雨の日、函館で出会った牧師さん
穏やかな贅沢
その日の天気は曇り時々雨。
函館から少し離れたの国立公園でトレッキングをする予定だったけど、なんだかヤル気が出なくて結局ホテルから近い元町を散策する。
元町を散策していてあったのが観光名所の教会群。そこはあまり仲の良くないキリスト教の宗派が一ヶ所にまとまってある珍しい場所なんだって。そこで私はきらびやかな装飾と大きなイエスの像がのある正教会とカトリック教会を見たあとにプロテスタントの教会にたどり着いた。
ドアが開いて入ると女の人がいて
「いつもは開けてないけど今日は修学旅行の小学生のためにたまたま開放してるのでよかったら見て行ってください。」
と運がいいことに教会のなかに入ることができた。
装飾のあまりないプロテスタントの教会の装飾は壁の上にあるまあるい太陽みたいなステンドグラスが1つだけ。正教会やカトリックに比べると質素なんだけど女の人いわく
「少し見劣りしちゃうけど飾りじゃなくて天にいる本当の神様と向き合うためなんですよ」
って教えてくれた。
教会の奥まで進み一番前の椅子に座り壁の上にある太陽みたいなまるいステンドグラスをぼうっとながめていた。
その時、正直あんまり神さまとかイエス様とか頭になかったんだけど、楽しかったなぁなんて北海道での出来事を思い返していた。
そろそろ教会を出ようかなと帰る準備をしていたら雨が強くなってきて教会を出るのをやめて入り口に置いてあるパンフレットを読んでいたらさっきの女の人が
「どこから来たんですか」
優しそうの小柄な白髪の女性。
笑うと目尻に綺麗なシワが伸びていて素朴で上品な顔。
話を聞くとその人はこの教会の牧師さんの奥さんらしい。旦那さんが脱サラしてから牧師さんの資格を取って函館には10年くらい前に来たんだって。
旦那さんは牧師さんになる前に東京で物理系の研究員をしていたけど、
「数学や物質では捉えられない何かを感じたんじゃないかしら。」って奥さんは言ってた。
私が宗教学を大学で勉強していることをいうと、今の若い人は忙しくてなかなか教会に来れないしあんまり信仰に興味を持っている人もいないんだよねみたいな事を言ってたような気がする。
あんまり細かいことは覚えてないんだけど雨の中しばらくの間物質ではない何かについてぼんやりと話していたら牧師さんが奥からやってきた。
牧師さんの笑った目も奥さんとそっくりで深くてキラキラしていた。
そこで牧師さんとの大学の学食の話とか大学で何勉強してかとか話したり、あとキリスト教について学べるオススメの本を教えてくれた。
そうしたらだんだん雨が弱まってきたので出ようとすると、勉強になりそうなパンフレット、雨に濡れて風邪ひかないように傘、それと最後に何か聞きたいことがあったらいつでも連絡してねって名刺をくれた。
お礼を言ってから教会を去る。
なんだか傘をさすのが嬉しくて少し遠回りしながら函館駅に向かっていった。
見知らぬ地で知らない人との何気ない立ち話。
こんな優しくて穏やかな時間がとびっきりの贅沢に感じるな。忙しくて贅沢出来ない人の分までゆっくり生きていたい。
最後に牧師さんと奥さんステキな思い出をありがとう!
気に入っていただけたらサポートお願いします。頂いたお金は本に使い勉強に励みます!