君との距離 前編
*この話は約束、飾りに願いをの続編になります。まだ読んでない方はそちらを先にお読みになる事を推奨致します
また、シリアスな展開や流血表現が含まれるため苦手な方はご注意ください
ここは俺達の家から少し離れたショッピングモール。中にある喫茶店である人と俺は待ち合わせをしている。そろそろ来るだろうかと思いながら頼んだコーヒーを口に流し込む
「よっ、久しぶりだな」
そんな事を思っていると、テーブルに俺より少し体格のいい男が現れた。こいつは彼の友人であり、待ち合わせしていた本人だ。こいつとは前に彼の誕生日の時にお世話になっていた
「ああ、久しぶりだな。とりあえず、あけましておめでとう」
「おう、おめでとさん!珍しいな、お前から俺に用事なんてよ」
ニカリと笑いながら話す友人を見て、初めて会った頃の少し険悪な雰囲気を思い出した。あの頃よりはお互い話しやすくなったと思う
「その話はこれからする。とりあえず座ってなんか頼めよ。奢るからさ」
「別に奢ってもらう必要はないけど、ありがたく受け取っておくぜ」
少しして
「で?わざわざ彼を呼ばないで俺だけ呼ぶのには訳があるんだろ?」
友人がアイスコーヒーを飲みながらチラリと俺を見る。今までこんな事しなかったのもあり、気になっているのが伝わってくる
「ああ。話は一月ほど前なんだが、こんな手紙が俺達の家に届くようになった」
そう言って俺はあの宛名のない手紙を数通友人に見せた。中には見つけられるかな、こっちは見つけたぞ等少し怖い文章が書かれている
「.....ふむ。彼は怖がりそうだな」
「まあな。で、この手紙の送り主はわかってる。俺の昔の知人の男だ。そいつは俺と付き合っていると昔から勘違いしててな。高校で離れてから疎遠だったんだが、この前俺と偶然会ったんだ。それでまた付き合うとか言われててな」
「面倒な事になってんだな。で、そいつが教えてもないのにあの家の住所を知った、と」
「おお、話が早い。流石だな。これくらいなら俺が彼の目に触れないように手紙だけ捨ててればよかったんだが、年末にこの手紙が落ちていた」
もう一通友人に手紙を渡す
「...!!これは....」
その手紙を読んだ友人が少し驚きの声をあげる。中には君、邪魔なんだよねと書かれている
「彼が狙われ始めた。あいつ、なんでもするんだ。昔からそうだったから」
過去の記憶を呼び起こして最悪の事態を想定してしまう。そんな事だけは起こってはいけない、俺の気持ちに呼応して握りしめる手に自然と力がこもる
「は〜....。なるほどな、それで俺に用事っていうから何事かと思ったら本当に厄介事みたいだな」
「すまん、本当なら俺一人で解決しなきゃいけないんだが」
「別に構わねえよ。彼が狙われてるとなると、俺も無視できねえ。だが、この事を彼は知ってんのか?」
「知人との関係性や手紙の事は話した。彼も納得してくれた。だが、狙われている事は話してない。不安にさせたくないからさ」
「......そうか。お前がそれでいいと思うならそれでいいさ。間違う事だけはするなよ。俺は何すればいい」
「わかってる、間違わない。お前には」
こうして、友人と俺との協力計画が始まった
「あ〜あ、つまんないの〜」
僕は今、一人で家の中でソファに横になっている。こんな時、いつも隣にいてくれる彼は用事があるらしく外出している
「どうして外出ちゃいけないんだろ」
昨日、彼にここしばらくは出来る限り外に出ないでほしいと言われていた。確かに雪が結構降ってきているし、寒くなっているから外に出る事はしたくなかったけど...
彼に何か隠し事をされているのではと思ってしまう。思えば、新年が明ける前から帰るのが遅くなっている理由もわからないままだ。どんな事でも報告してくれていたはずの彼が、報告する事が少なくなって秘密にされる事が多くなっている
「....今、何してるんだろうな。君がわかんなくなってきたよ」
ポツリとそう呟いて上を眺める。外の雪雲のように暗くどんよりとした空気が家にも入ってきている
「大丈夫、大丈夫。信じなきゃだもん。....あ、彼から連絡だ」
言い聞かせるように念じていると、彼から僕の携帯に連絡がやって来る。見ると、夕飯までには帰るからご飯を作っておいてくれときていた
「そっか、夜には帰ってくるのか」
何か料理出来る材料があるかと冷蔵庫の中を確認する
「う〜ん、どれも微妙に量が足りないかな。スーパーに行ってこないと」
家から出る理由が出来て少し解放的になる。今、この家にいたくない。そんな雰囲気が立ち込めていた
「まあこんなもんでいいかな。これだけあれば料理出来るよね」
少し衝動買いしてしまった部分もあるから袋が大きくなったが、まあなんとかなるだろう。そう思って家へ帰ろうとすると
「こんばんは」
「え?」
突然誰かに話しかけられたと思って振り返ると
「やっぱり君だね〜」
「えっと.....」
僕より少し大きくて幼げを残した顔、どこか見た事ある顔に記憶を手繰り寄せていると、ふと思い出した。彼が以前にカフェで待ち合わせていた恋人っぽい人だったと言っていた人だ
「あの時の」
「あ、覚えていたんですね。てっきり記憶にも残ってないかと思ってました」
彼はこの人の事をなんでもしてくる人だと言っていた。少し警戒心を持ってこの人と話す
「覚えてるよ。ちょっとビックリした出来事だったからね。どうしてここに?」
「別に。私もこの近くに住んでるから買い物」
ふーん、その割には何も持ってないように見えるけどね
「それじゃあ僕はこれで」
「私はまだ用事があるんだ」
そう言って僕についてきた。困るんだけどなぁ
「.......」
気にしても仕方ないので無視して歩き始める。この人も僕の後ろに静かについてきた
少しして、アパートのある住宅街へとやってきた。そろそろここら辺で離さないと。家にまで入って来られても困る。そう思っているとあっちから声をかけられた
「ねえ、ご存じです?あの手紙」
「....知ってるよ。あれ、君がやってるんだってね。でももう送ってきてないみたいだし、もうしないでほしいんだけど」
振り返らないでため息混じりに言う。あの手紙には少しだけ困っていたからハッキリ言わなければ
「へぇ.....そうなんだ」
少し笑ったように聞こえて振り返る
「なにがおかし」
ここまでしか言葉を発する事が出来なかった。なぜなら
僕の右の腹下にはこの人がいつの間にか持っていたナイフが突き刺さっていたからだ
突然の事と強い痛みにそのまま倒れ込む。刺された場所と口から血が流れてくる
「なん....で」
「君、邪魔なんだよね。彼は私の。これで邪魔は消えた」
そう言い残すと彼はナイフをその場に捨てて走り去っていった。一人残された僕は道路に動けなくなったまま、意識を失った
君がいてくれたなら
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