『デジタル激弱な作家ですが、Kindle出版できるでしょうか?』 ~1、ご挨拶とこれまでのこと。
お久しぶりです。野村美月です。
noteに最後に投稿してからもう3年近くになるのですね。
2016年~2019年まで3年間筆を折っていた私ですが、2021年の秋から2023年の秋までの2年間、またしても書かない日々を過ごしておりました。
1度目の休筆についてはnoteの『私が筆を折っていた3年間と、サンタさんへの手紙』で語っています。
このときは手術など体調面での影響が大きかったのですが、2度目の休筆も最初は体調的なことからでした。また書けるようになったのが嬉しくて、1ヶ月に2作ペースで長編を執筆したりしたからでしょうか。
首と肩を悪くしてしまいました。
ただでさえ手術の影響で左腕がダメダメで、サポーターをつけてごまかしごまかしパソコンに向かっていたのに、今度は左肩と首が常にズキズキ痛いという……。
どうにか改善したくて、鍼に整体にカイロに筋膜リリースにとネットで検索して、あちこち通いつめましたが、逆にズキズキひりひりした痛みが増す一方です。
どの先生も最低3ヶ月は通ってくださいとおっしゃいますが、週1ペースで3ヶ月通いつめても悪化するばかりで。体をバチバチ叩きまくる筋膜リリースなんて施術自体が痛い上に1回2万円くらいするのに、ぜんぜん効果がありません(※私の場合です)。
それでも、どうにか執筆は続けていたのですが……。
このころ、『世々と海くんの図書館デート』が5巻で終了しました。
イラストが抜群に可愛くて、執筆も楽しくて、担当さんとの相性も良く、思い入れがありまくりで、もっと書きたかったのですが、売り上げが及ばずでした。
こんっっっなに最高のイラストをつけてもらったのに売れないなんて、私に需要がないということなのだな、と悟りの境地に達しておりました。
この作品に関しては初めて個人でプレゼント企画をしたりと宣伝も頑張りました。あがくだけあがいてやりきった分、ああ、やっぱりダメだったか……と、気が抜けてしまったのでしょう。
落ち込むというのではなく、静かに納得する感覚です。
もう、いいかなぁ……と。
実は復帰してからAmazonや読書メーターで感想を検索するのが、大変キツくなっていました。辛辣なお言葉を見るたび胸をザクザク切り裂かれているようで、もうダメだな、もういいや、と思うようになっていったのでした。
売れない上にツマラナイのでは、どうしようもありません。
これまでnoteを読んでくださったかたはお察しいただけるかと思いますが、私は諦めが早いし根性もないのです。
高校時代、担任の先生から「◯◯さんは執着心がないのが心配です」と気遣われたり、新卒で入社した会社に配属2日目で退職願いを出したり、バイトの初日に「やっぱりやめます、ごめんなさい」と謝りに行ったり。
「できません、やめます」
を、さんざん繰り返してきました。
その私が子供のころから唯一諦めずに頑張り続けてきたことが、書くことであり、作家であることでした。
けど、本当にもう、ここまでだな……と。首も肩も限界だし売れないし、読んでくれた人にも全然楽しんでもらえないし伝えられてないし、やめよう、うん……と、今度こそ引退したつもりでおりました。
前回の3年間の断筆のときにも思ったのですが……たとえば書かないとお家賃が払えないとか、家族を養わなくてはならないとか、そうした理由があれば、辞めずに踏ん張れたかもしれません。
そういうものを持っているかたは、やっぱり強いです。
根性が違います。
けれど私にとって書く理由はいつも私の気持ちの中にしかなくて、それが揺らぐと、あとはへなへなと倒れる一方だったのです。
この時期、自宅マンションを全面リフォームして、家のお手入れに目覚め、毎日、隅々までぴかぴかにしていました。
書いていたときは散らかし放題で、月に一度くらいしかお掃除をしていなかったのが、毎日のお手入れに加えて、窓も週に一度、換気扇も月に二度、しっかり磨いたり洗ったりしていたのでした。
家の中が綺麗だと、それは気持ちが良いのですよ~。
部屋を眺め回しては、私のおうち綺麗だ~! 最高だぁ! 大好きぃぃぃ! と満足感にひたっておりました。
そんなおだやかな日々の中で、首と肩の調子もしだいに改善していって、作家は引退したけれど趣味で好きなものを書いてみようかな、と思うことはあったのです。
が! ここで大きな問題が立ち塞がりました!
