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詩『遠い記憶の晩夏』

そびえ立つ入道雲
山すそを流れる川のせせらぎ
陽をいっぱい浴びる向日葵
稲に波を起こし 通ってゆく風

明治生まれのおばあちゃんが
一軒しかない店で買ってくれた氷菓子
井戸でよく冷えた瓶ジュース
軒に吊るした風鈴の軽やかな音色

稲の上を飛ぶトンボ
寂しげに鳴くヒグラシ
山の向こうに日が落ちると
風に秋の気配が漂ってくる

たくさんの提灯がともり
櫓の上から響く太鼓と歌声
輪になって踊る人達や
浴衣を着て屋台に並ぶ人達

遠い記憶の中 見える
聞こえる
感じる
心に甦る遠い夏

セミの声がなくなり
風景が静けさを取り戻すと
また心の扉の向こうに
記憶の彼方へ消えていく夏



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