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フェミニストは萌え表象叩きを諦めて現実と向き合えという話

 この話題、正直あまり触れたくなかったのですが、いよいよ私と関わりのある企業まで炎上するようになってきたのだなと、多少なりとも危機感を覚えたため、身バレしない範囲で雑に感想をまとめます。

 3年ほど前の話になりますが、仕事の資料集めのためにビッグサイトで開催されたIT・IOT系の展示会に訪れた私は、サラリーマンで溢れかえるむさ苦しい(失礼)空間の中において一際異彩を放つブースに目が止まりました。アニメ絵の女性型コンシェルジュが100インチ程度のサイネージに映し出され大勢の人が立ち止まり真剣に話を聞いているその情景は、初音ミクのコンサートを初めて見た時のような新時代の到来を感じさせ、早速興味を持った私は女性スタッフに声を掛け雑談も含めて色々とお話を伺いました。その詳細は割愛しますが、このAIサービスを開発したティファナ・ドットコムは、いわゆる従来型のwebサイト運用業務からの構造転換を図るべく、社運を掛けてAIやRPAの開発を行っていることなどをキラキラとした瞳で説明していただいたと記憶しています。ちなみにこの時は「AIさくらさん」ではなく、奇しくも「KIZUNA」という名前の情報サービスでした。キズナアイが誕生したのとほぼ同時期に公開されているため偶然の一致なのでしょう。その後同じような道を辿ることも含めて。

 当時は情報通信業の人手不足化が深刻であり業務の自動化やAI導入という言葉が流行りだしていた時期でもありました。そういう流れを受けてティファナ以外にもAIやRPAを取り扱うブースは数多くありましたが、その中でもこのサービスのインパクトは突出していたのです。ただ、同時に色物感も強かったため、正直に告白すると「公共機関での採用は無いだろうな」とも思っていました。この頃私はまだTwitterを始めてはいませんでしたが、駅乃みちかや東急電鉄のポスターなどが炎上していたことは認知していたため、人手の多い公共の場での採用はリスクが高いだろうなと本能的に感じていたのです。

 ところが私の不安を裏切るかのように、展示会に訪れて暫くも経たないうちにまずNHKのニュース7で取り上げられ、その後EテレのAI特集番組においてもかなりの長尺を割いて紹介されているのを目にしました。どうやらNHK以外の民法でも大々的に取り上げられていたようですね。

 AIとしての精度の詳細はわかりませんが、その見た目のインパクトから接客型AIのアイコン的存在として一気に各メディアで取り扱われるようになり、セブン&アイをはじめ数多くの大手企業に採用され、公開されてから僅か2年ほどの間にJRなどの公共機関にまで普及するようになったのです。


 なので私も、いわゆる萌え系でもこのくらいマイルドな表現なら世間一般にも受け入れられるのかとベンチマークの一つとして密かに採用していたのですが、ここにきて悪名高き高輪ゲートウェイ駅がやらかしたわけです。

 いや、これまでの経緯を鑑みると高輪ゲートウェイ駅がAI駅員としてAIさくらさんを導入すること自体は何も不自然なことではありません。問題はむしろAIさくらさんの端末のすぐ隣に独自開発によるリアルな男性型AI駅員を配置するという高輪ゲートウェイ駅側の絶望的なトータルセンスの無さです。おそらくどこかのお偉いさんが「何故我が社が開発した独自ソフトを採用せんのかね!?」などとトップダウンで強引にねじ込んだのだろうなと勝手に邪推しているのですが、こういう悪しき形式主義のお蔭で図らずもAI駅員男女のギャップが強調されることになり、いつもの萌えフォビア系フェミニストに目をつけられてしまったのでしょう。最初のうちは「何故女性型AIだけ萌えキャラなんだ!」という批判が多く、ここまではまあ同意出来なくもないのですが、徐々にAIさくらさんの表現や対応そのものに難癖をつけるといういつもの流れになっていきました。


 AIさくらさんに対する批判内容に関してはバカバカしすぎて言及もしたくもないのですが、あえて突っ込むなら何故セクハラ的な行為を「する側」ではなく「される側」が責められないといけないのかということです。百歩譲って受け手がAIであることや労働環境云々を差し引いたとしても、相手の名前を聞こうが容姿のことを言おうが受けた本人(AIデザイナー)がセクハラと感じないのならセクハラには該当しないのですよ。基本中の基本です。茜さやさんの広告写真が炎上した時にしてもそうですが、手前勝手な物差しで相手の主体性を無視して「お前はセクハラを受けたんだ」「こう受け答えすべきだ」「セクハラを助長するような態度を取るな」などと押し付ける行為は「男に媚びるような態度を取ったからレイプされたんだ」系のセカンドレイプと何が違うのでしょうか。尚、AIさくらさんを開発したティファナに所属するデザイナーの半数は女性であることも付け加えておきましょう。

