「他人の肖像 Portrait of Others #4 Dendrobium Ainsworthii」606x727mm, oil on canvas, 2020

本作のランは「デンドロビウム(デンドロビューム)」です。
和名はセッコク属になります。この種類はとにかく数も多く、形態もいろいろです。切り花でも見かける、マゼンタ色のデンファレなんかもこのデンドロビウム(セッコク属)に入ります。
同じ属に入っていても、本当に様々な形のものがあり、花の形状だけでなく花そのものの付き方も驚くほどに違います。
こちらはノビル系のAinsworthiiという品種がモチーフです。ノビル系は、この目玉のような斑が入っていることが多いです。

花を見るとき、無意識に花の部分を顔・頭のように認識してしまっていることが多いと思います。ニコニコしたお花の絵を、小さい時から繰り返し見ているのもあるかもしれません。
実際は、人の顔の要素など特に入っていないにも関わらず、顔のように思ってしまうのは何故なんでしょうか。

植物にとっては、花は生殖器官にあたります。栄養を得ていく口になるのは根っこの部分や葉、光の量を把握するのは花部分に限らないため、決して花は顔ではないはずなのです。

それでもやはり、花がこちらを見ているような気がする という感覚が抜けないのは、私たちが人間を見る時、いかに顔や表情からその人を読み取っているかを考えてしまいます。

会期も残すところ二日となって参りました。作品紹介も、あと数点です。
どうぞ最後までお付き合いください。