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「他人の肖像 Portrait of Others #2 Phalaenopsis pink leopard」333x242mm, oil on canvas, 2019

今日からは、シリーズの作品群をご紹介します。「他人の肖像」と題した連作です。モチーフはランです。このシリーズは、いまも制作継続中です。
「ファレノプシス」胡蝶蘭の一種です。ピンクの豹という名前が付いています。

本シリーズの要となる部分を、ステートメントから抜粋します。

植物には一つ一つの品種に名前がついている。私が好きだった植物には、「丸くて小さい葉っぱのやつ」ではなく「ミューレンベッキア・コンプレクサ」という名前があった。

例えば、よくお店に飾られている白い胡蝶蘭は、ファレノプシス属というラン科の一つで、ファレノプシス・アフロディテという学名がついている。ファレノプシス属は東南アジア原産で、五十種以上の品種がある。すると世の中には五十種以上の育て方があり、個体ごとの状態(まだ株が小さかったり、根が伸びすぎていたり)によって適した環境も違うのである。そもそもラン科には一万五千種以上の品種があるのだ。なんということだろう。

今までなんとなく「ラン」と思っていた花たちが、突然こちらに一人一人の顔を向けてきたように感じた。「ファレノプシス・アフロディテ」には「ファレノプシス・アフロディテ」が辿ってきた歴史があった。さらに厳密にはその辿ってきた歴史は、一株ごとに違うのだ。それは、一人一人の「ヒト」がそれぞれの人生を歩んできたことと、あまり変わらないのかもしれないとも思ったのだった。それから私は、ランに興味を持つようになった。

このようなことから、「肖像画」として花を描くことを始めました。
ただ、決して擬人化、人に見立てて描きたいのではなく、花のまま描きたいのです。
そこには、「植物画」「ボタニカルアート」の歴史も絡んできます。ステートメントを書くにあたって参考にした書籍の中で、”ボタニカルアートは植物の肖像画である”という言葉に出会ったのも、大きな理由の一つです。

植物画は本来、美術的な目的ではなく学術的な記録として描かれました。しかし時代を経るにつれ、手習いのように植物を描くことが流行ったり、画家の技術との兼ね合いもあったりと、必ずしも学問よりではない絵も多く残っています。そして、植物学的にも不確実で、美術史にも属せない、間の存在のようになってしまいました。

この宙ぶらりんな植物画というものを、私なりに吸収していきたいと思っています。

他人_ファレノ_02

他人_ファレノ_01-2

Room2展示風景4

このシリーズは今5作あります。一つずつご紹介していきます。

作品のお問い合わせはこちらをご覧ください。
https://gallerymorning.blogspot.com/

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