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2021年個人的映画ベスト10その他

2021年に公開・配信された映画の中から、個人的なベスト10を。
作品のクオリティより自分の好みを優先してます。

①アメリカン・ユートピア
②イン・ザ・ハイツ
③ドント・ルック・アップ(Netflix)
④猿楽町で会いましょう
⑤茜色に焼かれる
⑥チック、チック…ブーン!(Netflix)
⑦街の上で
⑧ディナー・イン・アメリカ
⑨野球少女
⑩この茫漠たる荒野で(Netflix)
次点
BLUE/ブルー、すばらしき世界、空白、プロミシング・ヤング・ウーマン、チャンシルさんには福が多いね、アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン

5位までの感想をつらつらと書いてみます。

1位『アメリカン・ユートピア』

音楽そのものの多幸感、デビッド・バーンの現代世界に対する優しさと包容力、どんだけ注力したんだと思わせる卓越したパフォーマンス、全てがもう琴線に触れまくって、ずっと涙ボロボロ流しながら観てました。

一方、僕の近くの席にいた50代位のご夫婦はずっと足でリズム刻みながら楽しそうに鑑賞しており、同じ作品を観ているのに反応が全然違っていて、これぞ映画館で映画を観ることの面白さだよなぁ、と思いましたね。

ライブを撮っただけの作品が映画と言えるのか?という意見も散見するけど、映画館で泣いたり笑ったり心躍らせたり考えさせられたり…これぞ映画でしょう。

僕はデビッド・バーンもトーキングヘッズも全く知らなかったけど、無知ゆえに、昔のトーキングヘッズの曲も最近のデビッド・バーンの曲も、フラットに全部今の曲として聴くことが出来て、それがこの作品の趣旨とも合致して却って良かったんじゃないかと思う。
あと、1曲も知らないから「あー、あの曲やって欲しかったのに!」という不満もないしねwいや、もちろん、ファンだからこそ楽しめる箇所の方が多いでしょうけど。

2位『イン・ザ・ハイツ』

NYの移民達の湧き上がる底力と、陽気なラテンやラップを取り入れたこの音楽スタイルが合致して、めっちゃパワフルな快作になりましたねー。もう大好き!

それぞれの生活を生きる人々の独白、諍い、悩み、夢、愛などの語りが、無理なくミュージカルシーンに繋がるところに、新たなミュージカル映画の可能性を見い出せる。
「いきなり歌い出すミュージカルは苦手」という人も、これなら楽しめるんじゃないかなー。

一方で、フレッド・アステアやエスター・ウィリアムズといった古き良きミュージカルスターへのオマージュも取り入れているのがニクい。

移民達の過去から現在、そして未来へと希望をつなぐ終盤に高揚。
どんな未来だってあり得るのだ。

冒頭の1曲を丸々YouTubeで観られるので、未見の方は是非。
「うわー、映画館で観たかった~!」と後悔すること請け合いです。

3位『ドント・ルック・アップ』

年末にすげーのぶっこんで来たー!という感じ。めっちゃくちゃ面白かった!
気候変動等の議論が分かれる現実の脅威を「世界中の誰もが肉眼で見られる彗星」という形に仮託したアイディアが秀逸。
起こっていることはハチャメチャなのに、それを撮ってる監督の視点が恐ろしいほど冷静でフラットだから、リアリティもあるし皮肉も利いてくる。
これだけ豪華なメンツを揃えたうえで、「映画内の神」としての監督の存在感が揺るがないという、アダム・マッケイすげーな。
「うわー、そう来るか!」の連続で、とにかく飽きずに最後まで楽しめた。オチも最高。

4位『猿楽町で会いましょう』

序盤、駆け出しカメラマンの男子と読者モデルの女子とが出会って初々しいやり取りをするくだりから、「あー、『はな恋』みたいな付き合って別れるまでの恋愛モノかな」と思いきや…いやいやいやいや、とんでもないヤバい作品でした。
今年一番のダークホース。

