知能指数と知能検査の有効活用
知能検査の有効活用について考えてみたい。
知能指数(IQ)を測る精神科の心理検査に知能検査がある。筆者は児童・思春期の症例を診療していないので、ここでは特にウェクスラー成人知能検査(WAIS「ウェイス」と読む)について触れる。説明が難しいので、いきなりサンプルを説明する。
写真は30代男性のWAIS-Ⅲである。WAIS-Ⅲは16歳から89歳に適用される。2018年にWAIS-Ⅳが出版されているので、少し古いサンプルである。
言語性IQは135、動作性IQは123、両者を合成した全検査IQは132である。IQの平均値は100で、70〜130の間に95%の人が収まることを考えると、この男性は上位2.5%に入る高い知能を持っていることがわかる。(逆に下位2.5%に入るIQ70未満は知的障害と定義される。)
さらに詳しくみていくと、言語理解133、知覚統合137、作動記憶126に対して、処理速度105となっており、差があることがわかる。おそらくこの男性に工場のライン作業をさせると人並みにはできるが、彼の能力を生かせているかと言われると疑問である。他の高い能力を生かした仕事をした方が役に立つ可能性が高いからである。
同じIQであっても、バランスのよい能力の人、この男性のようにばらつきのある能力の人がいる。(全検査)IQだけで能力を判断するのは少し乱暴すぎる気がする。自分は何が得意で、何が苦手かを把握しておくのに知能検査は有用と考える。適職とは自分の得意な能力を生かせる仕事だと筆者は考えるので、知能検査が有効利用されることを願っている。
この記事は書きかけです。反響があれば加筆します。