見出し画像

「アンビヴァレント:P・ヘンダーソン 穂を垂れるレネアルミアより/ Ambivalent : from The Nodding Renealmia by Peter Henderson」333x242mm, oil on canvas, 2020

こちらは月桃の花です。
ロバート・ジョン・ソーントンというイギリス人が18世紀に刊行した植物の本「フローラの神殿」に掲載されている、ピーター・ヘンダーソンによる月桃の挿絵を元にしています。

月桃を描くことを思いついたのは、制作中に聴いていた沖縄出身のラッパーのリリックに月桃が出てきたことがきっかけでした。
数年前まで、私は毎年沖縄に通って、スケッチなどをしていたのですが、最近はなかなか行く機会がなくなっていました。

月桃といえば。沖縄の商店街のお菓子屋さんに、月桃の葉で包んだ餅菓子がありました。
沖縄でムーチー(鬼餅)と呼ばれるお菓子には、このようなお話があります。

首里金城に、親のいない兄妹がいた。
妹は久高島に嫁ぎ、寂しさからか兄は鬼になって、近隣の家畜や子供をさらって食べるという噂が広まった。
決心した妹が兄の様子を見に行くと、鍋の中には人間の子供の姿があった。
慌てて逃げ帰った妹は「例え血肉を分けた兄弟でも、世の中に害する者は、殺したほうがいい」と心に誓い、餅を作って兄の家に出かけた。自分の餅は普通の餅、兄の方には瓦入りの餅を用意し、崖の近くに誘って、そこで二人で餅を食べた。瓦入りの餅を平気で食べる兄を見て、本当に鬼になってしまったことを妹は悲しんだ。
兄は、妹が着物の裾をはだけて座っているのを見て「それは何か」と尋ねた。妹は、「女には餅を食う口と、鬼を食う口がある」と答え兄を崖から突き落とした。
それから、餅を炊いた煮汁を家屋の周囲にかけ、餅の葉を十字形に戸口に下げて鬼(厄)を払うようになった。

この話を思い出して、「フローラの神殿」の月桃の挿絵を調べてみると、小さな雫を垂らした月桃が描かれていました。
涙のような雫でした。

しかし私が描いた、赤いネオンが反射した雫は、血のようにも見えます。誰が流したものかは私にもわかりません。

アンビヴァレント_01

アンビヴァレント_02

アンビヴァレント_03

アンビヴァレント_04

アンビヴァレント


今回の個展で発表している作品は、以下のギャラリーモーニングさんのサイトで販売しています。価格などはこちらをご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?