日本の「歴女」の方々へ・その1 VOL.109
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春吉省吾という作家のなまえは殆ど知られていません。Wikipediaにも私の名は載せていません。Microsoft EdgeやGoogleで検索すればいろいろと出てきますが、断片しか拾い集めることが出来ないと思います。春吉省吾の全体をお知りになりたければ、私のブログでどんな思想を持っているか、まずは検索してください。春吉省吾・ノーク出版という「メインのHP」から検索できます。
会社沿革や、経営コンサルタントとしての指導の基本骨子である「心身経営学」とは何か(ごく一部です)、上梓した書籍のあらすじや内容、さらに今回で109回になった、折々の私見を随筆にまとめたものを時系列にアップしてあります。「春吉省吾」という物書きのスタンスがご理解頂けると思います。https://norkpress.com/ を御覧ください。
さて、タイトルにもありますように、誰がそう名付け、流行らせたのかは判りませんが「歴女」と言う言葉のイメージは、なんとも昭和の匂いがつきまといます。マスコミの頭の固い方が命名されたのでしょうね、きっと。まあしかし、ここでは「歴女」で通します。
私が、不特定の日本の「歴女」の方々に宛てて、ブログを発信しているのは、この先歴史の重層的な楽しさと深みをもっともっと主体的に体験して欲しいからです。
私の主観ですが、この先日本をきちっと立て直せる潜在能力を持っているのは、日本の「歴女」の方々だと思っています。ただ、歴史に興味を持った方々の多くは、NHKの大河ドラマやゲームなどが切っ掛けかも知れません。それから、高度成長期に書かれた「善悪二元論」の歴史時代小説だと思います。残念ながらそれでは重層的な歴史観は持てません。
かつてNHKの大河のディレクターとお話をしたことがありますが、大河のテーマは基本的には「戦国」と「幕末」の1年交代のようです。そうしないと、視聴率が中々取れないということでした。そうでしょうね、きっと……。
私は少し違う意見を持っていますが、我が国の文化やアイデンティティーの多くは、このふたつの時期に形成されたと言われています。しかし、それにしては、その大河のディレクターの方とお話ししても、どうも主人公の掘り下げ方が甘く画一的な気がします。
これはかのディレクターが浅学だというよりも、寧ろ、それらの原作が日本の高度成長期に執筆された「単純二元論」の歴史観によって書かれているからです。それを脚本化、映像化する過程で、主役を際立たせれば、ストーリーは更にわかりやすくなり、大衆に受け入れられやすくなる都合の良い「原作」なのです。しかしこれは危険な一面を持っています。
残念ながら、戦後日本人の多くは、このような唯物論の悪しき善悪二元論に洗脳されてしまって、現在があります。それが、戦後77年を経た今も、我々日本人が「搾取」され続けている悪しき元凶の一因です。
結論だけ言ってしまってはなかなか納得いただけないでしょうね、何しろ、洗脳されてしまってますからね。幕末に限っても坂本龍馬も、土方歳三も西郷隆盛も、大久保利通も、神格化しないで、違った角度から、もっと大きなフィールドで再考してみる必要があると思っています。
まあ、歴史を学ぶのはかっこいい主人公に憧れて、その偶像に「元気」を貰うことなので、あまり拘らなくてもいいのでしょうが、せっかくならば少しだけ違った視点を持てば、もっと深い、新しい視界が広がり、人生が豊かになってくると実感されるはずです。
一時だけ、これまでの歴史時代小説は何だったんだと落胆するとは思いますが……。それを自得すると、権力からも邪悪な者からも欺されることはありません。これまでの歴史時代小説を読んで、それが全てだと思ってしまうと、歴史の視野は広がりません。
日本の「歴女」の本当は、ここから始まると言っていいでしょう。
これについては長くなりますので、日本の時代劇、大河ドラマが何故中途半端なのかと併せて(その2)で具体的に記述します。
もともと、私は企業コンサルタントとして「裏方の戦略実務」に関わってきました。
昭和59年(1984年)に、何のコネもなく、34歳の時に単身上京して5年間、仕事のしすぎで、命に関わる病気をしましたが、たまたま名医と出会って、復帰できました。その時思ったのです。これまで、多くの歴史時代小説の作品を読んできましたが、快復した後に思ったことは、「何かもの足りない」と思ったのです。
海音寺潮五郎先生、吉村昭先生、綱淵謙錠先生、隆慶一郎先生は別格です。いずれもお目にかかったことはなく、皆、永逝されてしまいました。残念です。私の言う「歴史時代小説」とは、市井もの、人情もの、武芸ものとは違い、その時代の事象は変えずに、実在した人物と、架空の人物を組み合わせて、彼らを歴史本流に乗せた「広い裾野を持つ人間物語」だと定義します。(それが「歴史」の本流なのか支流かを見誤れば、そこで活躍した人物評価もまた変わってきます。それを筆者はきちっと自覚して執筆しなければなりません)
