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ひとりの会社でどうやってボードゲームを作っていくのか

 今回のテーマは、「ひとりの会社でどうやってボードゲームを作っていくのか」ですか。

 これも面白いテーマに見えて、わたしの場合はシンプルで、「前職でいろいろやってきた経験があるので、ひとりでもなんとかなる」という話になります(笑)。
 ただそれだと何の内容もないので、下記のふたつのテーマに分解して語ってみましょう。

①ボードゲームの製作工程
②なんの実績もない人間がボードゲーム制作を志した場合

①ボードゲームの製作工程

 ひとりの会社でどうやってボードゲームを作るのかという話ですので、まずボードゲームを作って売るまでにどういう工程があるかを改めて分解してみましょう。

1:ゲームのアイデアを、遊べるかたちにまとめる
2:テストプレイを重ね、クオリティを上げる
3:システム完成後、ルールブック執筆
4:イラストの発注
5:ルールブックの編集①文章のチェック
6:ルールブックの編集②レイアウト案の作成
7:グラフィックデザインの発注
8:印刷所から見積もりを取得
9:イラストの回収
10:入稿物のチェックを複数回
11:グラフィックデザインの回収
12:印刷所に入稿
13:完成した商品を倉庫に入庫
14:卸業者が小売店から注文を集める
15:倉庫から小売店に発送
16:小売店に商品が並ぶ
17:お客さんが買ってくれる

 ……ザクっと分割するとこんなところでしょうか。
 いちおう簡単に説明しましょう。

1:ゲームのアイデアを、遊べるかたちにまとめる
「ゲームを作る」というと、真っ先に思い浮かべるのがこの工程ではないでしょうか。ただこれは、長い旅の入り口にすぎません。しかし、このとき強い情熱がないと、長い旅を乗り越えることができません。
「どうしてもこのゲームを世に出したい!」という強い思いがないなら、このあとの工程に入らない方が無難です。

2:テストプレイを重ね、クオリティを上げる
 テストプレイの重要さやその意義、やり方などを語り始めると1回の投稿ではすまないと思いますが……。
 重要なことをひとつだけ言うなら、「優秀なテストプレイヤーさんは本当に貴重なので、大事にしよう!」ということに尽きるでしょう。
 そういう意味で、ゲーム開発を志す仲間と一緒に切磋琢磨する環境があると、最高だと思います。

3:システム完成後、ルールブック執筆
 ルールブックの執筆が苦痛という人が、そこそこいることに気付いたのは30歳を超えたころでした。わたしはルルブを書くのが大好きなので、ゲームの編集者には向いてるんだと思います。
 編集に求められるスキルはいろいろありますが、ルールブックを書けるというのは重要なスキルのひとつだと思います。中にはルールブックの執筆が上手なゲームデザイナーさんもおられますが、壊滅的にひどい方もおられますからね。ゲームデザイナーさんは優れたゲームを作るのが役割で、読みやすいルールブックを書く役割ではないので、それでよいのです。
 ルールブックの書き方については……ゲームマーケットカタログに載ってたような気がしますので(笑)、それを読んでいただくのがよいように思います。

4:イラストの発注
 作品に合ったイラストを発注するのも、ゲーム作りにおいて重要なことです。

5:ルールブックの編集①文章のチェック
 ゲームデザイナーさんが書いたルールブックを、ろくに読みもせずグラフィックデザイナーさんに渡して流し込んでもらうのは危険です。
 意味が通るか精読し、例外処理が必要とならないかなど、注意深く確認すべきです。
 誤字脱字の修正は、言うまでもありません。

6:ルールブックの編集②レイアウト案の作成
 文章が整ったら、次はレイアウトですね。これもできればグラフィックデザイナーさんにいきなり丸投げにせず、レイアウト案を出すべきです。グラフィックデザイナーさんも、何もないところから作業するよりは、つたなくても取っ掛かりがあった方がスタートしやすいはずなので。
 大体において作業というのは、いったん始めると流れに乗れるんですが、スタートの取っ掛かりがないと苦労するものです。

7:グラフィックデザインの発注
 レイアウト案まで用意できれば、グラフィックデザイナーさんに発注ができます。あとから「こんなはずじゃなかった」とならないよう、きちんと方向性を共有しておきましょう。

