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なんの実績もない人間がボードゲームメーカーを立ち上げようとした場合

 まずは謝罪から入らせてください。
 noteの更新を、告知なく1回飛ばしてしまいました。
 いや~、過酷な日々を送っていました。
 11月23日からシンガポールに行き、25日にタイに移り、28日に帰国したんですが、疲労がたたったのか、翌日39度の熱を出してぶっ倒れて、すわコロナかインフルかと思ったら、翌日37度に下がったので安心しながらも、しばらくは安静に過ごし。
 一週間ほぼ外出せず、体調が戻ったことを確認してから12月9日、10日のゲームマーケットに参加。
 その翌日、中国の印刷仲介業者のジョーさんと、中国のボドゲメーカー帝企鹅桌上游戏www.emperorpenguingames.com:皇帝ペンギンゲームズ)の社長のジンさんを連れて姫路へ。ジンさん、日本の山と城が好きということで、姫路城を見学。翌12日は神戸に移動し、グループSNEさんに挨拶をする場をアテンド。翌13日は熊本に移動し熊本城を見学。夜には熊本在住の秋口ぎぐるくんが合流。ジョーさん、ジンさんは秋口くんとは何度も会っていて、すでに友人関係。翌14日は秋口くんの案内で阿蘇山に登り、その後熊本のひなびた温泉宿に。廃墟同然の宿を堪能し(笑)、翌15日、香港に帰るジョーさんと北京に帰るジンさんを見送ったという、なかなか忙しい日々を送りまして。正直、noteを更新する余裕が一切ありませんでした。シンガポール~タイの出張後、高熱を出したのが計算外でしたね。
 そんなわけで1回飛ばすことになってしまいましたが、まあ、しれっとそのままやっていきましょう。

 宿題がありましたね。
 前回「ひとりの会社でどうやってボードゲームを作っていくのか」というテーマで話をさせていただいたのですが、ぶっちゃけ刈谷の10年の実績とコネクションがあるから、ひとりでもどうにかなるっすという話で。それだと記事としてあんまり役に立たないなと。役に立つ部分がゼロとは言わないけど、「それ言われてもな」といった部分もあったということで。
 なので今回は、「なんの実績もない人間がボードゲーム制作を志した場合、ひとりでボードゲームを作れるのか」という話を語っていきたいと思います。
 何かの役に立つ記事になるといいなあ。

「なんの実績もない人間がボードゲーム制作を志した場合、ひとりでボードゲームを作れるのか」というテーマですが、この段階でも結構抽象的と言いますか、シチュエーションは多岐に渡りますよね。インディのゲームを30個だけ作ってみたいというのと、ボドゲメーカーを立ち上げて、2000個以上作るタイトルを年間4タイトル以上出していくということでは、全然違う話ですし。あと年齢も20代なのか、40代なのかではまったく違ってきますよね。どういう仕事をやってきたのか、資産はいくらあるのかでも変わってきます。
 正直、インディで100個以下のゲームを作ってゲームマーケットで売ってみたいという方は、そういう内容で書かれたブログがいろいろあると思いますので、そういう記事を探してみてください。実際の話、ずっとアークライトでやってきたわたしよりも、より実践的な話が知れるはずです。
 ここではあくまで、メーカーを立ち上げてボドゲを作っていきたいと思う方向けのテキストを書いていきたいと思います。
 さらに加えて、原則20代、30代前半の方向けに書こうかなと。なぜなら30代後半以上の方は、それなりに人生のキャリアを積んでいるはずで、それなりに資金やコネクション、スキルを身に付けているはずです。それらはまさに人それぞれですので、一般論で語るには限界があります。自分の武器を有効に活用するのが、成功のカギです。
 ですので、お金もスキルもコネクションもない方が、どうやっていけばいいかという話ですね。わたしなりに、「自分がもし20代で、2024年1月からボドゲメーカーを立ち上げるためにアクションするとしたら」という思考実験を行うような感じです。

 ……という書き出しでつらつら書いていたのですが、本当の最初のところだけでとんでもない分量になって、このペースで書いたら2万字超えそうやなとなったので、ちょっと冷静になって整理することにしました(笑)。
 箇条書きしていきます。

・とにかく知名度を上げる。
(ゲームカフェの常連になって、店長さんや店員さんと仲良くなる。ゲーム会に参加して、ゲーム制作者さんと仲良くなる。ブログなどメディアを立ち上げ、とにかく更新しまくるなど)

