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寝ずの番、石油ストーブの前

言葉にするととてもありふれたものになってしまうのが歯痒いのだけど、優しいおじいちゃんだった。 

今しがた、1時間だけ仮眠をとってきた。それまではおじいちゃんの話だとか、従兄弟の高校時代の名物教師の話だとか、将棋の話だとかしてて、あとは今夜のことを忘れないようにあまり開いたことのない文庫本をぱらぱらとまくってみたりして。


もともとどちらかといえば朝方の私は、なんとか巻き線香の守りためどろりとした瞼を引き上げるのが精一杯。大切な一夜を閉じ込める意味でも、こうして久々のnoteを書くにいたった。膝から先があたたかい。まどろむ。


以前母が息を引き取った時。4年前。何もかもを覚えておこうとどこか必死だった気がするが、柔軟になったのか人には得手不得手があると悟りを開いたのか、揺蕩うような気持ちで昨日、今日を過ごしている。

葬儀というのは要らぬものを考えぬように実に見事に出来ているなとしみじみ思う。必要なものを揃える。この水はもう捨てねばならない。あのお膳は次に寺に行くときに持って行く。…からの、お坊さんのやたらといい声の読経、鐘のかんかんわんわん鳴る音。すこしトランスめいた気分にもなってしまって自分の不謹慎に少し笑ってしまった。

今祖父の、背中に光の入った遺影とご遺体を前に この記事を書いている。大丈夫。巻き線香もみてるよ。おじいちゃんが寂しくないように2人ともいるよ。スマートフォンは長い冬の夜ふかしの大切なお供だから許してほしい。そういえば、新しいものに興味津々だったなあ。記事を書かねば掘り起こせなかった。

いっしょにアマプラでちいかわみてみよっか、おじいちゃん。この夜だけ、もうちょっと一緒に起きてよう。

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