「私が推しを殺すまで」


私には推しがいる。
推しの愛し方は人それぞれだし、それでいいと思う。

ただ、それが相手に受け入れられるかどうかは別の話だ。
実在する人間である限り、我々オタクの思った通りに動くことなんてない。

私の愛し方は、「推しの自慢のオタクになること」
あくまで目標だけれど。

「〇〇のオタク」として、何も知らない他人から見た時に
「あんな人がいるなら行ってみようかな」と興味を持ってもらえるように
少しでもいいイメージを持ってもらいたいのだ。

この作品の登場人物、波菜子は「自分の理想の中にいる推し」を推していた。

自分の理想から外れた推しを、オタクの方々はどのように推していくのだろうか?

私が好きなのは地下アイドルだが、地下アイドルは3年もてばいい方で
それまでにはメンバーが抜けたり、解散したり、次に新しいグループにいたり
プロデューサーになってしまったり、表舞台からいなくなったりすることは
割と頻繁にあることだ。

だからといって慣れているというわけではない。毎回悲しいし最後には会いに行こうと思う。

最近では、SexyZoneから中島健人さんが卒業し、timeleszと名前を変えた。私は中島さんがジュニアだった頃からの、中島さんの担当だ。最後の配信h息が出来なくなるくらい泣いた。次の日は目が腫れて痛かったし、やっぱり簡単には受け入れられなかった。

一方で、timeleszに新メンバーが入るとのこと。
これにはかなり賛否が分かれたように思う。

私はと言うと、長年担当してきた中島さんのシンメが決めたことなのであれば、きっとうまくいくだろうと賛成派だ。誰が入ろうと、大事なtimeleszのメンバーが受け入れた人であればもちろん大賛成。

だが、B.I.shadowの頃から好きだった私からしたら、SexyZoneとしてのデビューはかなりショックなことだった。
現SixTONESのメンバー松村さん、髙地さんの2人だって事務所に入ったばかりだったのに、もっと歴の浅い子供が同じグループでデビューだなんて。誰だよこいつら。と言う気分だった。

こんな経験をしたので、「自分たちで納得のいく人がグループに入る」と言うことは大賛成である。より良いグループになるのではないかと、期待もしている。

その一方で、当日の配信コメントなどを見ていると、反対派が声を大にしているように思う。自分の推しが、理想から外れた瞬間だったと思う。

この時に大半がとる行動は、そのまま「降りる」ことではないだろうか?

本人たちに「降ります」と伝えたり、SNSにそのような投稿をしたり、反対の意を本人たちに伝えてさようなら、と言う人が多いように感じる。

一方で私はと言うと、私も同じく「降りる」
私の好きな地下アイドルは、何もせず目に入ってくることはないので、私から見ないようにすれば離れられるのだ。

しかし、推しとの距離が近いぶん、断腸の思いで離れるのだ。
もう会わなくなった推しは何人もいるが、推しのSNSを見なくなることはできないでいる。
それでも推しはきっと気にしていない。私のことなんか忘れて、目の前のパフォーマンスに一生懸命だろう。

この作品の主人公は、推しが女性に対して性的暴行を行ったことが報道され、推しを殺したいと思った。主人公波菜子を好きだった夜舟も、「推し」である波菜子がそれでも推しが好きで、自分を一向に見てくれないことに悲しんでいた。そのために波菜子を殺そうとし、自分も死のうとしたのだ。

それほど推しが憎らしくなったのだ。

推しが自分の理想から外れることなんて当たり前の話だ。
私たちが見ているのはキラキラした表の一面だけで、それが本人たちの本当の姿なのか、作られたキャラクターなのかすら判別できないのだから。

それは私たちは知りたいと思うが、知らなくていいのだ。
知ってしまったら確実に、自分の理想から外れる。どこにでもいる普通の人になってしまう。キラキラの魔法が解ける。

それを主人公たちは許せなかった。自分がそこに依存してしまったぶん、そこが変わることを受け入れるのはとても大変だ。苦しいことだ。

思い通りにならないことはたくさんあるし、キラキラした夢のような推しに理想を重ねるのも当然だ。が、推しはこの世に実在する。特別な人間ではない部分は、私たちは知らない方がずっと幸せだ。

変わっていく推しの中にある、変わらない部分を見つけ、愛せない限り
長く好きでいることは難しいだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?