長谷川 由貴

絵を描きます| 京都の共同スタジオpunto拠点 | zine”MOTEL”不定期刊行…

長谷川 由貴

絵を描きます| 京都の共同スタジオpunto拠点 | zine”MOTEL”不定期刊行中| 個展「あなたの名前を教えてほしい」(2020年3月31日-4月12日・ギャラリーモーニング/京都) 出展作品について、紹介しています。

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ご挨拶・おまけ作品紹介

個展「あなたの名前を教えてほしい」が終了しました。 どうにも大変な時期の中、わざわざ足を運んでくださった皆様、本当にありがとうございました。また、つらつらと書き連ねてきた事柄を読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。 今回発表した作品は、サイズ感も大事にしていたものだったので、やっぱりいつか実物を見ていただきたい!という気持ちが増しています。どこかで発表できる機会があれば、その時はぜひ、絵の前に立ってみて欲しいと思っています。 最後に、ちょっと毛足の違った2点

    • 「他人の肖像 Portrait of Others #5 Paphiopedilum bellatulum」240x190mm, oil on canvas, 2020

      本シリーズ、今のところ最後の作品は、再び「パフィオペディラム」です。 ベラチュラムという、斑模様が美しい品種です。美しいと思いつつ、ちょっとゾッとする模様でもあります。(制作中は、ゆかりとかシソとか呼んでいました…) リップ(唇弁)のところがすべすべしている感じが出て、私はこのシリーズの中で今一番気に入っています。 花の模様についても、ランは不思議な柄が多いです。 本来の目的は、虫に花粉を運んでもらうためであり、人間を楽しませるような目的ではありません。それでも、人は虫と

      • 「他人の肖像 Portrait of Others #3 Trichopilia suavis」455x380mm, oil on canvas, 2019

        本作のランは「トリコピリア」という中南米原産のランです。 このシリーズの特徴である、スポットライトのように切り取った画面についてを導入に、少し記します。 室内などで植物を育てる上で、育成ライトというものを使うことがあります。二種類の可視光線、赤と青の光が出るライトです。 このへんは私もざっくり把握しているぐらいなので、間違いがあるかもしれませんが、植物の葉緑体は光合成色素を持っていて、緑の光は反射し、赤と青の波長の光を吸収します。 この光を光合成に使用するので、赤と青の光が

        • 「他人の肖像 Portrait of Others #4 Dendrobium Ainsworthii」606x727mm, oil on canvas, 2020

          本作のランは「デンドロビウム(デンドロビューム)」です。 和名はセッコク属になります。この種類はとにかく数も多く、形態もいろいろです。切り花でも見かける、マゼンタ色のデンファレなんかもこのデンドロビウム(セッコク属)に入ります。 同じ属に入っていても、本当に様々な形のものがあり、花の形状だけでなく花そのものの付き方も驚くほどに違います。 こちらはノビル系のAinsworthiiという品種がモチーフです。ノビル系は、この目玉のような斑が入っていることが多いです。 花を見るとき

        ご挨拶・おまけ作品紹介

          「他人の肖像 Portrait of Others #1 Paphiopedilum malipoense」318x410mm, oil on canvas, 2019

          連作「他人の肖像」の二つ目をご紹介します。 このランは「パフィオペディラム(パフィオペディルム)」です。malipoenseという品種です。 パフィオペディラムは、その形状が独特で、私はこの属が滅法好きです。 なんとなく顎の位置に当たるような部分が、袋状に膨らんだ形をします。この部分を唇弁(リップ)と呼びます。 パフィオは交配にもよく使われ、年々掛け合わせのリストが発表されています。 しかし、このmalipoenseは、こんな形でありながら、原種です。 原種とは、交配などを

          「他人の肖像 Portrait of Others #1 Paphiopedilum malipoense」318x410mm, oil on canvas, 2019

          「他人の肖像 Portrait of Others #2 Phalaenopsis pink leopard」333x242mm, oil on canvas, 2019

          今日からは、シリーズの作品群をご紹介します。「他人の肖像」と題した連作です。モチーフはランです。このシリーズは、いまも制作継続中です。 「ファレノプシス」胡蝶蘭の一種です。ピンクの豹という名前が付いています。 本シリーズの要となる部分を、ステートメントから抜粋します。 植物には一つ一つの品種に名前がついている。私が好きだった植物には、「丸くて小さい葉っぱのやつ」ではなく「ミューレンベッキア・コンプレクサ」という名前があった。 例えば、よくお店に飾られている白い胡蝶蘭は、

          「他人の肖像 Portrait of Others #2 Phalaenopsis pink leopard」333x242mm, oil on canvas, 2019

          「予言を聞きたいなら:S・エドワーズ プロテアより」455x380mm, oil on canvas, 2020

          本作は、シデナム・エドワーズという18-19世紀の博物学者が描いた「キングプロテア」の植物画を元にしています。プロテアという不思議な形状の植物です。その中のでっかい種、南アフリカ原産のキングプロテアです。 プロテアという名の由来は、ギリシア神話に登場する「プロテウス」という神から来ています。 プロテウスは変身の得意な神で、予言のできる神でした。 その能力をあてに多くの神が予言を聞きたがったのですが、いろんなものに変身しては逃げ回っていたそうです。 そんなプロテウスから予言を

          「予言を聞きたいなら:S・エドワーズ プロテアより」455x380mm, oil on canvas, 2020

          「アンビヴァレント:P・ヘンダーソン 穂を垂れるレネアルミアより/ Ambivalent : from The Nodding Renealmia by Peter Henderson」333x242mm, oil on canvas, 2020

