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#12 タコ公園で

最近観た映画で一番好きだったシーン。
台風で大荒れの真夜中にもと夫婦だった夫と妻、息子3人がタコ公園で過ごすところ。
「海よりも  まだ深く」是枝裕和監督による、どうしようもない父親とその周りを取り巻く人達の物語。阿部寛演じる良多とその母淑子を演じるのが、私の大好きな俳優さん樹木希林。どうしようもない息子の事を放っておけない母親の一言一言がいちいち胸に染みる。ベランダでの良太との会話。良太が幼い頃にみかんの苗を持って帰ってきて以来、ずっと育てているらしく毎年蝶がやってきて卵を産んで育っていく。「花も実もつかないんだけどね。何かの役には立ってんのよ。」
良太は部屋に印象に残る色々な文章を貼っている。「こんなはずじゃなかった」「どこで、間違ったんだろう、俺の人生」
淑子は言う  「幸せってのはね、何かをあきらめないと手にできないものなのよ。」
良太が働いている探偵事務所の後輩役に池松壮亮演じる町田健斗がいる。この人の良太への接し方、言葉遣いも好きだなぁ。何よりこの人の声が好き。
私も気付けば、幼い頃住んでいた町から出てきて22年。結婚して家族を持って、縁あって京都府の南の方で毎日生きている。後悔は尽きないし、こんなはずじゃなかった    って思うことだらけの日々でも、生きてると楽しいことや、嬉しいことや、ワクワクする事も転がっているから、生きてないとなと思う。 
映画に見入る私の横で、樹木希林さんが遊びに来ていた良太や息子達に「泊まって行きなさいよ、こんな台風の日に危ないから」というシーンで息子がボソッと、「なんか伊丹のばあばみたいやん、めっちゃ似てる」と一言。 そう言われると、どことなく雰囲気が似ているような気も。
ということは、私も何十年経ったらこいうかんじになるんやろうか、と思ったり。
うまくいかない人達の渦巻く感情と日々の日常をアイスのカフェオレみたいにぐるぐるとかき混ぜると見えてくるもの。そこは、どこか突き抜けたかんじで私は「ああ、私はほんまにこの人の描く世界が好きやなぁ。」としみじみと感じた火曜日の朝でした。   

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