・ある程度知名度を得た段階で、自作ボドゲをゲムマに出す。
(イラストやグラフィックはしっかり。そういう意味でも、自作ゲームを作っている同士や先輩がいると心強い。最初は100個くらいで)

・自作ボドゲを作る中で、自分の適性がどこにあるかを見極める。
(ゲームデザインなのか、編集なのか、グラフィックなのか、イラストなのか。ただし、いずれに適性があるにせよ、人を束ねる力がなければ、ひとりでゲームを作ることはできない)

・自分の適性がない部分について、任せられる仲間を見つける。
(仲間は社員である必要はない。社員にしてもいいが、ひとりの会社ではなくなる。まあ、こだわるところではないがw)

・よい仲間が見つかれば、継続して高品質の作品をリリースできる可能性が上がる。

・2~3年継続して高品質のゲームをリリースすることができれば、業界でそれなりのポジションが得られているはず。

・そうなれば、メーカーを立ち上げ、維持していくことも不可能ではない。

 ……という感じでしょうか。
 箇条書きにするとシンプルですね。「そんな上手くいくか」という声が聞こえてきそうですが(笑)。いや、正直上手くはいきません。上手くいかない状況をどう乗り越えて進むかです。

 上記のアクションの中でも、特に大事と思えるのが「知名度を上げる」ことと、「自分の適性を見極める」こと、「自分の適性のないところを任せられる仲間を見つける」ことでしょうか。
 もちろん、ただゲムマでインディ作品を50個完売したいだけなら、知名度とかはそこまでこだわらなくてもいいです。何度も繰り返すようですが、メーカーを立ち上げる話ですからね。知名度を獲得するのは死活問題です。
 知名度を獲得すると言っても抽象的ですが、業界で名前の知れた方々と面識が得られると、まず強いですよね。と言って、そうした方々に「ゲームの作り方を教えてください!」とか突撃するのはやめてくださいね。わたしが怒られますので(笑)。あくまでゲーム会に参加するとか、テストプレイ会に参加する中で、そうした方々と知己が得られるチャンスがあれば、積極的に関わっていきましょうという、地道な話です。地道な活動が認められると、自然そうした方々も気にかけてくれるようになるでしょうし。
 あと、相手にメリットを提供できるなら、迷惑ではありません。そういう意味で、影響力のあるメディアを持てると強いですね。またボドゲカフェはある程度都会でないとありませんし、インディゲームを作っている同士も田舎では見つかりにくいでしょう。ですがメディアはどこにいても作れます。もちろん、更新し続けるのは非常に大変ですけどね。でもまあ、いちからボドゲメーカーを立ち上げるという話が相当困難な目標ですので、そこは乗り越えるべきでしょう。
 もちろん地道にゲームを作り続けて、良いゲームを作って世間の評価を得るという道もなくはないです。ただ、地道に活動して、他者の評価を待つという方法は、非常に他力本願なんですね。運次第と言いますか。いいゲームであれば他者が必ず評価してくれるかといえば、残念ながらそうでもありません。評価される確率を上げるのが、知名度の向上や広告宣伝です。なるべく多くの方に作品に触れていただくための努力ですね。遠回りのようでも、最初にその辺を固めておかないと、メーカーになって上手く会社を回していくのは非常に困難と言えるでしょう。

 適性を見極めることも重要ですね。なぜなら、すべてを自分ひとりでやることは、基本的にできないからです。よしんばひとりで全部できたとして、それを年間4作品、10年継続できるでしょうか。どこかで息切れすることでしょう。
 であればやはり、分業した方がいい。
 分業するのであれば、当然ながら、自分は最も得意とするポジションに座った方がいい。
 なので適性を見極める必要があるわけです。
 ゲームデザインが得意で、湯水のようにアイデアが湧き、ゲームが作りたくて作りたくてたまらないのか。
 グラフィックデザインが得意なのか。
 イラストを描くのが得意なのか。
 ルールブックを書くのが大好きなのか。
 はたまたそうした方々をまとめ上げ、スケジュールを守らせながら形にする作業が得意なのか。
 なんにも適性がない場合は……そもそもボードゲームメーカーを立ち上げようと思うのかが謎ではありますが(笑)、最後の編集的な作業を担当するのがいいでしょうね。他はみな才能が大きくものをいう適性ですが、編集業務は努力で補えなくもないかなと思いますので。
 ただまあ、編集業はみんなのハブですから、みんなに気持ちよく作業をしていただくという意味において、非常にストレスがかかるところではあります。ですので、ストレス耐性という適性は必要でしょうね。
 さらに言えば、ひとりでボドゲメーカーを立ち上げようという行為が、すでにしてハードなストレスとは切り離せませんので、いずれにせよストレス耐性は必要でしょう。

