EU復興基金は歴史的快挙

Ⅰ. EU復興基金の意義
・EUが7月下旬にEU復興基金の創設について首脳会議で合意に達した。
・これはEUの新たな前進を刻む歴史的な快挙といえる。
・基金はEU当局が市場から資金を調達し、その多くをCVで深刻な被害をうけたイタリーやスペインに融資でなく供与の形で支援するもの。
・国家連合であって国家統合ではないEUは加盟国にたいして財政支援ができない形になっているが、この復興基金による支援は財政支援に準ずる支援をするもので財政統合への一歩とも言える。
・CVパンデミックという歴史的危機に直面してEU首脳が示した結束と英知は複合危機をかかえるEUが未来への希望を自ら切り拓いた意義がある。

Ⅱ. EU復興基金の基本合意
ーEU復興基金の基本合意達成
・EU首脳が7.17から7.21.早朝にかけて足掛け5日半のマラソン会議で総額7500億ER(約92兆円)の復興基金に合意。

 ー復興基金の要点:
・EUが市場から資金調達
・CV(コロナウィルス)被害国、イタリー、スペインなどにgrant(供与)で支援
・当初の仏独提案は5000億ER=返済不要の補助金、2500ER=融資だったが妥協
の結果、3900億ER=補助金、3600億ER=融資で合意。

ー復興基金案への反対
・Frugal 倹約4ヶ国(オランダ、オーストリア、スエーデン、デンマーク)反対
返済不要な供与ではモラルハザードになる。融資を主体にせよ。
・法治国家を資金供与の条件とする提案には、東欧の強権国(ポーランド、ハンガリー)が反対。これはとくに明文化せず。

ー合意のための妥協
・5ヶ月ぶりの対面会議、5日間のマラソン会議で熾烈な激論、駆け引き
・補助金:5000億ER→3900億ER、融資:2500億ER→3600億ER
・適正使用に疑義ある場合、使途監視のためEU首脳会議で協議する規定導入
・Rebate: EU予算に拠出した分担金を払い戻す。予算がそれだけ削減される
これはかつてサッチャーが主張して獲得した悪習の後遺症。

    ーEU危機に直面したギリギリの合意
・EUはBrexit, Eurosceptisum(欧州懐疑主義)そしてCVパンデミックという三重苦ともいうべき深刻な危機に直面している。
・首脳会議は互いの利害と主張が錯綜して懸命なマラソン会議となったが、危機に直面した結束で、EUの未来への展望を取り戻したといえる。

Ⅲ.  復興基金構想とEU内の意見対立
ーCV感染の拡大と財政支援の検討
・3月に入り、EU諸国にCV感染が急速に広まると、各国首脳もEU当局も危機感を強め、とりわけCV感染防御のための「閉じ込め(containment)」政策が各国の経済にもたらす深刻な影響を軽減するために、政府として事業を脅かされる中小企業や仕事や所得を失う勤労者を救済するこれまでにない規模の財政支援の検討をはじめた。

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