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「他人の肖像 Portrait of Others #3 Trichopilia suavis」455x380mm, oil on canvas, 2019

本作のランは「トリコピリア」という中南米原産のランです。
このシリーズの特徴である、スポットライトのように切り取った画面についてを導入に、少し記します。

室内などで植物を育てる上で、育成ライトというものを使うことがあります。二種類の可視光線、赤と青の光が出るライトです。
このへんは私もざっくり把握しているぐらいなので、間違いがあるかもしれませんが、植物の葉緑体は光合成色素を持っていて、緑の光は反射し、赤と青の波長の光を吸収します。
この光を光合成に使用するので、赤と青の光が必要なようなのです。
光量が少ない屋内や冬場は、育成ライトを当てて植物の成長を保つためにライトを当てておくと良い、という風に理解しています。

以下少しステートメントから抜粋します。

身の回りで手に入る鉢植えには、園芸品種として改良されたものも多い。原種の突然変異を固定化したものや交配によって作られたものである。原種とは、その植物の祖先のような品種のこと。それらを交配し、様々な特徴を有する新たな品種が生まれてくる。どういった特徴を重視するかは、その時代ごとの流行があり、園芸の歴史は、まるでファッションの歴史のように様々なブームと共に進んできた。

園芸は、自然界から人が選び取った部分的な自然を、人工的に育成するという行為である。複雑な自然界そのものではなく、人間界に合わせて翻訳された一部分だ。ヒトが植物を側に置く時、いつでも人間主体の考えが顔を覗かせるということを忘れてはいけないと思っている。


私の都合で室内に運び込まれたり、原産地とは違う環境に置かれたりした植物たち。庭のない家で植物を育てたいと思うと、限られた場所に置かれることになります。わざわざ自分の手元に置きたい、見たいという人間のエゴが、自分にも大いにあります。
でも、手に入れたからには、一つの生命体相手としてできる限りのことをしながら、面倒を見るのが筋なのではと思っています。

今まで私は、自然界の、人の手が入りきらない環境で増殖する植物の風景をよく描いてきました。しかし、本当に身近な部分に目を向けると、室内の鉢に植えられた植物のほうが多いです。野良猫とペットの違いというような。私のスタジオにもたくさん鉢植えがいます。手を伸ばして触れられる距離にあるのは鉢植えです。

ある程度都会に住んでいて、野生のもじゃもじゃしたところにたまに行って見て来たものに、自分の現実感はあるのだろうか?
と思い、このシリーズができてきました。

他人_トリコ_01

他人_トリコ_02

他人の肖像3

Room2展示風景4

明日はこの連作(暫定)ラストの一枚をご紹介します。

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