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童話

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自作童話ですが、習作です。上手くなるためには書くしかなく、投稿生活を乗り切るための土台となる作品を集めました。未熟なものもありますが、ご一読いただければ嬉しいです。
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#私の作品紹介

童話『虹のすべり台』

 チビはすべり台が好きな犬だった。散歩の途中で公園に寄るとグイグイとリードを引っ張って、コツコツ音を立てて階段を上り、立ったまますべっていく。下りたらまた階段を上り、またすべる。上っている時に尻尾を振ったり、下りると走って階段の下にいくから、楽しんでいたのだろう。  最初は冗談半分に階段に前足をかけさせただけだったのに、チビは自分から上っていった。てっぺんにつくとどうしていいか分からないようなので、僕が砂場から「おいで」と言うとすべってきた。 「チビ、すごいなぁ」とほめると嬉

童話『ぼくのふろしき』

 わが家にエコバッグはない。と書くと環境のことを考えていない家族と思われそうだけど、そうじゃない。エコだけど、バッグではないだけ。  何を使っているのかって? 日本に古くからある、ふろしきという布だ。 コツさえつかめば何でも包める。環境に優しく、畳んでしまえばポケットにもしまえるというスグレモノ。便利さという点で、ぼくはみんなに勧めたい。でも本音を言えば、これを使わせる親を何度うらんだことか。  だって友達と買い物に行く時、ふろしきを持って行く小学生が周りにいる? 友達だけで

童話『そらになった雨つぶ』

 雲の上はいつも晴れた空が広がっています。地面にいくら雨が降っていても、空は雲より高い所にあるのですから。昼間はどこまでも青く、夜はたくさんの星が輝きます。  黒い雲は小さな雫の集まりです。その雫が、ぽつり、ぽとぽと雲から落ちて、雨になるのです。雨粒は透き通っていますが、地上に降ると色がつきます。どんな色にもなれるのです。それが雨粒たちの楽しみでした。  雲の中で空を見上げている雨粒がいます。 「きれいだなぁ。あんなきれいな青になりたいなぁ」  それを聞いて他の雨粒たちは笑い

童話『アリ、そしてキリギリス』後編

 虫の音楽コンテストには多くの歌自慢の虫達が集まっていました。キリギリスだけでなく、コオロギ、鈴虫、ウマオイ、松虫。どの虫もコンテストに向けて練習してきたのでしょう。歌も演奏も、みんな上手です。でも、とキリギリスは思いました。アリは自分が一番だと言ってくれた。自信をもとう。ここで弱気になってはいけない。 「次、野原から来たキリギリスさん」  いよいよ自分の番です。キリギリスは自分の歌を、目を閉じて聴いていたアリを思い出しました。今も彼が聴いてくれている。そう思うと緊張がほどけ

童話『アリ、そしてキリギリス』前編

「仲間がみんな一生懸命働いているのに、君はいいのかい?」 「いいのいいの。それよりもう一曲聴かせてよ」  太陽の下であちこち歩き回って食べ物を巣に持ち帰る仲間を横目で見ながら、一匹のアリが大きな葉っぱが作る涼し気な陰で、友達のキリギリスの歌と演奏を聴いています。 「そうかい? じゃあ、この歌を聴いておくれよ」  キリギリスの奏でるバイオリンと澄んだ声が、風に乗って流れます。 「なんていい歌なんだろう」  アリは目を閉じて、うっとりと耳を傾けています。 「ねぇ、アリ君」とキリギ

童話『クスノキの鐘』後編 

 雨に打たれ、風に葉を揺らしても、クスノキの幹はどっしりとして動かず、枝ではたくさんの鳥達がひっそりと身を寄せ合っていました。静まり返った鳥達の頭の上で雷が鳴っています。 「クスノキのおじいさん、強いね。こんなにすごい嵐なのに、ビクともしないや」とカラスの子が母親に言いました。 「そうね」と母ガラスは子ガラスを羽で包み込みました。  丘の上に白い光が瞬き、少し置いて雷がとどろきました。今までで一番大きな音に地面が揺れ、その揺れはクスノキの幹から枝を伝い、鐘を揺らしました。錆び

童話『クスノキの鐘』前編

「そろそろ巣立ちかね?」  梅雨もそろそろ終わりに近づき、空は何日かぶりに晴れ渡っています。丘の上のクスノキは、カラスのお母さんに声をかけました。数年前からカラスの夫婦はクスノキの枝を借りて巣を作り、子育てをしているのです。春に少し葉を落とすものの一年中緑の葉を茂らせる上に、丘の上のクスノキは幹も太く、四方に長い枝を伸ばしているので敵から見つかりにくく、巣を作るには最高の場所でした。 「そうですね。もういつでもって私は思ってるんですけど」  カラスのお母さんは、あちらこちらの

童話『星の子の冒険』 後編

簡単な前編のあらすじ 空から野原に降りてきた星の子。夜露のようにきらきら輝く星の子は、花や虫達と友達になりますが、その様子をカラスがじっと見ていました。  カラスは光るものが大好きです。巣の中にガラスや金属でできた光るものをいっぱい集めています。星の子はそのどれよりもピカピカしていて、欲しくてたまらないのです。  カラスが急降下しようとした時、笛の音が流れてきました。カラスは慌ててブレーキをかけ、羽をばたつかせて高く昇り、地面の虫達は草の陰に隠れ、鳥達は飛び立ちました。人間

童話『おたまじゃくしの歌』

『第34回新美南吉童話賞』に応募した作品です。 少し長いので目次つけました。 前半  水の張られた田んぼに雨が降ってきました。おたまじゃくしのおたまは、落ちてきた雨粒がたくさんの丸を描くのを、水の中から見上げています。  ざざー。雨が強くなってきました。するとカエルが次々に歌い始めます。 歌は田んぼ中に広がり、夜空高く、遠くまで響きます。おたまも水から顏を出して、大きく息を吸い込みました。尻尾はまだあるけれど、足は四本生えてきました。水から出て外で暮らす日も近いようです。