8:印刷所から見積もりを取得
 グラフィックデザイナーさんに発注するころには、内容物が固まっているはずです。内容物が固まれば、印刷所さんから見積もりを取ることができます。
 複数社から見積もりを取って比較することも重要ですが、選ばなかった会社さんに断りを入れるのも結構ストレスなので、個人的には2~3社にとどめるべきだと思います。

9:イラストの回収
 イラストを無事締め切り通り回収できるよう、頑張りましょう。

10:入稿物のチェックを複数回
 イラストが回収できれば、グラフィックデザイナーさんに渡すべき素材はそろうはずです。そうすると、あとはグラフィックの初稿があがるのを待つだけです。
 初稿があがれば、見やすさなどをしっかりチェックします。ルールブックやパッケージなら、誤字脱字や読みやすさ、見栄えなどを何度もチェックし、やり取りを行います。

11:グラフィックデザインの回収
 グラフィックデザインを無事締め切り通り回収できるよう、頑張りましょう。

12:印刷所に入稿
 グラフィックデザイナーさんから受け取ったデータを、印刷所さんに渡すだけの簡単なお仕事……と言いたいところですが、入稿形式とかをすり合わせていないとひどい目に合います。主にグラフィックデザイナーさんと印刷所さんが。

13:完成した商品を倉庫に入庫
 無事に入稿が完了して、印刷見本を確認して問題がなければ、あとは商品が完成するのを待つだけです。本当は広報宣伝や販売戦略とかを並行して考えなくてはならないので、待つだけにはならないのですが……。
 商品が完成したら、それを日本の倉庫に運んでもらう必要があるので、運送業者さんの手配も必要です。
 もちろんインディで50~100個しか作らない場合などは、倉庫など借りず自宅に運んでもらえばいいでしょう。

14:卸業者が小売店から注文を集める
 webで直接売るという方法もありますが、よほど集客に自信がないと危険でしょう。
 小売店さんに直接売る方法もありますが、日本全国から注文を取って、一件一件箱詰めして発送して集金するとなると、これはなかなか大変です。
 やはりここは卸業者さんにお願いするのが、結局は楽だと思います。「卸価格で売ってたら商売にならない」という意見もあるかもしれませんが、自分でやる場合の時給とかを検討して判断すべきでしょう。
 もちろんインディで50~100個しか作らない場合などは、イベントで直接売ればよいかと思います。

15:倉庫から小売店に発送
 卸業者さんにすべてをゆだねると、卸業者さんが小売店さんから注文を取ってくれます。注文に応じて卸業者さんから倉庫業者さんに連絡がいき、倉庫から小売店さんに発送されていきます。

16:小売店に商品が並ぶ
 小売店さんに商品が届いたら、お店に並べてくれることでしょう。

17:お客さんが買ってくれる
 小売店さんにに足を運んだお客さんと商品の波長が合えば、購入してくださることでしょう。

 わたしがひとりでもボードゲームを製作できるのは、上記工程をお願いできる知り合いが複数いるからです。
 もっと言えば、「1」「2」「3」は自分でやることもあるし、ゲームデザイナーさんに依頼することもあります。もちろん完成しているゲームのライセンスを許諾させていただくこともあるでしょう。
「4」~「13」あたりは自分で行いますが、イラストを描いてくださるのはイラストレーターさんですし、グラフィックデザインも自分ではできないので外に依頼します。
 編集作業だけは、自分でできるので自分で行います。
 印刷所さんの手配やそことのやり取り、運送業者、倉庫業者、卸業者さんの手配ややり取りも自分で行います。
 それから、発売前の広報宣伝も自分で行いますが、動画やPR画像はやはり外にお願いさせていただくことでしょう。
 イベントに参加して、ブースを運営するのも自分ですね。

 そうすれば、ひとりでもボードゲームメーカーを運営することができる……はずです(笑)。

 では、「なんの実績もない人間がボードゲーム制作を志した場合」についてですが……すでに分量が多くなってしまったのと、時間も遅くなってしまったので(現在21時)、いったんここで区切らせてください。
 11月は水曜が5回あるので、次回の更新は3週間後の12月6日ですね。それではこのへんで失礼します。

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