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2002年春アニメ『.hack//SIGN』第1話初見感想

どういう風の吹き回しなのかはシリーズ20周年以外心当たりが見つからないのだが、今月よりニコニコで『.hack//SIGN』が配信されたそうだ。

といっても第1話のみ無料だが。AmazonPrime等他サイトでも第1話のみだし、大抵そんなものだろう。いやアマプラはせめて全話配信してくれよと言いたいのだが、昔のアニメはなかなかそうならないからなあ。BPSとかBPSとかBPSとか。

.hack//SIGN。
秘かにアングラ感漂っていた2002年、前から見たかったアニメのひとつだ。

◆.hackとは…?

このページを開いた人は『三爪痕(トライエッジ)』を知っているかもしれないし、かつて「Welcome to The World」の言葉のままに招かれたプレイヤーなのかもしれない。なにをいまさらかもしれないが、今年20周年を迎えたほどの長寿シリーズなのだから知らない人がいてもおかしくない。せっかくだからだから簡単に1から振り返って紹介すると、

『.hack』とはバンダイ(現バンダイナムコ)によるメディアミックスプロジェクトだ。

2002年から第1期がスタートしたそれは、アニメ、ゲーム、漫画、ノベライズといった様々な媒体で描かれる、架空のオンラインゲームを舞台とした壮大な物語。といっても、すべてを把握する必要はないし、どれかひとつだけ断片的に知る程度でも全然問題ない。勿論、なにかしらを把握すればリンク要素にニヤれる。だからそこまでハードルが高い作品ではない。

この第1期を大きく代表するのは、プレステ2で全四部作で発売されたゲーム版(無印)、そして今回紹介するアニメ『.hack//SIGN』のふたつになる。

とりあえず、「どこから手を付けりゃいいかわかんねーよ」「なんでもいいから触れてみたいよ」という人への入門作を挙げるなら、一番人気を誇り現在プレステ4やニンスイでリマスター版が発売されている『.hack//G.U.』が安牌だろう。当たり外れのないチョイスだが、.hackの魅力を知るにはうってつけだ。
これは実質第2期の作品で色々留意すべき点を書いたほうがいい気もするけど、細かいことは抜きに単作で楽しめる。今プレイしても色あせない名作だが、ちょっと古臭いズレはあるがその辺はスルーで。そも、もう16,7年前の作品だから。BGMは最高です。デスクトップのBGM聴いていると泣きそうになる。

◆20年前から気になっていた

ぼくは2006年からはじまった第2期から本格的に手を付け始めたのだが、この2002年当時の第1期はいちおう当時から存在を知っていた。

ゲームはファミ通で知り、オフラインで遊べるオンラインゲーム体験RPGという斬新なコンセプトに刺さっていた。当時は若くお金がない上に全四部作は流石にハードルが高かった。よってぼくの中のアコガレゲーのひとつとなった。あ、アコガレゲーとはぼくが考えた造語である。今ググったら数件だけ出てきたけど。ワシのじゃ。

そして、同年4月から2クール放送されたアニメ「SIGN」は確かファミ通の広告でDVDの宣伝ページみたいなのがあった記憶がある。SIGNってなんやねん、ゲーム版はそういうのついてないのナンデ?と疑問だったし、そもそも当時のぼくは深夜アニメの概念を全く知らなかった。だからよくわからないものとしてスルーしていた記憶がある。

第2期の2006年という名のハルヒイヤーではもう当たり前のように深夜アニメを見ていたし、当時.hackの新作がアニメでもゲームでも出ると知れば「あっこれかぁ!」となったわけだ。だのでいつか見たいなと思っていたけれど、なかなかその機会に恵まれなかった。

前置きが大分長くなってしまったが、早速本編1話を視聴した感想を述べていきたい。

◆自己主張激しい、それでこそ本作を彩る梶浦サウンド

流石に20年前の作品なので作画からは古臭さが否めないが、怪しい店の棚から掘り出したようなこのアングラ感がたまらない。そしてそのアングラ感を映像と共に提供させるはOP「Obsession」が強く耳に残る。それもそのはず、後に鬼滅の楽曲を手掛けることとなった梶浦由記氏が作詞・作曲・編曲だからだ。思えばこの.hackから梶浦氏の存在を知った。なお本作から強い影響を受けたという「ソードアートオンライン」でも手掛けているのは最早運命を感じる。

この梶浦サウンドは作中でも頻繁に流れるし、やけに音量が大きい。この第1話時点ではそこまで盛り上がるシーンはなかったため、BGMが主役なんじゃないかと思えてしまった。でも決してうるさいとは感じられなかった、寧ろ、どこか神秘的な不思議なアングラ感がたまらない。『Roots』もだったが、.hackはBGMが素敵過ぎる。

◆語らないドライな作風

本編は、既に第4話の状態で物語が始まっているムードが漂っていた。それは第1話のアバンで少し先の未来を意味深に描いたよくある構成を言っているのではなく、主人公・司がこの「The World」というネトゲ世界で当たり前のように今日を生きているようだった。