それまで私はずっとWindowsの一太郎で執筆していたのですが、新しいpcはうっかりMacBookを購入してしまったのです。
Macは一太郎が使えないのですよ~~~~!
それを知ったときの私の嘆きは、こちらをご覧ください。
あのときは、まさかの事態にうろたえました。MacBookを売ってWindowsを買い直そうかと思ったほどです。
そのあとMacBookで執筆されているかたからegWordという日本語ワープロソフトを教えていただき、ダウンロード購入しました
ところが! 開いてみたものの、使いかたがさっぱりわかりません! ちんぷんかんぷんです!
一番大切なレイアウト設定すらできなくて、途方にくれました。
そんなデジタル弱々な私に、親切なフォロワーさまが文庫用のレイアウトのひな型を作成して送ってくださったのです。
待山佳成さま、あの節は本当にありがとうございます。
神さまかと思いました。
さぁ、これで執筆できます。
が、それはデジタル音痴には甘い考えでした。
WindowsとMacは同じようなものだろうと認識していたのが、ぜんぜん違ったのですよ!
キーの操作もこまごまと違うし、Windowsで普通にできていたことが、どこをどうすればいいのか、またまたちんぷんかんぷんで──やっぱり無理っ、Mac無理っ! と拒否モードに入ってしまいました。
小説を書く以外のこと──メールやインスタや、オンライン通販などはiPhoneとiPadで問題なくできます。
小説を書かなければpcは必要ないのです。
なので、私のMacBookは2年のあいだ画面を立ち上げることなくお部屋のインテリアとして放置されていました。
そのあいだにWindowsも処分し、私は執筆環境を失ってしまったのでした。
そう、趣味の小説を書こうにも、Windowsも一太郎も、もうないのです。
かといってちんぷんかんぷんのMacBookを立ち上げる気にもなれず、やっぱりフタは閉じたままで新しい作品を書くこともないまま、時間だけがゆるゆると過ぎていったのでした。
転機は2023年の10月に訪れました。
この月、ポプラ文庫から『ものがたり洋菓子店 月と私~ひとさじの魔法』という本が発売されました。
こちらは以前に出していただいた『ストーリーテラーのいる洋菓子店 月と私と甘い寓話』の文庫版です。
表紙、素敵ですよね! うっとりですよね!
おかげで発売してすぐに重版がかかり、担当さんから「続きを書いてみませんか?」とお話をいただいたのでした。
嬉しい反面、不安も非常に大きかったです。
2年も書いていないのに書けるのでしょうか? 続きはまったく考えていなかったので、ネタ出しから始めなければなりません。なにより私のもとにはMacBookしかありません。egWordも使いかたがわかりません。
それでも、目の前にあるMacBookで挑戦してみるしかありませんでした。
こうして2年目にしてようやく、MacBookの画面は再び立ち上げられたのです。
予想通り、戸惑うことだらけでした。
書き上げた文章をテキスト形式に変換する方法がわからなくて、夜中に検索しまくりながら苦悩の限りを味わったり。
egWord自体使っているかたが少ないせいか、検索しても全然情報が出てこないのですよね。これはマイりました。日本が誇る作家村上春樹さんもこのアプリのユーザーだそうですが、もちろん村上春樹さんに問い合わせることはできません。
2年前、待山さんに作っていただいたひな型がなければ、諦めていたかもしれません。
このひな型のおかげで、どうにか続編を執筆することができました。
本当に私の恩人です。
神さまです。
そして、今年4月に発売された続編は、また発売数日で重版がかかりました。
表紙もご覧のとおり、さらにうっとりです。
そして、あんなに胃をヒリヒリ、キリキリさせていた感想も、インスタで検索すれば、綺麗なお写真と優しい言葉に出会えることを知りました。
どれもおだやかで、やわらかで、言葉が澄んでいて、ほんわりします。
作家のみなさん、インスタで感想を検索するのおすすめですよ!
そんなふうに、精神面でも機材面でも執筆環境がほぼほぼ整った今、なぜKindle販売を目指そうと思ったのか。
そのために、なにから始めたのか。
次回からそのことについて書いてゆきたいと思います。