『電子戦隊デンジマン』を12話まで見てみた雑感【スーパー戦隊シリーズ雑感】
◆デンジマン
2024年6月4日(火)より『電子戦隊デンジマン』がYouTubeで配信開始されたので視聴している。毎週火曜日22時に最新話が2話分配信。
こうして1クール分継続視聴かつ、この記事をまとめているあたり、思った以上に楽しめているのは間違いない。今のところカオス成分高めな第8話が一番好きです。
1980年2月~1981年1月に放送。
つまるところ44年前の作品だ。スーパー戦隊シリーズ自体来年で50周年を迎えるからすごい話だが、これが第4作というのも気が遠くなりそうだった。そんな初期のほうだったんだ。
「ウソだピョ~ン★ ホントは第17作だピョ~ン★」と言われても信じそうである。なにせ現在放送中の『爆上戦隊ブンブンジャー』が第48作目だ。なにかのクイズ番組で「ホニャララレンジャーは通算何作目?」と出題されてもムリゲーを超えたムリゲーである。
ぼくは特撮はミリしらレベルで全然詳しくない。ニチアサ自体普段から見ていない。
が、この『デンジマン』は何故か以前から興味があった。『チェンソーマン』の主人公・デンジくんとなにか関係があるのでは?という興味である。いやこっちはチェンソーが武器で使うとは思えないんだけど。ただ単に名前が似ているだけなんだけど。こじつけの部類なんだけど。
でもOPの「誰かが助けを求めてる どこかで誰かが叫んでる」はチェンソーマンのことすぎるんだけど。
じゃあ真の視聴動機をまじめに挙げると、デンジ犬アイシーがすごくかわいい。
単にぼくが犬好きだからじゃねーか!と自分で思わなくはないが、こんなかわいい子がマスコットだとか、そりゃあ見てみたいわけですよ。もふもふしたいわけですよ。ぬいぐるみが出たら速攻飼いたいわけですよ。というわけでせっかくのこの機会に1話を視聴してみた結果。
作風がすげえなこの特撮番組!!
◆めっちゃ淡々としたドライな作風
単刀直入に言うと、「そこに怪人がいるから倒すのだ」とストレートに押し切る作風。
スーパー戦隊シリーズの脚本フォーマットは「敵が巨大化して一転攻勢してきたらこちらも巨大ロボで応戦する」のはぼくは分かっていた。戦闘開始前に起承転結の起承が描かれる(日常パート)のが基本的な構成なのだが、本作はアクションに重きを置いているのだろうか?と感じられたくらい導入がスピーディーだ。
なんというか、基本問題発生が早い。ほぼ毎週悪役のベーダー一族の作戦会議からはじまる。
第1話においては開幕数分後に突如怪人が出現し、アイシーがメイン5人に「ホニャララ!君はデンジホニャニャとなってベーダー一族と戦うのだ!」となんだか洗脳みたいなことをしてくる。
そんな言い方だと悪意に満ちているようでヤだし、いちおう今すぐやらなければならない正義としての強行なのは分かる。それでも本当に洗脳しているみたいだった。見知らぬわんこが目をキラーンと光らせてこちらに声をかけてくるんだもんな。ちょっとシュールさが否めなかった。
突然そんなことをされても普通なら困惑するしかないだろう。誰かがやらねばならない問題発生とはいえ、何故自分が選ばれたのか、戦わなければならないのか、非常に納得しがたい。
だが、本作のメイン5人は特に悩むことなくデンジマンとして怪人との戦いに挑む。あっさり5人と合流しても「君がデンジホニャララか!」と声をかけることすらなかったのにはびっくりした。デンジマンのスゴイ力もいいとも増刊号のCM未公開シーンよろしくCM中に理解したんじゃないかってくらい当たり前のように既に適応していた。いいのか。とにかく敵の優先撃破なのを念頭に置かれている。
なおこのデンジマンとして戦うことを任命するくだり、デンジピンクのコーチが怪人に燃やされても一切気に留めなかったのはちょっと怖かった。いやもうちょっと気を使ってやってやろうぜ。ピンクも「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!それよりコーチ助けてよ!」くらい言ってやるべきな気がしました。
◆デンジマン5人のみなさん
正直メイン5人については語りづらい。推せる奴はいない。というか、フックが足りていない気がする。
普段の格好から「こいつはレッド担当!」と分かりやすく色分けされている(違和感なく馴染めている)のはとてもいいのだが、現状沼れるような語り草だとは言い難い。まあまだ全体の1/4…なんだけども結構すぎているしなあ。
1話時点だと主人公チームのドラマが薄すぎる印象は否めないし、上述した通りツッコミたいシーンが多すぎる。如何にもな粗削りな脚本だが、嫌いではない。いちおう刑事の側面を持っているデンジグリーンの父親が怪人に殺されてしまったので敵討ちという一面は持っているが。
まあこういう「きみたちちょっと会話足りないんとちゃう?」な疑問は44年前の作品なのを考慮してみると寧ろらしいんじゃないかなと思えてきた。味がある…というのは流石に言いすぎか?