.hackがネトゲ世界を舞台にした前情報などを何も知らない人――当時たまたまテレビを付けなんとなく見始めた人――が見たら、最初はファンタジーアニメと勘違いした人はいるかもしれない。ところが普通のソレではなく、やがてゲームの世界である気付きを自分で探る事になる。

このアニメ、とにかく何も語ろうとしない。非常にドライだ。だがそれが最高に好みだ。カッコイイ。

普通のアニメだったら「ここはホニャララオンラインの世界――」とかそんなナレーションによる分かりやすい説明がされるだろう。けれど本作はそういう語りがない。さりげない台詞回しや描写で勘付かせる作風になっている。そこにスタイリッシュさがあって惹かれたし、ぼくは惚れた。この第1話は面白いかと言われるとかなり微妙だが、どちらかというと興味深さが勝るし、作風だけでも刺さったのはかなりデカイ。

正直説明不足なのは否めない。主人公・司は何者なのか。なにがしたいのかハッキリとしていない。というか現時点だと司が性格の悪い陰キャコミュ障にしか見えないし、こんな時点でかなり人を選びそうだ。まあ、そうなった理由も含めてなにかあったのだろうなと推測させられるし、実際ラストの衝撃なシーンが見る者の考察脳を活性化させてくれる。

本作のメガホンを取るは真下耕一監督
真下監督作品は退廃的な雰囲気、消極的でドライが多い印象を受けている。本作ももれなくソレで非常に納得というか、期待通りだった。万人向けとは言い難いし、直球に面白い作品とは言い難いが、好きな人には刺さる作風だ。なお真下アニメの共通点として挿入歌が多いことで本作もノルマ達成。まれに無敵BGMも流れる。

◆ゲーム版との挑戦的なギャップ

ゲーム版はニコニコでプレイ動画をちょっとだけ見た程度なので詳しく語れないのは恐縮だが、ハッキリ言ってゲーム版のほうがびっくりするほどとっつきやすい。
主人公が友人にネトゲを誘われるも、ゲーム内で謎の敵に襲撃され、友人が現実世界で意識不明の状態に陥ってしまう。この普通じゃないネトゲ・The Worldの謎に挑み、やがて大事件に巻き込まれていく…
という、プレイヤーの情が沸き上がる起承転結が分かりやすくできているからだ。主人公もとっつきやすい好青年として描かれているだけになおさらだ。

本アニメ「SIGN」は、恐らく初めて作品として世に出た.hackシリーズ一作目にあたるのだろう。それがこの第1話を見るまでは、こんな尖った作品を一発目から出してくるストロングスタイルすげえなと、まさかこんなことを思うとは全く予想していなかった。人を選びそうな作風、性格の悪い主人公。今でいうなら「なんだこのアニメ…」と1話切りされてもまずおかしくないと思う。それが(途中空白期間もあるけど)20年も続くシリーズのはじまりなのだからすごい。
真下アニメらしさをそのままに作られているのもすごいというか、20年経った今、どのような制作方針に至ったのかインタビューも見てみたくなったな。

◆ド正論すぎてブッ刺さる名言

1話中盤、不遜な態度を取る司にミミル(ヒロイン)の痛快極まりないド正論発言が浴びせられる。ここで、制作側が司のクソ陰キャを把握して作っているのだなと信頼を確信した。

「ネットもリアルも同じだよ!人と付き合うには最低限のマナーがあって!それがちゃんとできなかったら、話なんてできっこない!リアルでダメなヤツはネットに来たってダメ!ネットをなめんな!」

2002年当時はネトゲが今ほど普及されていない時代だ。あのFF11だって、本作放送開始の翌月5月からサービス開始になる。でもネット掲示板は活用されていただろうし、当時の視聴者からは一体どんな印象を受けたのだろうか。また、今ではインターネット老人会御用達死語と言われそうなネチケットという五文字を連想させられる。
個人的に刺さったのは「リアルでダメなヤツはネットに来たってダメ」ですね。リアルだとアレだけどネットだと大口叩ける、いわゆるネット弁慶は多いだろうけど、司みたいな態度から人物像が分かるヤツもネトゲで実際すれ違い、最悪のコミュニケーションをとってしまうことも有り得るのかなあ…こうして書いているとぼくも黒歴史がうわらば

***

この1話は全体的に地味だけど、個人的にフックのある作風で気に入った。実際司を見届けるアニメなのだろうか。ハセヲさんみたいに人間的に成長していくのだろうか。そも.hackシリーズは好きなのだし積極的に続きを見てみたい。
と書くとその続きは一体何年後になるのか分からないのは個人的にあるあるすぎるので、まあ、なんとかして見たいです…!アマプラは早く全話無料解禁して❤

そして本日12/6(火)より『.hack//Roots』も配信開始とのこと。といっても先にdアニメストア経由で有料配信されていたそうだが。こちらはG.U.の前日譚にあたる物語なのだが、まあ、時間があるときに見ればいいかなあ程度の作品です。正直あまりオススメはできない。
でもOPEDは最高。今でも聴いていると泣きそうになる。思い出補正鬼つええ。



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