 自分の適性のないところ……より具体的に言えば、自分が担当しないことを決断したパートについて、そこを担当してくれる仲間を見つけることも重要です。逆に言えば、そこを担当してくれる素晴らしい仲間が見つからなかった場合は、そのパートを自分で担当しなくてはならないといった、消去法も発生しうるでしょう。
 仲間は社員にしなくていいと書きましたが、可能であればそこを任せる相手はプロフェッショナルであるべきです。ゲームデザインを他者に任せるなら、プロフェッショナルがいい。イラストを他者に任せるなら、プロフェッショナルがいい。グラフィックデザインを他者に任せるなら、プロフェッショナルがいい。編集を他者に任せるなら、プロフェッショナルがいい。
 単なる友人関係で依頼すると、相手にも本業があるでしょうから、こちらの作業を後回しにされかねません。お金が介在していると、そこをビジネスで対応してもらうことができます。
 お金がない段階では、身内に安く引き受けてもらうことも選択肢に入るでしょう。また、自分と同じくらいの熱量でボードゲームメーカーをやっていきたいと情熱を燃やす同士がいてくれるなら、そうしたメンバーで一緒に創業することを視野に入れるのもいいでしょう。ただ、ボードゲームメーカーに限った話ではないと思いますが、会社を立ち上げるというのは本当に大変なことです。特に複数のメンバーで立ち上げる場合、メンバー全員が本当に同じ方向を向いていないと、しなくていい回り道をして、空中分解する可能性も多々あります。そんな危険性を負うくらいなら、強烈なリーダーシップを持った人間に方向性の決定を任せて、残りのメンバーはひたすら歯車となって働くという方法の方が、成功の可能性は高いと思います。成功といいますか、スタートに立てる可能性ですね。意思統一がされていないと、そもそもスタートに立つことすらできないでしょう。
 20代でお金もない立場だと、結局難しいじゃないかと思うかもしれませんが、ぶっちゃけ最後は情熱です(笑)。
「こういう素晴らしい作品を出したいんだ」「こういうイラストレーターさんにお願いしたいんだ」といったことを周囲に相談していると、力になってくれる方が現れます。これはですね、断言します(笑)。現れない場合は、あなたの情熱がまだ足りていないんです。精神論かよと言われそうですが、でも事実です。あ、ひとりよがりだと難しいですよ。そのへんの見極めが、特に自分では難しいんですけどね。なるべく同士や先輩の言うことに耳を傾けてください。ときどき、自分の立ち位置を俯瞰して見てください。まあ、特に若いうちは、自分を俯瞰して見るのは大変なんですが(笑)。

 ……いろいろと、役に立つのか立たないのか分からないことをとりとめもなく語ってしまいましたが、こんなことを書いた理由は、日本でひとりでも多く、「ボードゲームメーカーを立ち上げてやろう」と思う若者が出てきてくれたらいいなと思うからです。
 いまやゲームマーケットでも、いろいろなボードゲームメーカーさんが活躍されています。若い方が立ち上げた会社も多く、そのうえでプロダクトとして洗練されていて、本当に感心します。わたしごときがいらぬお節介をやかなくても、今後も続々と素晴らしい力が出てくることと思います。
 そうした状況ではありますが、わたしのテキストがいろいろ悩んでいる方の背中を押すことができたりするならば、またその方が世界に素晴らしいゲームを発表してくださるなら、大変喜ばしいことです。

 ひとまず今回は以上です。次回は1月10日(水)に更新させていただく予定でおります。
 シンガポール~タイの旅行記もどこかでアップしたいと思っているのですが、年が明けると新商品の告知もしていかなければなりません。
 そうしたあたり、どういう順番で更新していくかは検討中ですが、また新年、皆様にご挨拶させていただければ幸いです。

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