ゲームボーイ時代のサガシリーズを連想させるつくりと言えばしっくりくるかもしれない。ぼくはニンスイのサガコレクションで初めてプレイしたけど、あちらも特に葛藤とかなくサクサクボスキャラに喧嘩売ってきて名言を残していくストロングスタイルだからな。褒めてますよ。
こう言うのもなんだが、正義のアイコン化してしまっている気がする。「こいつはこのイメージカラー!元々こんな仕事をしているぞ!」に落ち着いた程度で、それ以上でもそれ以下でもない。
それはそれで構わないし、気難しいこと考えずアクションに魅了されて箱推しするキッズがいてもいい。けれどキャラに重きを置いて視聴しているタイプのぼくとしてはどうしても個性を求めてしまう。いちおう話数を重ねるにつれてそれなりに愛着は湧いてきているのだが…
ただ、7話からブルーがギャグキャラ化してきたおかげでとっつきやすくなってきた。ちょっと推したい気持ちも生まれてきた。やはりギャグがそいつのギャップを生み出すスパイスとして優れるツールになったからだろうか。ここまで真摯にみんなと闘ってきたブルーのヘンなトコ(あんぱん好き、8話でのジジイ化)が見られるとおもしれー振舞いだなあと愛着が湧いてきたからな。
それ故に10話の10円バーカー回で豹変していたのはショッキングだった。デンジシャワーであっさり正気に戻ったのは拍子抜けだったけどな!
あとは掘り下げとなる個別エピソードをなかなかやってくれないのも物足りなさの要因なのだと思う。大抵全員で怪人やっつけるぞの流れだからなあ。「今回はこいつが主役!」ではなく「俺たちが主役だ!」な空気とも言える。
どちらかというと悪役のベーダー一族にすごぶる愛着を持ててしまっているのだが、これについては後述。
◆戦隊脱退の危機(第2話)
第2話はデンジピンクが戦隊活動よりテニスを選ぶというすごいことになっている。
「他人のことより自分のほうが大事!」と言い換えると残酷なようだが、そもそも第1話は無理矢理戦う使命を選ばれたのでこう言っちゃなんだがハタ迷惑な話である。一番迷惑なのはベーダー星人とはいえ、自分の道は自分で選ぶべきだろと。そもそも死と隣り合わせの戦いに巻き込まれるのは危険でしかないだろとマジレスしていい。その割には第1話ではノリノリでデンジピンクを名乗っていたのは気にするな!
でもここで唯一反対していたのがグリーンだったのがバランスが取れている。彼の親父が殺されたのだから反発してもいいよなと納得できる。
最終的には結局戦う道を選んだと同時に子供たちを育てる指導者に転身。どうなんだろうなあこれ。自分の道を諦めたも同然だが、まだテニスに携わることが出来たのは精一杯のフォローなんだろうか。アイシーはかわいいけど特にそのへん気遣ってくれないんだよな。いちおうメンバー5人はまだ信頼していなさそうな様子だったが。
◆ガチの殺意とトラウマホラー案件
この作品の悪役とクリーチャー(ベーダー怪物)はワルムーヴがとてつもなく容赦ない。だから猶更倒すべき対象になっているバランス感覚が見事だ。
例えば2話登場のシャボンラーはめちゃくちゃ怖い。
最初怪人ガチャから誕生したての頃はちょっとアホっぽい(バイオリンの音がニガテ)と見せかけて、バイオリニストを石膏化させてからの破壊はクソガキ時代に見ていたら確実にトラウマを植え付けられただろう。そういうセットを使っているんだと分かっていながらも、決して子供騙しとは思わせないホラー演出になっている。
この後ピンクが無限増殖バブルに襲われるくだりも含めて、とにかく生々しい恐怖描写が秀逸。スタンド攻撃を食らっているようでもあった。ピンクが絶体絶命の危機にさらされてからの他4人登場でマジに安堵を覚えたレベルだった。思えば第1話でもモブが白骨化していたのも生々しかった。今後こういう恐怖が襲い掛かるのだろうか?
