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01.ウォーターサーバーのある生活

全く想定していなかったものが家の中にあるというのは、なんだか不思議な感じだ。

ウォーターサーバーは、当初新居に置く予定ではなかったものだった。なぜなら生活の飲み水は水道水で充分だと思っていたし(それについては今もわりと思っている)、なにより自分の生活空間をなるべくシンプルにしたかった。なぜそんな私の家にウォーターサーバーがあるのかというと、わりと偶然によるところが大きい。

電子レンジを買いに、母を連れて家電量販店に行った時に、そういうキャンペーンがやっていたのだ。
店員のお兄さんは、私がウォーターサーバーのパンフレットを眺めていたのを見逃さなかった。電子レンジの届け先を記入している隙をみて、そういえば今思い出したんだけど、みたいなテンションで「ちなみにウォーターサーバーとか興味あります?今なら本体代金は無料なんですよ」と言った。驚いた。そんな携帯みたいなノリなのか、ウォーターサーバーって。私は無料という言葉にことごとく弱い、ステレオタイプの客だった。毎月かかるのは水の料金だけです。いらない月はスキップもできます。お兄さんは私にキャンペーンのパンフレットを見せてくれ、それからウォーターサーバーのある生活がどんなに素晴らしいものか私に説いた。

私はウォーターサーバーのある生活を想像してみた。
ウォーターサーバーの利点は、とにかく一瞬で熱湯が完成することだ。熱湯というのは日常の様々な場面で必要になってくる。特に料理以外の、カップ麺を作る時、コーヒーを入れる時、お湯割を作る時などに、この「一瞬で」の部分がかなりのメリットになってくる。なければ鍋で沸かすかケトルのようなものを買わなければいけないが、なかなか面倒だし時間もかかる(まあ3分くらいだが、めんどくさがりにとって3分の手間は大きい)。

また、割りもののためのピッチャーを用意しなくて良くなるというのもメリットだ。焼酎やウイスキーを水割りにして飲むときに、いちいち水道水を汲みに行くのはめんどくさい。かといってミネラルウォーターのペットボトルは邪魔だしゴミも増える。なので居酒屋にあるようなピッチャーを買うことを検討していたが、食卓の手の届く範囲にこれを置けば、水割りもお湯割りも食卓を離れることなく永遠に飲めるじゃないか。

もうこの時点で、私はかなりワクワクしていた。
ビックカメラのお兄さんは、私の予想外の食いつきに少し引いていた。騙されやすそうな子だな、と思われていたに違いない。
もちろん母も隣で怪訝な顔をしていた。店員からウォーターサーバーの良さを力説された私は、気づけば母にそれを力説していた。なにせ無料だ。

そんなわけで今我が家には、まあまあのサイズのウォーターサーバーが堂々と鎮座している。もちろん食卓から手の届く範囲にそれはあり、そしてやはり水割りを作る時に重宝している。アイスペール入れた大きめのかち割り氷とマドラーも準備しておけば、居酒屋気分を味わうのに一役買ってくれる。
コーヒーや紅茶も淹れるハードルがぐんと下がったし、インスタントスープなんか一瞬でできる。

なくても特に支障はないけど、こうして毎日のほんのちょっとした手間を少しずつ省いてくれるのは、ずぼらな人間にとってとてもありがたいことだ。

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