          こちらは月桃の花です。 ロバート・ジョン・ソーントンというイギリス人が18世紀に刊行した植物の本「フローラの神殿」に掲載されている、ピーター・ヘンダーソンによる月桃の挿絵を元にしています。 月桃を描くことを思いついたのは、制作中に聴いていた沖縄出身のラッパーのリリックに月桃が出てきたことがきっかけでした。 数年前まで、私は毎年沖縄に通って、スケッチなどをしていたのですが、最近はなかなか行く機会がなくなっていました。 月桃といえば。沖縄の商店街のお菓子屋さんに、月桃の葉で包

          「アンビヴァレント:P・ヘンダーソン 穂を垂れるレネアルミアより/ Ambivalent : from The Nodding Renealmia by Peter Henderson」333x242mm, oil on canvas, 2020

          「鱗粉 / The Scales」410x318mm, oil on canvas, 2020

          こちらは胡蝶蘭、ファレノプシスをモチーフにしています。 気に入っている作品です。 毎年、各地の百貨店などで洋蘭展といった催しが開かれます。 この洋蘭展は、洋ラン組合のようなところが主催していて、いろいろな部門で審査のもと、賞が与えられます。 歴代の受賞花は、様々な洋ラン図鑑などにも載っているのですが、少し異質な感じがします。 形が整っていて美しかったり、株が大きく花がたくさんで凄かったりするのですが、節々に”人の手が入っていること”を感じる風貌をしているのです。 異様に花

          「鱗粉 / The Scales」410x318mm, oil on canvas, 2020

          「月のない夜が明ける / Moonless Night Dawns」1167x1167mm, oil on canvas, 2020

          青い朝顔を描いています。陽のある間に咲く朝顔、夜型の私はあんまりゆっくり眺められたことがありません。 本作は、朝顔の描かれた浮世絵をいくつか下敷きにしています。 私は古書店でアルバイトをさせてもらっていて、いろんな東西の古典籍に触れる機会を頂いているのですが、かつてはあまり興味のなかった分野にも興味が出てきました。浮世絵もその一つです。 一枚の浮世絵の中に二つの空間が描かれているもの、コマ状の名所絵が後面にあり、前面に美人が描かれているなどといった図柄を参考にしています。

          「月のない夜が明ける / Moonless Night Dawns」1167x1167mm, oil on canvas, 2020

          「不眠症の物語 / Tale of Insomnia」1300x1620mm, oil on canvas, 2020

          今回の展示で、一番大きいサイズF100号の作品です。 モチーフはネムノキです。 ネムノキは夏に花が咲く木で、夜になると葉を閉じます。葉の形は、オジギソウをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。 樹皮が抗うつ・不眠改善の漢方薬として使用されるとか。 薬草園が植物園の前身でもあったように、園芸の始まりには薬として植物を栽培してきた歴史があります。 発光するように描いた線画は、18世紀の星図「フラムスチード天球図譜」より。ネムの花の咲く頃、夏の空の星座です。 星をつなぎ

          「不眠症の物語 / Tale of Insomnia」1300x1620mm, oil on canvas, 2020

          「さよならとは言わないの / Won’t say Goodbye」652x803mm, oil on canvas, 2020

          本作はヒヤシンスをモチーフにしています。打ち捨てられたヒヤシンス達。 例えば、小動物や小魚でも、ペットとして飼っていたら、庭に埋めてお墓を作ったことがあると思います。 でも、花束や鉢植えが、しおれたり枯れてしまったりしても、わざわざ埋めることは少ないです。 「自分以外の生き物」という点ではグッピーも花も同じなのに、花ってどうしてゴミ箱に捨てちゃうんだろうな、と思い当たったのがきっかけでした。 ゴミ箱に捨てたら、いずれ燃やされるわけです。土から現れても、ほかの動物のようには土

          「さよならとは言わないの / Won’t say Goodbye」652x803mm, oil on canvas, 2020

          「Descendants of Flora」1455x1120mm, oil on canvas, 2020

          昨日の投稿にあったタイトル「Descendants of Flora」はこちらの作品のタイトルになりました。 その経緯についてを記します。 本作に描いたのは、「バンダ」という東南アジア原産のランの品種です。 この品種は、着生ランといって、地面ではなく樹上に張り付いて育つランです。そのため鉢植えではなく吊るす形で成長します。この着生ラン系統の根っこは、ぞわぞわする奇妙さを持っています。 私はSNSで東南アジアのラン業者のアカウントをいくつかフォローしているのですが、この業者

          「Descendants of Flora」1455x1120mm, oil on canvas, 2020

          「Aliens」910x1167mm, oil on canvas, 2020

          DMに使用した作品。当初、この絵は「Descendants of Flora」というタイトルにしていました。 見ているうちに「この絵の名ではなかった!」と気づいたので「Aliens」というタイトルになりました。(なのでDMは前のタイトルのままでした) ではまず、タイトルについてのことから書いていきます。 「Descendant」とは、子孫・末裔・門下生・・・などといった意味があります。「Flora」はローマ神話に出てくる花の女神フローラのこと。 直訳だと「フローラの子孫」と

          「Aliens」910x1167mm, oil on canvas, 2020

          あなたの名前を教えてほしい

          個展 「あなたの名前を教えてほしい」 “Let me know your name” 2020年3月31日(火) - 4月12日(日) 植物を育てるのが苦手だった。気に入った形の植物を買っては日当たりの良い出窓に鉢を置き、毎日水をやったのに、いつも葉を全部落として枯れてしまった。何となく良いと思ってしていた行為はその植物に合っていなかったと知ったのはもう少し後のこと。私は相手のことを何も理解していなかったのである。 植物のことを知りたくて、調べるほどにわかってきたのは、如

          あなたの名前を教えてほしい