家族性ポリポーシスは何故難病指定されないのか
家族性ポリポーシスを知っていますか?
端的に説明すると、遺伝子異常により子供に50%の確率で遺伝する癌体質です。遺伝子を持つ人は、大腸におびただしい数のポリープが生まれます。そこから大腸癌を発症して亡くなる率が高く、平均寿命は45歳とも言われております。それを防ぐには早い段階(可能であれば10代のうちに)大腸を全摘出するしかなく、ただでさえ生きていくのが困難なので家族の支えは必須、それなのにこの病気は次々家族に発症します。私は祖母を大腸癌で亡くし、母と叔母が大腸を摘出しております。私自身は17で大腸から溢れるくらいのポリープができて(実際脱腸して戻らなくなり、救急車で運ばれました)、そのまま全摘となりました。
後から聞いたところ、数千個ものポリープができていたそうです。あと少しで命が危なかったとも言われました。私はこの遺伝子を残すことを恐れ、子を成さない生き方を選びました。
優勢遺伝なので、両親のどちらかが遺伝子を持っていれば、半分の確率で遺伝します。中には突然変異で遺伝子の起点となってしまう方もいるとのことです。実体験として、本当に見事に半分の親族が同じ体質で手術をしています。大腸を全摘してもなお、他の臓器に癌化するポリープができる可能性が高く、それを見守るために経過観察は必要です。私は定期的に胃カメラをしておりますが、カメラを飲むのは苦痛ですし、常に生検が必要なために検査代を見ると頭が痛くなります。
大腸を全摘することにより命は守られますが、日常生活には困難が伴います。私の場合は腸閉塞を何度も発症しては、入退院を繰り返しました。体調を崩しやすいので、仕事もなかなか続けられません。また栄養を吸収する能力を失いますので、私の場合は亜鉛が不足し、手と足がひび割れだらけになります。手にしたものは真っ赤になるため、絆創膏をぐるぐる巻きにして、ひび割れてなく痛くない角度で地面を踏み締めるために「歩き方がおかしい、障がい者なのか」と言われたことも何度もあります。サプリメントを飲めばいいと言われることもありますが、サプリメントを消化しきれずにそのまま排出してしまいます。かろうじて点滴で補うことができるのですが、それも数日間しか効果が発揮されません。翌日、足が綺麗になった!と喜んでも、さらにその次の日にもうひび割れができている状態です。
基本的に食べるものにも気遣いが必要で、それでもなお下痢することが標準だったりするので、強めの下痢止めが必要です。それがないと自宅のトイレから外に出ることができません。しかし、数年前に薬事法が変わってから、必要な数の下痢止めが保険適用では処方されなくなりました。だから、自費で払って飲んでいます。そうしないと、生きていけないからです。
このように生きることが困難である病気であるのにも関わらず、家族性ポリポーシスは難病指定されていません。国に見捨てられた病気だと思っています。恐らく、腸を摘出して仕舞えば治るという判断なのでしょう。予後もけして楽観できるものではないのに。また知名度が低く、発症している人が少ないからという可能性もあります。しかし、明らかに難病であると思います。そして、患者の金銭的、心理的負担は相当なものです。それでも、生きているだけでラッキーとも言える、そんなつらい病気なんです。
以前、安倍総理が潰瘍性大腸炎を患っていると聞いたときに、そちらは難病指定されていると聞いて驚きました。それがおかしいというわけではありません。しかし、そちらが難病指定されているのであれば、こちらもされて良いのではないかと思ったからです。あまりにも生きるのが困難です。せめて、生きていくのに必要なだけのお薬を保険適応にしてほしい。そう願わずにはいられません。
今日も私は何とか生きています。保険の効くお薬と、介護用の紙オムツは常に(私の手術では当時の最良を尽くしてもらいましたが、排泄機能に関してはうまく取り戻せず補助を必要とします)。保険適応されないお薬は一粒60円、これが1日4錠必要です。仕事も自由にトイレに行ける、病気に理解のあるところに雇用してもらっています。
私はただの素人ですが、どうして難病指定されないのかは大きな疑問であり、またこの病気の知名度の低さは同じ病気の人たちに適切な判断を与えられないのではないかと危惧しております。
以下は、家族性ポリポーシスの遺伝子を持った私からのお願いです。
まず、大便に血が混じったら、すぐに病院を受診してください。家族に若くして大腸癌で亡くなった人がいれば、それも伝えてください。
お子さんがその遺伝子をお持ちの方、腸を温存するのも切除するのも自由です。たくさん悩んでください。私は切除したので、何度も大腸カメラを飲まなくて良いのは楽だなと感じています。でも、温存できれば、別の生き方ができたのかもしれません。
同じ遺伝子に悩む皆さんが健やかでありますように。そして、国が私たちの存在に目を向けてくれますように。
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