なぜ私は大富豪が弱いのか？

　まず最初に宣言しよう。
これは私の一世一代の負け惜しみである。

　突然だが、私は大富豪がとても弱い。大体いつも最下位争いをしている。
しかも弱いのは大富豪だけではない。7並べも、オセロも囲碁も、最近始めたチェスも多分弱い。つまるところ頭脳を使うゲームがとても弱いのだ。
なぜ私はこんなに弱いのか、ここしばらく暇さえあればずっと考えている。
別にゲームが嫌いなわけではないと思う。みんなで遊ぶのは楽しいし、恐ろしい罰ゲームなどがなければ負けるのもそこまで嫌ではない。そりゃあ少しは悔しいけど。
負けたっていいじゃない、所詮ゲームなんだから。そうは思うけれど、ここまで弱いからには何か理由があるのでは？
頭が悪いと言ってしまうのは簡単だし、結局その側面が強いのは否定できないのだけれど。
とはいえ世の中は自分本位で残酷なので、少し頭の回りが悪そうな人間やおとなしそうな存在は狙われやすい。自分の利益しか考えていない人や、自分より劣っているように見える他人を見下すことを生きがいにしているような人々からすると、ノーリスクで優越感を与えてくれる存在に映るのだろう。
負けるのは仕方がない。でも最初から敗北するわけにはいかない。
良い機会だ、考えてみようと思ったわけだ。

　幸か不幸か私はそれなりに運が強い。ババ抜きは運ゲーなのでわりと上位に食い込んでいる。
大富豪だって最初に配られるカードは運で決まり、みんな持ち札を最大限活用してゲームを進めるはず。だとすると配られた時点で私だけ圧倒的に不利なわけではない。
たとえばゲーム上の駆け引き。カードのポテンシャルを最大限発揮するためには1番効力を持つ場に出す必要がある。
数字自体の揺らがぬ強さ、枚数という力、そしてここぞというタイミング。この三つを揃えられる人がきっと強い人。
そしておそらく私に一番足りないのはタイミングを測る力だ。
一応考えてはいる。が、圧倒的に時間が足りない。その結果今打てる最大の手を打つことになり敗北への道を辿る。
2日とか3日とか考え続ければ大富豪強者と同じ答えを出せるかもしれないけれど、みんなで楽しむゲームにそんなシステムはない。私だって嫌だ。
あくどい商売をしている人は相手に時間を与えず決断を迫るらしいが、たしかに効果的だと納得してしまう。
よく私に決断力があると言ってくれる人がいるけれど、それは十中八九考えていない。ほぼ勘ともいえる何かによって無意識的に導き出された何かである。ちょっと特殊能力みたいで格好いいじゃないか。
この圧倒的に考えることに時間を使う習性、ゲーム以外でも少なからず私の生活を圧迫している。本当にもう勘弁してほしい。
結局大富豪が弱い理由はわかったけれど解決策はわからないまま。きっと私はこれからも負け続ける。
ただゲームでないなら勝ち目はあるかもしれない。
だって人生は長い。何日でも悩んでいいし、誰かに迷惑をかけなければ決断を先送りにしてもいい。自分より得意そうな人に助言を求めたっていいし、自分の苦手なゲームは放棄してもいい。
とはいえ大富豪は強くなりたい。