Pol.isを大学自治で使ってみました。

はじめに

iU(情報経営イノベーション専門職大学)という800人規模の小さい大学で、学内の自治活動を行っています、柿澤です。
iUには、学生全員を会員とした学友会という組織があり、学生の学費の一部を学友会費として集金し、学生の生活、活動の支援を行う取り組みがされています。
私は、その学友会費の使途の決定を行う組織「自治委員会」に属しています。学友会費の使途の決定の他にも、サークルなどの管理や備品の無料貸出なども行っている組織です。
この組織の構成員は、1年に1度の選挙で決定される仕組みですので、代議制民主主義と言えると思います。要は生徒会みたいなものです。

お気づきの方もいると思いますが、お金の使い方を決めるという重役がありますので、「自治」が欠かせません。学生みんなから集めたお金を使うわけなので、学生の民意が反映されることが理想です。
代議制民主主義で民意を反映させる手段は主に「選挙」です。しかし、選挙"だけ"では民意のごく一部しか反映できません。リアルタイム性が欠けていますし、言語的なコミュニケーションも欠けていますし、色々かけています。加えて、弊大学の小さいコミュニティーで顔が見えて、意見収集や議論が容易であるという下地が活かせません。
こういった前提を踏まえて、意見収集や意見の可視化、議論の下地作りなどの一歩目として、小さい規模でPol.isを使ってみるという試みを行いました。
結果として、上記に書いた課題の解決には全く至っていませんが、前進できたような気がしますし、先ほどの前提状況とすごく相性が良いツールでした。

ここからは、本題であるPol.isを使ってみたレポートを書いていこうと思いっます。(※使用の規模感はまだ小さいです。)

Pol.isとは

リアルタイムで、多数の人の①意見の収集、②意見の分析、③意見の可視化までを行うことができるオープンソースのツールです。(無料)
Wikisurveyとも呼んでいるそうです。Wikipediaのようなサーベイツールと考えると想像しやすいですね。論点を投稿して、みんなで論点を補完し合いながら、広く意見を可視化していくイメージだと思います。

利用者は、誰かが作成した論点に対して、同意、反対、パスのいずれかを選択し、意思表明を行います。また、論点が不足している場合は、自ら投稿することもできます。こういった仕組みで意見の収集を行います。

論点について意思表示するインターフェース

ここでは、Pol.isの説明や使い方の深堀りは省略します。
以下の記事が、それぞれ詳しく説明してくださっているのでぜひご覧ください。

なぜPol.isを使ったのか

最初に説明した自治委員会の、選挙期間中に利用しました。
意図としては、立候補者の意見を収集、可視化し、投票権を持つ学生に活用してもらいたいということでした。
大学の自治では、やはり人気投票になりがちです。また、投票意識も低く、投票率も19~21%くらいしかありません。こういった状況の解決策として出来ることを考えた時、立候補者の考えの可視化でした。

結果

先ほどの目的を達成することができなそうだ、ということが早い段階でわかりました。
その理由は、SNS認証が正しく作動せず、実名での意見収集が困難であったからです。Pol.isには、SNSログインをした人の意見を、名前と共に可視化する機能を持っていたのですが、どうにもログインがうまくいかず断念しました。
この機能がないと、自分と同じ考えを持つ立候補者を見つけることはできません。
自分に開発力があればエラー直しに貢献できるのですが、その実力がなかったので、匿名でも十分にメリットがある利用意図を再検討することにしました。

新たな意図の発見

新たな意図として、リアルタイムで任期中の自治委員会の意見を可視化することで、学生がいつでも自分と自治委員会の意見を照らし合わせることができる状況を作ると設定しました。
これはまだ進行中であり、今完了しているのは、自治委員会の意見の可視化までです。公開してから浸透までも、長期戦になりそうな予感がしています。

以下は、自治委員会の意見が可視化された実際のレポートです。

2024年6月12日時点のレポート(※おそらくレポートは更新されます)

レポートを詳しく見る

コンセンサス

まずは、既にコンセンサスが取れている論点と、意見が分かれている論点を表示してくれています。

コンセンサスが取れている論点

自治委員会のメンバーは、学生の意見を元にボトムアップで運営したいと考えているそうです。A3、B4については後ほど説明します。

意見が分かれている論点

学友会倉庫を開放するべきかどうか、という論点で意見が割れています。学友会倉庫とは、無料で貸し出す備品を保管している部屋です。
なぜこの意見が割れているかと言いますと、昨年、開放状態の倉庫から盗難が起きたからです。
その時、セキュリティが万全ではなかったという大きな原因があるのですが、例え対策をしたとしても、開放には反対するという人が存在することがわかります。

マジョリティー

次に、マジョリティーの有無です60%以上の人が意見を同じくした論点を表示してくれています。

先ほど、意見が分かれた学友会倉庫問題が一番上にあります。意見が分かれている=マジョリティーがない、という訳ではないみたいです。
その他は賛成が集まる論点に、マジョリティーがあるということが読み取れます。

グループ

次に、グループ分けを表示します。分ける基準は、複数の論点に対して同じ意見を持つこと、別のグループと明らかに違う意見を持っていたことらしいです。

先ほどから出ていた、A3, B4はグループとその人数の数字を表していました。B4は、特に明らかなグループを形成しているようです。
実名の意見を収集することができれば、ここについてさらに分析できるかもしれません。

パスが多い

パス(どちらとも言えない)と答えた人が30%以上の論点を表示してくれています。明確に尖った主張が無い限り、答えにくそうな質問ばかりが並んでいる印象です。

今後の展開

ここから、学生に広く周知しながら、頻繁に論点の追加や、回答の更新を行います。また、学生からの回答入力を促し、大学全体の合意形成に活用していきたいと考えています。
また、そこで閉じることなく、収集したデータを下地に、大学現地で議論が展開されるような環境にしていきたいと考えています。

このように、効率の良いボトムアップ(効率的に意見を収集し、そのデータを元に自治委員会がトップダウン的に意思決定を行うことを勝手に言い表しました。)や、間接民主と直接民主の間くらいを実現することを目指していきます。

付録:使った感想

コメント(論点)の作成、モデレートが難しい

利用者はコメントという形で、論点を追加することができるのですが、どんな論点を追加すれば、自治委員会の意見を可視化できるのだろうかと悩みました。難しいなと思います。
ただ、自分で悩まず、学生が知りたい論点を追加するようになっていけば解決していく問題です。
その段階で発生する次の問題がモデレートです。明らかに必要のないコメント(例:Hi!)などはすぐに非公開化などできますが、微妙なのも出てきそうです。そこの基準は難しいかも。

使ってもらうには説明が一部必要

最初は、コメントという欄に論点を入力するというルールがわからない人が多いので、画像を用いて説明しました。
しかし、意見表明は、使いやすいアンケートのUIという感じなので、全く問題なさそうでした。

最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。
ぜひ、身の回りのコミュニティで利用してみてください。

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