病気前まで、私は自分で帯や袴の着付けは勿論、武芸とやらを実際に体験したことはありませんでした。高校時代、必修でいやいや柔道をやった程度でした。
先ずは弓道と抜刀・居合道を始めました。抜刀術は、一年半ほどで止めてしまいましたが、「斬る」ということがどういうことか判ります。総毛立つ感覚が掴めます。現在も弓道と居合は、下手なりに続けています。かれこれ32年以上になります。最近ようやっと、弓と刀、体軸の作り方、手の内の妙が少しだけわかってきました。遅々として進歩がありませんが、それ故に一生探り続けるだろうと思います……。
それで、弓道と居合は、時間を掛けて身体で覚えることにし、この際だから、20年掛けて、日本の歴史の裏側をさまざまな資料を集めて読み込もうと思いました。
病後、10年して、平成12年(2000年)から、経営コンサルタントとして私の骨子となる「心身経営学」なる日本的思想を基にし、MBA等の技法を援用した経営手法を開発し、中小・中堅企業の経営者や承継者のための講座を開設しました。原初仏教、大乗仏教、密教、禅、儒学(論語、孟子、朱子学、陽明学)、原始神道などの思考方法を取り入れ、日本の企業経営者の方々に「個」の哲理を作るお手伝いをすることです。これらは当時としては、なかなか難しかったようで、真意は必ずしも受講者に伝わりませんでした。今もそうかも知れません……。
しかし、苦労して自学してきたことで、いろいろな発見が、次から次へと膨らんで、やがて日本的な心情を基に、新基軸の「春・夏・秋・冬」を冠した長編歴史時代小説を執筆しようと計画するに至りました。弓術、剣術の諸流派の伝書、奥義書などをはじめ、様々な文献を片っ端から調べました。
最初に執筆に取りかかったのが、「冬の櫻」という、本邦初の本格的弓術小説です。
本邦初というのは、誇張ではありません。と言うのも、本来でしたら吉川英治先生などが、本格的な弓術小説をお書きになったのでしょうが、吉川先生のご存命の時には、各流派の弓術伝書や奥義書が全く纏まっていませんでした。それを筑波大学の入江康平先生が「弓道資料集」全15巻に纏め、私はそれを小説に利用させて頂く幸運に預かったというわけです。
「冬の櫻」は、三代将軍家光、四代将軍家綱の時代、会津藩初代藩主保科正之に仕えた、圓城寺彦九郎という実在の弓術(歩射、騎射)と、鍼灸の名人です。戊申戦争で、彦九郎が興した「豊秀流」の伝書や奥義書は全て灰燼に帰してしまいました。伝書、奥義書などは実在しないので、僭越を承知で、彦九郎の心の襞に寄り添って、私が作りました。
「会津実記」には彼の名が多く記されていますが、ご当地会津でも殆ど知られていない実在の人物です。発表しても会津の人達からは、「冬の櫻」は完全無視されました。神聖化された保科正之公を取りまくいろいろな事実を明らかにしたためだと思っています。贔屓というのはそんなものです。本来「歴史を楽しむ」というのは、それらの裏側もきちっと見なければ、真実の歴史、人間の営みは見えてこないのです。
以降、「春のみなも」「夏の熾火」、その間に「風浪の果てに」を挟んで、四季四部作最後の「秋の遠音」を10年がかりで完結させました。
いずれも旧来視点の箍(たが)を取り払い、歴史の勝者によって意図的に歪曲・削除された物語でなく、敗者をいたずらに美化する小説でもなく、時代背景が精緻で、登場人物の息遣いを確かに感じられる小説を目指して書いています。
それには、書きおこし小説を書く方法が一番ですが、これは余程の覚悟がなければ出来ません。生計の途が途絶えてしまうからです。しかしそこまで自分を追い込まないと、まともな小説は書けないと言うことです。
現在書き進めているシリーズは、「幕末・維新」の裏で活躍する架空の天才「宇良守金吾」という主人公が活躍する物語です。主人公の背後に拡がる人間模様の壮大な物語で、舞台作りから長い間温めていましたが、昨年「怪物生成」~初音の裏殿・第一巻~を上梓する事が出来ました。シリーズ第一作の上梓は古希からのスタートになりましたが、この度、第二巻「破天荒解」~初音の裏殿・第二巻~を上梓出来ました。
シリーズを完成するまでは決して惚(ぼ)けるわけにはいきません。少し大袈裟ですが、年齢と戦いながら、命懸けの執筆だと思っています。
多くの日本の歴女の方々に「怪物生成」「破天荒解」の第一巻・第二巻の初音の裏殿シリーズをお読みいただきたいと思います。
長くなりましたので、続きは、(その2)で私見を述べます。
2022.9.9 春吉省吾
ノーク出版ネットショップにご予約を頂いた方には、9月10日から随時発送致します。今暫くお待ちください。
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