JO1の主演ドラマが企画として秀逸すぎた件

先日、3年目に突入したJO1の「主演ドラマ」が発表、公開された。

全話視聴した上で、結論から述べると、「演技ほぼ未経験のひよっこアイドルたちがドラマに挑戦!」という前提を踏まえた企画として、極めて素晴らしいと思った。本稿ではその秀逸さについて書いてみたいと思う。

ドラマ「ショート・プログラム」

ドラマの原作は、言わずと知れた「タッチ」を代表作に持つ、あだち充先生の短編集「ショート・プログラム」。発表された直後に全巻購入し読破したが、短編集なだけあってストーリーは多種多様。コメディもあれば、切なく物悲しいものもあり、また少しゾッとするような物語もあった。共通して青春の爽やかさ切なさが、あだち充先生の世界観で描かれている。

原作漫画「ショート・プログラム」1巻表紙

さて、肝心のドラマの話だが、第一印象としては、「ドラマ本体のクオリティだけ」見ると、どうしたって初心者11人のドラマだし、やっぱり手放しで人に勧められるようなクオリティではないと正直思った。
中にはもちろん予想以上に演技が上手だった子や、雰囲気作りが上手だった子もいた。それについては後述するが、いずれも贔屓目に見て及第点といった具合だろうか。

しかし、それでも全体感としては非常に素晴らしい企画だと感じた。それにはいくつか重要なポイントがある。

まず一つ目が、「アマゾンプライム」という加入者限定サービスでの配信であること。
加入者は選んで見るわけだし、コンテンツに直接課金するわけでは無い。つまりお金や時間の無駄だった!ということには極めてなりにくいという程よいハードルの高さ。「わざわざ」見る人はJO1ファンか原作ファンが多いだろう。

そしてJAM(JO1のファン)は当然どんなものでも肯定する。だって私たちはドラマそのものより本人に価値を見出しているから。
これこそが二つ目のポイントである。
原作を読んだからこそわかるが、各ドラマでは、設定の部分を中心に改変を加えている。

例えば、「ゆく春」では主人公が披露する特技が2つあるが、いずれも主演の鶴房汐恩くんの特技そのものである。
また、「どこ吹く風」では主人公が美容学校の生徒という設定になっているが、これは主演の佐藤景瑚くんがかつて美容師見習いであったことによる改変だろう。劇中によく出てくるモチーフも、佐藤くんの好きな動物にちなんでいる。
全話に共通していえば、主人公が身につけているアイテムはほとんど各メンバーのメンバーカラーとなっている。地味なキャラクターのはずのイマイチくんが何故かピンクのベルト(主演の川西拓実くんのメンバーカラー)を身につけていた時は少し、おや?と思ってしまったが、まぁ些末な話だろう。

いずれも、決して不自然すぎることはなく、物語に深みを持たせ、主役を上手く引き立てている。主演の「アイドルJO1」にうまく乗じて、ファンにしか伝わらないようなささやかなものから、ストーリーをガラリと変えるものまで、主役本人に寄り添った改変の数々。
しかし、繰り返すようだが、ドラマの質に影響しているわけではない。むしろ各メンバーが自分の色を出すことによって、各人の持つ魅力がキャラクターの魅力と重なり、ドラマ全体の価値を高めているように感じた。
「JO1」の魅力と「ショートプログラム」の魅力の両立。この辺りがうますぎる。

重なる内容となるが、三つ目のポイントは、この「主演に寄り添った設定」にある。
演技初心者にとって、自分からかけ離れた役を演じるよりも、自分に近い部分がある役の方が当然演じやすいだろう。主演に寄り添った設定があるからこそ、各人伸び伸びと、自然体で演じていたように思う。
先程はクオリティに対して辛口でコメントしたが、全員が初心者ということを鑑みるとかなり高評価だと思う。台詞回しやジェスチャーなど、伸び代ばかりだと思うが、表情や声色はとても自然で雰囲気をうまく作れていた。

四つ目のポイントは、題材の素晴らしさである。原作は短編漫画で、コアで熱狂的で、言い方を選ばなければ少し厄介なファンが多いわけではない作品。(この辺り、某アイドルの主演映画の炎上っぷりを見ると本当に原作の選び方のセンス良かったなと思う)
原作ファンはどうしたって「実写化」に対して批判的であってしまうものだと思うが、今作の原作ファンの方々は穏やかに楽しんでくれていたようだった。
さらに、短編だから、個々のメンバーのキャラクターにマッチしたストーリーが選んで当てられており、そんなまたとない作品に11人全員がそれぞれ異なる物語の主演という絶対的な立ち位置に立つことができる。
これがもし11人で一つの映画を主演、だったら話は別だっただろう。おそらく形としては11人が同列の主人公だとしても、実際にはヒエラルキーが生じたと思う。(cf.OH-EH-OHのMV)

そして最後のポイントは、周りを固める共演者の存在である。ヒロインは皆さんフレッシュで、でもしっかりとした実績を持つ方々ばかり。ドラマを見ていても、その魅力的なキャラクターに好感が持てた。著名な俳優さんたちに囲まれ、吸収できるものも多かったのではなかろうか。

以上を総括すると、初々しさは感じられるものの、統合的にみればとても楽しめるコンテンツとなっていた。
とにかくJO1にとっては最高の経験だったことだろう。演技の上達には何よりも経験値が大切だと思うからこそ、このデビュー作は11人全員にとって非常に価値のあるものになったと思う。
また、JO1はドラマの撮影前に基礎的な演技レッスンを受けていたらしい。学びから実戦まで、短期間で大きな経験をした彼らの今後の活躍がますます楽しみである。

ドラマ「ショートプログラム」はアマゾンプライムにて全話配信中。ぜひ見てみて欲しい。

なお各話についても書きたいことがいくつかあるので、それはまた別の記事にまとめようと思う。


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