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なぜ独立してボードゲーム開発会社を始めたのか②

 Board Game Business Expo JAPAN の開催が発表されましたね~。

https://www.bgbe-j.com/

 我がハーベストバレーも、売る物があるかどうかも分からないまま出展を申し込んでしまいましたよ(笑)。
 いや~、ロンチタイトルが間に合うといいなあ。

 そういえば会社のロゴもできたので、このnoteのアイコンも変えてみました。ちなみにヘッダーのイラストは、ロンチタイトルのパッケージイラストの一部です。どんなゲームになるのか、ぜひお楽しみに。

 さて、前回からの続きです。
 やはり「遥かなる旅路」を聞きながら本稿を執筆しています。
 いちおう前回の内容を振り返りますと、「好きに生きたいから会社を辞めた」ということになります(笑)。

 それでどうしてボードゲーム開発会社を始めたのかというのが今回のお話ですね。簡単に言えば、「ボードゲーム作り続けるんならアークライトでやってればよかったじゃん」「アークライトでできないことがあったとしたら、それは何で、何をやりたいの」という疑問に対する答えになります。

 結論から言うと、「アークライトが目指す方向と、自分がやりたいことがずれていたので、辞めたうえで自分のボードゲーム会社を作ることにした」ということになります。まあ、そりゃそうだ。

 じゃあ、辞めなければならないほどの方向性の違いとは何なのかという話で。詳しく語ると問題になりそうな気がしますので(笑)、問題にならない程度に書いていきましょう。

 これも結論をズバッと書けば、「アークライトはボードゲーム業界を主導する立場に立ちたいと強く希望しているが、刈谷としては別にそんなことはどうでもいい」ということになります。
 正直言って、わたしは地位や名誉なんてものにはほとんど興味がなくて、日本に素晴らしいボードゲームが広まって、それで楽しい時間を過ごす人が増えてくれればそれでいい。
 もちろん金が稼げなかったら死ぬので、金は稼ぐ必要がある。金はめちゃくちゃ欲しい!(笑) 慈善事業をするつもりは一切ない。ただ、みなさんから崇められたい、称賛されたいといった欲求はあまりないんですね。

 話は変わりますが、SNSとかにはびこる、巨大すぎる承認欲求に自我を乗っ取られている連中は一体何なんですかね。そこまでして認めてもらってどうするのかな。というか、優れたことをしていれば、人々は勝手に認めてくれるだろというね。人々が認めてくれる以上のものを認めてほしいというのは、それは浅ましいと言うんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょうね。
 オジサンよく分からないや。

 閑話休題。

 そんなわけで、業界を主導する立場に立ちたいアークライトがどういうアクションを取るかというと、事業拡大ですね。それはそうです。やはり「どの売り場に行ってもその会社の商品が売っている」「その会社の商品がメディアでよく取り上げられる」となると強いですので。

 わたしも一定程度までは拡大も良いことだと思っていたのですが、さすがに事業のスタッフが○十人を超えてくると、「あれ? 稼いでも稼いでも、収支がいい数字にならないぞ」ということになってくるわけです。

 そもそもスタッフが多いと、まず彼らを食わすだけの稼ぎを生み出す量の商品を作らなければなりません。そうすると、昔は厳選してクオリティの高いものを出すことを優先していたのが、次第にたくさん作ることの優先度が上がっていくことになるわけです。
 しかし言うまでもないことですが、作ったものがすべて売れるわけではありません。中には売れない商品も出てきます。そうした商品は在庫として収支を悪化させますので、そうするとそれをカバーするために売れる商品を開発する必要が出てきて……。

 ……まだ問題にならない程度は保てていますかね?(笑) いちおう、当たり前の話を書いているだけのつもりですが。

 わたし自身は「そんなにスタッフを増やすべきではない」「地に足ついた形で、しっかり地盤を固めていきたい」という考えでいたのですが、先にも書いたとおり、会社の方針は違いまして。スタッフを増強していったのもそのためです。

 言うまでもなく、これはどちらかが正しくて、どちらかが間違っているということではありません。
 前者であってもうまくやれる方法はいくらでもありますし、後者であってもうまくやれる方法はいくらでもあります。
 前者の方は爆発力がない代わりに安定感があり、後者はのるかそるかの博打になりますが、当たったときのリターンは非常に大きい。

 結局のところわたしは経営タイプではまったくなくて、完全に職人タイプなんですね。
 なので会社を大きくするとか、業界で存在感を得るといったことにはほとんど興味がなくて、より面白いゲームを作って、より多くのお客さんに楽しい時間を過ごしていただくことが、刈谷圭司の本懐と言いますか、存在意義と言いますか、生きる目的なわけです。あとはまあ、それによって利益を得ること(笑)。

 そのへんがやはり、わたしに退社を決断させた根っこのところで、「自分が納得する商品を、自分が好きなように作りたい」という、自分勝手な欲求を抑えきれなかったということです(笑)。というかまあ、自分が稼いだ金は、自分の好きに使わせてくれというね。

 そのうえで先の稿でも書いた通り、アークライトの主体はあくまでTCG小売業ですので、例えば海外展開なども、思ったようにはできなかったりするわけです。海外展開って、どうしてもいきなり大儲けというわけにはいかなくて、最初は投機的な動きにならざるを得ませんからね。そこは慎重な意見も出るわけです。
 とか言っていたら、アークライトさん、今年(2023年)はエッセンに出展して『ito』の英語版とかを売るらしいですけどね(笑)。いいんじゃないでしょうか。素敵な判断だと思います。成功することを願っています。
 ハーベストバレーも、最初から海外展開を狙います。だからこそ、Board Game Business Expo JAPANにも出展するわけで。ハーベストバレーの商品には、原則日本語、英語、中国語(簡体字)のルールブックを入れ、最初からそのまま海外で販売できるようにしたいと考えています。そのへんも、アークライトではやりづらかったアクションですね。

 さて、そろそろまとめにはいりましょう。

「なぜ独立してボードゲーム会社を作ったのか」

 好きなタイトルを好きなように開発して、稼いだ金を自分が好きなように使いたいから。
 という感じですかね。なんと自分勝手な(笑)。
 ただまあ、上記のように書くとわがままな感じにもなりますが、自分ひとりが食っていけるだけの利益さえ得られればいいという話でもあります。
 失敗しても、誰にも迷惑かけないですしね。
 多くのスタッフがいると、彼らを食わせる責任も出てきますが、ボードゲームの稼ぎで○十人を食わせるのはかなりの難易度。そこに挑もうとするアークライトは、素直にすごいと思いますわ。

 アークライトで多くのタイトルを手掛けさせていただき、ゲームマーケットの責任者を10年務めさせていただきましたが、個人会社で活動するのは初めてです。
「好きなゲームを好きなように作りたい」という幼稚な思いを胸に荒野に出ましたが、荒野には10年前とは比較にならないほど、素晴らしいメーカーさんが多くおられます。
 そうした方々との競争に打ち勝って、開発したタイトルをお客様に遊んでいただけるのでしょうか。それとも誰にも振り向かれることなく、いずれ資金も尽きて田舎に戻り、細々と生きていくことになるのでしょうか。
 それは誰にも分かりません。
 だから面白い。
 だから「遥かなる旅路」が沁みる。

 高揚と寂寥、自信と不安、遠い目標と日々の地道な営み。
 そうした冒険の旅の果てに、ロンダルキアを突破して、多くの方々にゲームを楽しんでいただくことができるのか。
 その日々自体が、わたしにとってすでに楽しい時間なのです(笑)。
 このテキストが、わたしがボードゲーム会社を作った理由になっていたら幸いです。

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