空っぽな自分を覆っている皮を、ベリベリと1枚ずつ剥がされていくような容赦なさにヒリヒリする。
全てをさらけ出すような役者陣全員の演技も凄まじい。
こんな人が周りいたら絶対嫌だけど、でも僕は彼女らのことを断罪できない。


5位『茜色に焼かれる』

尾野真千子の、どこまでも泥臭い真っ向勝負な演技が、この作品を成り立たせている。天才肌では無いとこが良いのだ。

それに加えて、ケイ役の片山友希がめっちゃ良かった。
はかなげで擦れてて超チャーミングな、ものすごい実存感のある佇まいに魅了されまくり。確かに「ケイちゃん」がそこに居た。
『君が世界のはじまり』等でも印象的なキャラを演じていた彼女だけど、今作で突き抜けた感じ。追いかけて行きたい女優さんだ。

(↓ちょいネタバレ)


ブレーキを踏むべきところでアクセルを踏んでしまった男の運転する車に、父親を殺されてしまった中学生男子。
でも彼は逆に、アクセル(彼の場合は自転車なのでペダルだが)を踏むべきところでブレーキを握りしめてしまうという、皮肉な演出がなんともつらい。
そのあと一転、一心にペダルを漕ぎ始める彼の姿に「おっしゃー!」と胸熱だが、所詮中学生なので何も出来ないのがまた…。

(↑ここまで)

尾野演じる田中良子の正しくなさを責める人は、現実でシングルマザーを恰好の標的として責める人とそのまま重なる。
「自分の事だと怒れない」で苦しんでいる人、たくさんいるだろうね。

タイトルの意味がわかる瞬間、そして「芝居が上手い」の意味が反転する瞬間には鳥肌が立った。

とにかく、社会的弱者が理不尽な目に遭いまくる内容なので、万人向けとは言い難いかもだが、こういうつらい映画で浄化されるものもあるんだよなぁ。観て良かった。

総括

今年はまず、1,2位の作品を筆頭に、音楽&ミュージカル映画が豊富な年だった!…と堂々と言いたかったのだが、目玉の『ウエスト・サイド・ストーリー』が来年2月に延期(公式の延期発表が「延期になりました、すみません」じゃなく「新公開日が決まりました」という斬新な言い草だったのも含め、ほんとクソですね)になり、個人的には『ディア・エヴァン・ハンセン』が地元近辺で上映が無くて観られなかったので、当初思ってた程ではなかったんだが…。

でも!ミュージカルで言えば、6位に入れた『チック、チック…ブーン!』は、『レント』ファンにとっては(いや、それ以外の人にも)「よくぞ撮ってくれた!」と思える感動作("別れ"のシーンが全部素敵…!)だったし、アマプラの『Everybody’s Talking About Jamie ~ジェイミー~』は、これからのミュージカル映画の指針を示してくれ、かつ某古典的名作の名台詞を現代的にアップデートして使うシーンには泣かされた。
同じくアマプラの現代版『シンデレラ』も、突っ込みどころ満載ではあるが、これはこれで楽しかったし。
つか、これからのミュージカル映画にとっては、全部必要な作品。

あとは、8位の『ディナー・イン・アメリカ』が、ポリコレも多様性もクソくらえ!な新しいのか古いのかよくわからないボンクラ男女逃避行もので最高でした。9位『野球少女』の「あああ、ちゃんと見てくれてる人がいるんだ…!」という嬉しすぎる場面には勇気づけられたし、吉田恵輔監督の2作『BLUE/ブルー』『空白』、どっちも次点にしてしまったけど、やっぱめちゃくちゃ刺さりまくりで大好きだし。ほんと、きりがない。

おまけ

コロナ禍で映画館がやばい状況の時(今もだけど)に作ったオリジナル曲『映画館へ行こう!』、良かったら聴いてみて下さい。
青森松竹アムゼ劇場内で上演前BGMとして流していただきました。
来年も、たくさん映画館へ行こう!

ハセガワギター「映画館へ行こう!」オリジナル曲リリックMV
https://www.youtube.com/watch?v=Pe1EHL6824c


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