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ノート2 社会階層と社会階級の作用とは何か

背景:
 前回のノートでは社会階層と階級がどのように形作られているのかを考察した。社会階級は生まれによって、社会階層は本人努力によって規定される。本ノートでは規定された社会階級と階層が人間にどのような作用を及ぼしているかを検討する。

本文:
 まず社会階級について検討する。ブルデューによれば社会階級とは正統階級、中間階級、大衆階級に分類されるという。個人がその地域に根差している文化の正統性に近ければ近いほど個人の階級は正統であり、離れれば大衆的である。この正統と個人の距離によって階級が規定されるのであれば階級とは人間にどのような作用を及ぼしているのだろうか。
 筆者は階級は個人の行為や所作、趣味を規定する作用があると考えている。つまり個人より階級の作用が強いということだ。具体的に考えてみると正統階級、ないし上流階級には相応の振る舞いが階級によって要求されている。食事のマナー、場に合わせた服装、趣味など個人の意思によって行われているかといえばその階級のハビトゥスによって選好させられている所作がある。また大衆階級も同様に所作がハビトゥスによって再生産されていると考えられる。生まれた時点から階級文化の基礎素養を身分資本として得てしまっている以上、得ている資本に自らが規定されてしまっている。生まれから身分資本を切り離すには育ちを生まれから切り離す必要がある。これは大衆階級に生まれた子供を有名私学へ幼少期から通わせる、ということだが家庭が生産している身分資本と学校が再生産している文化資本はどうしても異なるため”正統的文化の純粋さ”という観点では家庭と学校で齟齬か生じてどうしても所作や振る舞いに無理が生じてくる。人間は二種類でもハビトゥスを噛み砕いて消化し自らの身体化された文化資本にできるがどうしても”純粋さ”という観点で見れば家庭が正統で学校も正統の純血と家庭が大衆で学校が純血の混血とでは差異が生じてくると考えられる。この差異が個人の所作に影響することは避けがたい。純血の育ちが形作るハビトゥスと混血の育ちが形作るハビトゥスが違う以上、ハビトゥスの違いから個人の行為、所作、選好、つまり慣習が異なってくる。以上の議論から階級はそのハビトゥスによって個人に慣習規定作用を及ぼしていることが分かる。

 次に社会階層について検討する。社会階層を考えると人間は自分が属している社会階層から利益を得ていることが指摘できる。例えば役職、年次は社会階層と給与を紐づけている。また何かの職人や専門士業も同様に社会階層と給与を紐づけている。不可抗力さえ無ければ人間の自己努力や実力によって社会階層は上下する。そして社会階層は人間に利益を与えるという形で彼らの行動に報いるのだ。この社会階層が人間に利益を与えるがために人間は自己栄達のため社会階層を上昇したがる。例えば人間は自己努力によって勉学に励み企業へ就職したり資格士業を行ったりするが勉学を行わなければこうした社会階層上昇は起こらない。この階層上昇は文化資本優位の構造(大学教員や文化職人など)であれ、経済資本優位の構造(上場企業や資格士業など)であれ社会階層上昇には勉学が欠かせない要素となっている。自己能力が自己の社会階層を規定することは以上の議論から自明となる。この点をブルデュー的に考えると社会階層は”制度化された文化資本”が強く働いている場(界)となる。なぜならば大学や専門学校を修了したという肩書きがとても強く階層上昇に影響するからだ。よって、社会階層は個人に紐づいた制度化された文化資本相応の利益を与える作用があると考えられる。付け加えて階層上昇を達成した彼らにはそれを実現可能にした慣習があると推測される。


要約:
 以上の議論から社会階級は個人を規定し、社会階層は個人に利益を与える作用があることがわかった。

応用:
 この社会階級と社会階層の作用をくらがりチャレンジのアップデートに応用した場合、どうなるか。まず社会階級の慣習(ハビトゥス)を模倣した場合、その社会階級の選好(思考)様式を理解するヒントになる可能性がある。また社会階層の慣習を模倣した場合、それが継続すればするほど自己の社会階層を上昇させる可能性も考えられる。階級や階層に紐づいた慣習行動の分析は今後の課題としたい。

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