「性的強調表現が公共圏にあることで、この社会では女性は性的存在であるというメッセージとなる」というフェミニストが萌え表象叩きのベースにしている「性的モノ化」説も全く科学的根拠がありません。少なくとも萌え表象に当てはめるのは無理があります。例えば萌え絵を大量消費するオタク層に、仕事と関係無いことを女性に尋ねるセクハラ気質な傾向があると思いますか?さらに言えばギャルゲーの影響を受けてナンパ師になったオタクを一人でも見たことがありますか?むしろ逆ですよね?こういう実態に全く即していない仮説を何故自明であるかのように扱えるのか不思議でなりません。気に入らない表象を叩きたいがために「性的モノ化」説を利用しているのでしょうけど、拡大解釈しすぎて女性の主体性そのものも否定してしまうという本末転倒な結果になっているケースも少なくなく、致命的な欠陥を抱えていると言わざるを得ません。そもそもAIさくらさんが性的に強調された表現であるとは言い難いのですが、この辺りの話は宇崎ちゃんの時に各所で散々論じられているため割愛します。


 またフェミニストはこういう問題に直面すると息をするように「だから日本はジェンダーギャップ121位なんだよ!」と連呼するのですが、それ、あなた方フェミニスト側にも大きく責任がありますよね。確かにAIさくらさんが紹介されていた展示会場を見ても男性サラリーマンが大半を占めていましたし、会社役員や政治家もほぼ男性で占められており、女性の社会進出が全く進んでいない日本の状況を見ると121位というのは妥当な順位なのかもしれません。AIさくらさんもそういう男性中心的な社会から受け入れられやすく最適化されてきたからこそ炎上に繋がった可能性もありますが、今回のように需要と供給の供給側を叩いても何も解決しないどころかむしろ女性の社会進出の邪魔にしかなっていないのです。

 何故ならAIさくらさんやキズナアイなども含めた、いわゆる「萌え産業」は女性クリエイターの活躍無しに成立しないからです。前述したとおりティファナには多くの女性社員が所属しています。キズナアイのキャラデザも女性です。京都アニメーションに至っては逆差別的と言っても過言ではないほど大半のアニメーターが女性です。昨今のオタク的表象は女性が主体的に魅力的だと思って創造したキャラクターが、同性だけではなく多くの男性にも好まれるという構造があるからこそNHKや公共性の高い団体などでも採用されるようになってきたと言えるでしょう。繰り返しますが萌え絵は男女ともに需要があるのです。世代差はあるでしょうけどTVCMのキャラとして十分成立するぐらいには市民権を得ているのです。フェミニストはそういう時代の潮流に乗れていないか、あるいは本心では受け入れたいと思っていても、こういう日本特有の文化が全く考慮されていないラディカル・フェミニズムによる反ポルノ教の教義に洗脳されてしまっているが故に、萌え表象も拒絶せざるを得ないというバグを抱えている人も多そうですね。可愛さ余って憎さ百倍とはよく言ったもので。

 いずれにせよ、こういう日本の産業構造に対する想像力が著しく欠落した連中がフェミニストや女性運動家を自称し、本人たちの思惑とは裏腹に性的表象叩きなどによって女性の社会進出を妨害しているという不幸な状況こそ日本のジェンダーギャップを維持・強化しているのではないでしょうか。この手のフェミニストによる破壊活動を目にするたびに思うのは「フェミニストが納得のいく商品とやらを開発し世の中に普及させれば良い」ということに尽きるのですが、現実は己のフェミニズム的言説をマネタイズすることすらままならないという体たらくであり、出来るのはせいぜい雑なツイートをバズらせてお仲間の溜飲を下げることくらいですかね。こういうフェミニストの文化的な生産性の低さを見ても、いかに世間と乖離した狭い界隈の方々が騒いでいるだけということが分かります。まあこの手の放火系フェミクラスタに各企業が振り回されているのも事実なのですが。

 それでも彼女たちの問題意識が多少なりとも現実に向いているのならジェンダーロールからの脱却や女性の労働環境の改善などが期待出来るのかも知れませんが、それも難しいでしょう。AIさくらさんが炎上し始めたのとほぼ同じタイミングで女子中学生が手作りマスクを600枚程度県に寄付した話が美談として各メディアを賑わしていたのですが、放火系フェミクラスタでは問題視するアカウントがほぼ存在しないどころか屈託もなく褒めてしまう人までいましたから。フェミニズムと縁遠い私ですらこのニュースに強い違和感を覚えていたというのに。