3話登場のチカゲリラーは石油を利用して東京を火の海にしようと企むのだが、下水道の子供たちがガチで焼死の可能性があったのはハラハラさせられた。
チカゲリラー撃退後にようやく救出で、BGMの使い方も「えっこれムリゲーじゃね…?」と焦らしてくれる。もちろんこの題材でそんな救えない締め方はダメなのでちゃんと救出かつ、安堵を覚えたわけだ。3話はラストがめっちゃ急ぎ足で終わった(本作はシーン切り替えが早いのが顕著だが)けど、それもかえって味になっている気がする。
4話のルパンカメラーは相当ヤバイ。
被写体を撮影し、写真を破壊するだけで対象死亡。デスノートみたいなお手軽殺人である。写真を壁に埋め込んだだけで*いしのなかにいる*状態にしたりエグいことやりまくりで、流石のぼくでもそれはNG判定するしかなかった。
写真能力の他にも実戦においてデンジマンの攻撃をかき乱す厄介な行動パターンが見られるのでこいつ序盤で出すような強敵じゃないだろ!?
これ以降にも毎週死者ないし死と隣り合わせな被害者が多発するので、マジに放置してはならない脅威として毎週君臨している。今回は一体どんなデンジャラスムーヴをやってくれるのだろうかと目が離せない。ぶっちゃけBパートのバトルパートよりもAパートのホラーパートのほうが面白い。
ちなみに一番やべーと感じられたのは7話のウミツラーです。かつてデンジ星を壊滅させたのも納得できるレベル。(それだけに1話完結の宿命かあっさり撃破されてしまったが…)
◆悪役・ベーター一族の絶妙すぎる憎めなさ
そういうわけでベーダー一族は見事な悪役として暗躍しているのだが、個人的には「非道だしヘイトタンクなのにギリギリ嫌いになれない憎めなさ」があまりにも絶妙すぎる。
まあまだ12話しか見ていないので分母が足りないのだが、現時点では是非このバランスを保っていただきたくある。本作の見所さんのひとつになっているから。
ベーダー一族は悪役にしては結構見ごたえある描写や会話がやけに多い。
たとえばデンジマンたちの動向にぐぬぬったり、濃密に作戦を遂行したり、なんだかもうひとりの主人公チーム(ライバルではない)っぽく描写されている。今度こそデンジマンたちを倒すにはどうするべきか本気で悩みに悩みぬいている。
特にリーダー格のヘドリアン女王のキャラがとても魅力的だ。
リアクションがとても人間臭いし、仲間想い(敗れ去ったベーダー怪物を息子のように愛する慈愛心がある)だし、悪役なのに憎めないどころか好感が持ててしまう領域に達してしまった。ぶっちゃけかなりあざといキャラ造形だと思う。まああくまでぼくのような色眼鏡装備の意見なので、キッズに好かれるキャラとはとても言い難いが。
なにせワルだけあって、傲慢でワガママな性格だ。4話に至っては若い美女に嫉妬しているTHEおばさんだ。クズな一面だってある。でもそこも含めて愛しくなれてしまう。
なんといっても曽我町子さんの感情籠った演技が素敵すぎる。なんというか、楽しそうに悪をやっているから好印象すぎるんだよな。毎回デンジマンに勝てそうと思ったところで一転攻勢されて敗北してぐぬぬっていると「惜しかったなあ…」と同情できてしまう。すごい。
ヘドラー将軍から撤退を提案されれば断腸の想いに浸れている表情になっても「ううん…!よろしい!」と許可するのも良かった。大抵そういうのは「ええい!うるさいんじゃい!」と聞く耳を持たない困った上司もいるだろうが、仲良しグループなので寧ろそういうのは解釈違いだろう。
なお個人的に今のところ好感度高いのはヘドラー将軍です。
6話で香織ちゃんの日記を朗読していたのは笑ってしまった。いちおう日記は盗んだものなのでどのみち晒し上げているようなものだが、語りがすっごく優しいお父さんみたいで感情籠ってて寧ろ良い人なんじゃないかと思ってしまったほどなんだよな。前線で戦うときは武人キャラなんじゃないかという期待性が高まってしまう。
そして10話の10円バーカー回では体を張りまくった面白コスプレおじさんになっていた。別に狙ったギャグじゃないのにこれも笑ってしまった。けどこういうので愛着が湧いてしまったんだよ!どうしてくれるんだ!人間に擬態している姿でもかっこいいんだけどなあこの人。
なんか、所々笑ってしまうシュールなシーン多いんだよなデンジマン。狙ったギャグには見えないので笑っちゃダメなのは分かっているんだけど、でもそこもプラス要素として積極的に見てしまう。
***
というわけで結構気に入っているので最終話まで視聴継続してみます。ヘドリアン女王は次回作『太陽戦隊サンバルカン』にも引き続き登場(世界観共有らしい)とのことなので、恐らく立て続けてそちらも配信されるのでしょう。
つーかデンジマンの次がサンバルカンか。サンバルカン⇒サン⇒『ファイアパンチ』のラスボス………ガバガバなこじつけはやめようか。
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