Introductionー私の根っこを作ったミュージカルの話

私がミュージカルを知ったのは、小学生の時に、好きだったアメリカのダンス番組で行われたパフォーマンスがきっかけだった。動画を見つけたので貼っておく。

ミュージカル映画”Hairspray”の監督アダム・シャンクマンがちょうど審査員をやっていた縁で、このパフォーマンスが披露されたわけであったが、私は
「ドレスがヒラヒラしていて可愛い!」
と幼心に魅了された。
そして、ミュージカル映画”Hairspray”を見た。

ディズニーでどっぷり育った私は、多くの人が抱く「演技中に歌い出す」と言った違和感も覚えず、すんなり「ミュージカル」を受け入れた。それどころか、どっぷりハマった。
そして当時の家庭教師の先生は舞台役者をしていたので、他にもたくさんのミュージカルを教えてもらった。たくさん見た。どれも最高に楽しくて、切なくて、笑って泣いて、面白かった。
感情が昂るシーンに、歌い出すなんて、とても情緒的で素敵じゃないか!実際私は歌うことも踊ることも大好きだったから、道を歩きながらよく歌っていたし、その点に特に共感していた。

ミュージカルにハマった私は、家庭教師の先生の出身校で、ミュージカルをやる部活がある、とある中学校を目指すことにした。
文化祭でその部活がやっていた”Mamma Mia!”の舞台を見た。いつか私もあの舞台に立って、スポットライトを浴びてみたい!ただただそう思った。
必死に勉強した。

そして晴れて、ミュージカルにどっぷり浸かる6年間へと、一歩足を踏み入れることができた。
今思い返してみれば、人格形成が行われた10代の頃に多くのミュージカルに触れたことが、私の人生に大きな影響を与えているように感じる。
なぜなら、ミュージカルは多くの場合、その楽しげな音楽とダンスの後ろに大きな社会問題を表現していることが多いからだ。
一つ一つの役を演じるにあたって、それらの問題について自分なりにたくさん考えた。その中で形成した自分の考えや意見は、今も変わらず自分の核となっている。

以前、友人と”Kinky Boots”の舞台を映画にしたものを見に行った。
ストーリーと歌は知っていたが、しっかりと舞台を見るのは初めてだったので楽しんでいた。
終盤、主人公が心にもなく差別的な発言をしてしまう場面で、
「自分だったらなんて言うだろう、思っていなくても、感情的になって傷つけるようなことを言ってしまわないか」
と考えていた。
その時に気づいた。私にはミュージカルを通じていろんな問題を考える"クセ"がついていたのだ。

思い返してみれば、ニュースになるような差別、性的嗜好の問題、貧困、ドラッグ、死などの社会問題は、ミュージカルの掲げるさまざまなテーマとして私の思考の種になっていた。
ミュージカルを通じて、私はこれらの社会問題に直面する主人公に感情移入し、追体験し、無意識のうちに「自分ごと」として捉えてきたように思う。
もちろん音楽や演出・脚本も好きな要素の一つだが、私にとって重要なのはやはりストーリーであり、登場人物の思考や感情である。それらが歌に乗せてダイレクトに表現されるからこそ、私は魅力を感じるのだろう。

というわけで、幾つかのミュージカルを私なりに紹介してみたいと思う。ひとつひとつが長くなりそうだったので、マガジン形式でまとめていきたいと思う。
「私なりに紹介」するのだから、あくまで個人の感想だし、個人の解釈であることを断っておく。

なお、私はミュージカル好きと自負しているが、いわばライト層でもあると思う。見たことあるミュージカルといっても、ほとんどが映画化されたものだ。
よって本マガジンで紹介するものもほとんどが映画版であり、幾つかの舞台版については都度注記している。逆に言えば映画版は比較的見やすい(映像を入手しやすい)と思うので、興味があればぜひ見てみてほしい。

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