 このツイートのリプ欄を見ても分かるように、疑問に思っている人は大勢いるのにも関わらずです。批判的なツイートもいくつかバズっていましたが、そのほとんどが放火系フェミクラスタとは別クラスタのもので、興味深いのは真っ先に突っ込んだスタージャックス氏はむしろアンチフェミ寄りの人なんですよね。

 AIさくらさんよりも実在女児が社会的に搾取されている構図がテレビなどで報道され、普通に称賛されてしまっている状況の方が遥かに社会的なジェンダー・バイアスを強化していると思うのですが、フェミニストたち自身がジェンダーロールに囚われているがためにこういう現実問題を察知出来なくなっているのだとすれば悲しい話です。

 勿論フェミニストによる言及が全く無かったわけではなく、一部においてAIさくらさんと手作りマスク寄付の件、その両方を批判するアカウントも観測出来ましたが、後者に関してはフェミクラスタ内で全く盛り上がりを見せていないことに変わりはありません。その理由はおそらく問題の深刻度よりもオタク(非モテ)の欲望の有無こそが議論の盛り上がりを左右しているからなのでしょう。本人たちにその自覚があるのかどうかは分かりませんが、要は女子高生がおじさんLINEごっこを楽しむのと同じで「オタク(おじさん)キモい!」という共感や負の性欲を感じさせる問題でなければ団結すら出来ないのが本邦フェミニズムの実態です。この件に限らず以前からフェミニストはフィクションに噛みついてばかりで肝心な現実問題にコミットすることはほとんど無いなと薄々感づいてはいたのですが、なんかもう色々と終わっているのだなと。そりゃジェンダーギャップ121位の国だわと。

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 このnoteをノロノロとまとめているうちにTwitterではAIさくらさんの炎上も沈静化しつつあり、AIさくらさんのツイートも何事も無かったかのように再開されたようです。セクハラ的な質問に対する回答は修正されてしまったようですが、特に取り下げられる様子も無く、この程度で済むのならティファナ側も炎上は想定内だったということではないでしょうか。まだ予断を許さない状況は続きますが個人的にはベターな対応だったと思います。

 表現規制反対派の中にはティファナがプログラムを修正した段階で我々の敗北だと受け取る人もいるようで、その気持ちは痛いほど分かるのですがこういう炎上問題は勝った負けたの単純な二元論で捉えないほうが良いと思います。見方を変えればAIさくらさんが各公共機関にここまで普及している時点で、フェミニストたちがこれまで頑張って行ってきた破壊活動は何の成果も上げていないことを意味するからです。

 フェミニストは破壊活動を通じて僅かな成功体験を得ることで「声を上げれば世の中変えられるんだ!」と勘違いをしているのかもしれませんが、企業からすれば放火系フェミなんて会社ゴロ程度の扱いであなた方の思想なんて1ミリも浸透していませんよ。それどころか「関わってはいけない人たち」として社会的にも認知され、時代錯誤な萌えフォビアクラスタとして今後先細りする一方でしょう。表現物を攻撃して、1歩進んだつもりでも知らないうちに10歩くらい後退しているのはフェミニストの方なのです。あくまで私の観測範囲においての話ですが、フェミニストの皆さんは社会で活躍する女性クリエイターたちからも相当嫌われているという自覚は持った方が良いでしょう。そりゃそうですよね。正義棍棒で自分たちの仕事を破壊してくる連中の御高説()なんて賜るはずもない。ただのノイズですよ。そのようないつ発生するか分からない自然災害のようなものを気にするくらいなら、需要のあるうちにキズナアイや輝夜月などをCMに起用してでも利を得る道を選ぶでしょう。

 とはいえ、私もオタクというわけではないので、萌え系のソシャゲ広告がガンガン流れてきたりAIさくらさんの様な端末が公共機関に氾濫する社会はどうなんだろうと多少思うことはありますよ。しかし私達はそういう時代を生きているわけですから、それが単なる個人的な快不快の問題に過ぎないのであれば、新しい文化を許容出来るように価値観をアップデートし続ける必要があるでしょう。少なくともそういった表象を叩いて解決する問題ではありません。それよりももっとリアリティを持って需要側の構造を地道に変えていく努力を行わない限り、ジェンダーギャップやジェンダーロールからの脱却を図ることなんて永遠に出来ないでしょう。つまり無駄な表象叩きは諦めて現実の問題に目を向けろということです。

 そうやって現実逃避してSNSで不毛な争いを繰り広げているうちに、就活を始めたAIさくらさんに貴重なパイを奪われ尽くされるかも知れませんよ?

おわり

(2020.3.30加筆・修正済)

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