ヶ滝、大滝の3つが有名です。
千ヶ滝は駐車場までのアクセスも悪くなく、車を降りてから2,3分で滝壺まで下りることができる割に、観光客も少なく穴場の場所ですね。

ゴールデンウィークを迎える直前の週末。
滝に着いた時、私たち家族以外に人はいませんでした。その後、何組かの人がやってきました。ほどよく閑散とした観光地です。

千ヶ滝の駐車場からの風景

写真の中に小さく、千ヶ滝の看板が見えますね。
その右奥に続く道を進んでいきます。
目の前に見えている川が、この奥で滝となって流れます。その落差の分だけ、私たちもちょっと急な階段を下りていく形です。

千ヶ滝の全景

そんなに大きな滝ではありません。
でも、写真では伝えきれないのですが、どうどうと音を立てて流れ込んでいて、迫力があります。
滝壺の近くまで行くことができます。滝から舞い散る水しぶき。視覚と聴覚だけでなく、水にぬれるという触覚も通して滝を感じることができます。

子ども達を連れていくにも、いい場所です。
私の作戦は、次のとおりでした。
・ 私は、春の植物と自然を観察したい
・ でも、山や森の中のハイキングだと、子どもたちが乗り気にならない
・ そうだ、川に行けば私も子どもたちも楽しめる

まさに、作戦どおりでした。
中学生と小学生の息子たちも、我先にと滝の方へ降りていき、その後も川に落ちないように石伝いに歩くスリルを味わっていました。
(そして、案の定次男は川に落ち、靴がズブヌレでした。想定の範囲内)

私はというと、滝の素晴らしさも味わいつつ、周りの植物に目を光らせます。

見慣れない植物を発見

まだ初春なので、植物がうっそうと茂っているわけではありません。
枯れ葉や木の実が目立つ土の中から、ところどころに点在する緑に目を配ります。
すると、ツクシの化け物みたいな、変な植物を見つけました。
その一角だけ、同じ植物が20本ほどニョキニョキと生えています。
途中に葉っぱはなく、細い茎の上に大きな蕾や花に見える部分を持っています。

初めて見る変な植物(拡大なんで画質が悪いです)

実は、発見した時は、この植物の名前が分からなかったんですよね。
なぜなら、スマホが圏外だったから。
いつも重宝する植物判定アプリも、ネットが使えない環境では無力です。とりあえず、写真だけを撮ります。

父の撮影を邪魔する次男

次男がふざけて、撮影を邪魔します。
でも、そのおかげで植物のサイズが分かりやすくなりました。結構、小さな植物です。高さは、まだ5cmくらいでしょうか。

家に帰ってから調べてみてびっくり。
これこそが、一人静だったのです。
今はまだ花の部分が葉に包まれたような形になっていますが、これから葉が開いて、さらに美しい見た目に変わります。
私が撮った写真は分かりにくいので、Wikipediaの写真へのリンクも貼っておきますね。

Chloranthus japonicus s4 - ヒトリシズカ - Wikipedia

でも、一人で静かという名前に反して、20人くらいでワイワイ楽しく集まっているように見えますよね。
実は、「一人」というのは単独で咲くことを意味しているのではなく、フタリシズカという近縁主との対比でつけられた名前なのです。
写真で分かるように、一人静は最上部に穂のような1本の花序があり、そこに白い花が集まって咲いています。
一方、二人静は、その花序が2本もあるのです。

フタリシズカ - Wikipedia

なるほど。これで完全に覚えました。
今度は、二人静を発見できるように頑張りたいと思います。
なお、二人静は花序が2本のもの以外に、花序が6本とかたくさん生えるものもあるようです。そこまで多いと、あまり静かな感じがしませんね。

ちなみに、一人静の中にも、花序が2本あるものがあるようです。
こうなってくると、もう何が何だか分かりません。

ネコノメソウも発見

その他にも、私にとって新発見の植物がありました。

ツボゴケとユキノシタとネコノメソウ

この写真に写っている苔(ツボゴケ)も葉(ユキノシタ)も、このあたりの川や沢沿いにはたくさん生えている植物です。
そのユキノシタから、花のように伸びている部分がちらほら見えます。
はて。ユキノシタって、こんな花が咲くんだったかな??

圏外のスマホでは調べられなかったので、これも帰ってから調べました。
この伸びている部分は、ネコノメソウ(アプリによると、ツルネコノメソウ)という植物ですね。
猫の目に似ているからと名付けられた植物です。

でも、どこが猫の目なんでしょうね。
Wikipediaによると、「果実が深く細く裂開したようすが、瞳孔が縦に狭くなった昼間のネコの目に似ていることにちなむ」とあります。
まだ実がついていないので、この状態では分からないですね。
ネットを探すと、実がついて細かな種が見える様子の写真がたくさんアップされています。私が分かりやすかったのは、以下のページの最後の写真でした。

果実が細めた「猫の目」に見えるネコノメソウ - 井伊影男の植物観察 (goo.ne.jp)

結論:滝は良い

今回の「滝を見に行く」という試みは、大人も子どもも楽しめて大成功でした。
有名な吐竜の滝とかは何度もいったので、子どもたちも飽きてしまって乗り気ではなかったのですが、初めて訪問する滝というのはアドレナリンが出やすいようです。
4月下旬にもかかわらず、息子たちは川に入りたがり、サンダルを持ってこなかったことを後悔しましたし、次男に至っては水着に着替えて川に入りたいとまで言ってました。
他にも、滝を巡ってみようと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?