見出し画像

文体の舵をとれ 練習問題① 問2


問2 一段落くらいで、動きのある出来事をひとつ~

 次の部屋では手の長い二匹の猿が仔犬を仕舞っていた。一メートル半四方の箱の中が小さく仕切られていて、その仕切りの中に抱きかかえては一匹ずついれていくのだ。真っ白な仔犬たちは猿に抱かれるとうれしくてたまらないらしく猿の顔を舐めようとしたり、肩の上まで登ろうとしたりするものだからなかなかはかどらない。よく見ると猿にはなめらかな艶のある毛が生えていて一匹は毛が短く、一匹は毛が長い。そのうち仔犬は仕切りを越えることを覚えたようで箱の中をあちこちへ移動するようになった。三匹でギュウギュウになっている仕切りも有れば、その三匹を踏み越えてさらに隣の仕切りに移動する仔犬もいる。猿はそうなることを予測していたかのように一匹がそれを戻すことに専念し、もう一匹は仕舞い続ける。猿たちが疲れないかと心配になった頃、給食の配膳係のような白衣の人がやってくる。今度は猿が大喜びで横っ飛びを始める。それを見て合点がいった。この猿は金猿銀猿であったのか。仔犬の入った箱の周りを何度も何度も横っ飛びに回る。仔犬は目が回るのかおとなしくなり、やがて供え餅になる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?