第3回東奥文学賞 地方行政の奮闘、雪国生活の闇と光
青柳隼人「北の神話」:大賞。県庁職員の課長である櫻城一夫は、中央から出向してきた年下の上司となる都島義男部長と共に、二つの古い病院を統合し最先端医療を取り扱う総合病院に建て替える計画、「Xプラン」の実現を画策する――。とにかくドキュメンタリーと見間違うほどのリアリティ。一つの病院建設のために、どれほどの人との交渉が必要か。医師学会会長、既存病院の院長、市長、県知事……それこそ「神話」と言えるくらいの壮大な道のりであることが伝わってきます。住民に対する説明会の描写は短い項数ながらもそれぞれキャラが立ち、一人一人の切実な訴えに思わず涙腺が緩みます。また、結婚した途端に雪国での生活を避けたくなる、という何気ないが率直な一言が最も重く響きました。
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