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「他人の肖像 Portrait of Others #5 Paphiopedilum bellatulum」240x190mm, oil on canvas, 2020
本シリーズ、今のところ最後の作品は、再び「パフィオペディラム」です。 ベラチュラムという、斑模様が美しい品種です。美しいと思いつつ、ちょっとゾッとする模様でもあります。(制作中は、ゆかりとかシソとか呼んでいました…) リップ(唇弁)のところがすべすべしている感じが出て、私はこのシリーズの中で今一番気に入っています。 花の模様についても、ランは不思議な柄が多いです。 本来の目的は、虫に花粉を運んでもらうためであり、人間を楽しませるような目的ではありません。それでも、人は虫と
「他人の肖像 Portrait of Others #3 Trichopilia suavis」455x380mm, oil on canvas, 2019
本作のランは「トリコピリア」という中南米原産のランです。 このシリーズの特徴である、スポットライトのように切り取った画面についてを導入に、少し記します。 室内などで植物を育てる上で、育成ライトというものを使うことがあります。二種類の可視光線、赤と青の光が出るライトです。 このへんは私もざっくり把握しているぐらいなので、間違いがあるかもしれませんが、植物の葉緑体は光合成色素を持っていて、緑の光は反射し、赤と青の波長の光を吸収します。 この光を光合成に使用するので、赤と青の光が
「他人の肖像 Portrait of Others #4 Dendrobium Ainsworthii」606x727mm, oil on canvas, 2020
本作のランは「デンドロビウム(デンドロビューム)」です。 和名はセッコク属になります。この種類はとにかく数も多く、形態もいろいろです。切り花でも見かける、マゼンタ色のデンファレなんかもこのデンドロビウム(セッコク属)に入ります。 同じ属に入っていても、本当に様々な形のものがあり、花の形状だけでなく花そのものの付き方も驚くほどに違います。 こちらはノビル系のAinsworthiiという品種がモチーフです。ノビル系は、この目玉のような斑が入っていることが多いです。 花を見るとき
「他人の肖像 Portrait of Others #1 Paphiopedilum malipoense」318x410mm, oil on canvas, 2019
連作「他人の肖像」の二つ目をご紹介します。 このランは「パフィオペディラム(パフィオペディルム)」です。malipoenseという品種です。 パフィオペディラムは、その形状が独特で、私はこの属が滅法好きです。 なんとなく顎の位置に当たるような部分が、袋状に膨らんだ形をします。この部分を唇弁(リップ)と呼びます。 パフィオは交配にもよく使われ、年々掛け合わせのリストが発表されています。 しかし、このmalipoenseは、こんな形でありながら、原種です。 原種とは、交配などを
「他人の肖像 Portrait of Others #2 Phalaenopsis pink leopard」333x242mm, oil on canvas, 2019
今日からは、シリーズの作品群をご紹介します。「他人の肖像」と題した連作です。モチーフはランです。このシリーズは、いまも制作継続中です。 「ファレノプシス」胡蝶蘭の一種です。ピンクの豹という名前が付いています。 本シリーズの要となる部分を、ステートメントから抜粋します。 植物には一つ一つの品種に名前がついている。私が好きだった植物には、「丸くて小さい葉っぱのやつ」ではなく「ミューレンベッキア・コンプレクサ」という名前があった。 例えば、よくお店に飾られている白い胡蝶蘭は、
「アンビヴァレント:P・ヘンダーソン 穂を垂れるレネアルミアより/ Ambivalent : from The Nodding Renealmia by Peter Henderson」333x242mm, oil on canvas, 2020
こちらは月桃の花です。 ロバート・ジョン・ソーントンというイギリス人が18世紀に刊行した植物の本「フローラの神殿」に掲載されている、ピーター・ヘンダーソンによる月桃の挿絵を元にしています。 月桃を描くことを思いついたのは、制作中に聴いていた沖縄出身のラッパーのリリックに月桃が出てきたことがきっかけでした。 数年前まで、私は毎年沖縄に通って、スケッチなどをしていたのですが、最近はなかなか行く機会がなくなっていました。 月桃といえば。沖縄の商店街のお菓子屋さんに、月桃の葉で包
「月のない夜が明ける / Moonless Night Dawns」1167x1167mm, oil on canvas, 2020
青い朝顔を描いています。陽のある間に咲く朝顔、夜型の私はあんまりゆっくり眺められたことがありません。 本作は、朝顔の描かれた浮世絵をいくつか下敷きにしています。 私は古書店でアルバイトをさせてもらっていて、いろんな東西の古典籍に触れる機会を頂いているのですが、かつてはあまり興味のなかった分野にも興味が出てきました。浮世絵もその一つです。 一枚の浮世絵の中に二つの空間が描かれているもの、コマ状の名所絵が後面にあり、前面に美人が描かれているなどといった図柄を参考にしています。
「さよならとは言わないの / Won’t say Goodbye」652x803mm, oil on canvas, 2020
本作はヒヤシンスをモチーフにしています。打ち捨てられたヒヤシンス達。 例えば、小動物や小魚でも、ペットとして飼っていたら、庭に埋めてお墓を作ったことがあると思います。 でも、花束や鉢植えが、しおれたり枯れてしまったりしても、わざわざ埋めることは少ないです。 「自分以外の生き物」という点ではグッピーも花も同じなのに、花ってどうしてゴミ箱に捨てちゃうんだろうな、と思い当たったのがきっかけでした。 ゴミ箱に捨てたら、いずれ燃やされるわけです。土から現れても、ほかの動物のようには土