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文体の舵をとれ 練習問題① 文はうきうきと
アーシュラ・K・ル=グウィンは日本語で読める作品はほとんど読んでいるはずのSF作家。とはいえ、結局、一番好きなのは『闇の左手』なわけだが。『ゲド戦記』を読んだのはすいぶん後になってから。
どこまで続けられるか自信はないけどゆっくり進めてみよう、ル=グウィンの小説教室の練習問題。
問1 声に出して読むための語り(ナラティヴ)の文を書いてみよう。
看取るときっていっつも合宿するような気分になるんよね。そろそろそんな頃がやってくるのを想像してるうちは悲しいけどね、いざ、その時がきて残された時間が一週間くらいかなってわかると、急にそこらじゅうが明るくなって、心配せんでもええよ、って気持ちになる。
おかしいじゃろ。看取るほどには親しい間柄なわけだし、私が生まれて此の方の付き合いがあるわけだし、悲しみにくれてるほうが普通じゃろ。でも、悲しみはどこかへ行くんよね。
合宿って、一体、誰との合宿なんかね。あたりまえに考えたら去っていく人との合宿なんだろうけど、他にも誰かいるような気もするしね、どうじゃろうね。
自然死っていつ死んだかわからないんよ。本当の最後の最後にちょっとしたタイムラグがあってね、さっきの呼吸がおしまいの呼吸だったんだなって悟る。そしたら急に何もかもが白ちゃけたようになって、天井が開け放たれひそやかさは消滅する。本当に一瞬にしてびっくりするくらい光が入れ換わるんよ。
じゃけどね、そんなことを感じていられるのも短い間で、すぐに私よりずっと悲痛な顔をした人々がやってきて、私の合宿を労ってくれる。たいへんじゃったね。疲れたじゃろ。
そうなったらもう死者のことは彼らに任せて私は何回目かの喪主になるために家に帰って風呂に入る。おなごが子をなさぬ家に生まれて早半世紀。他家に嫁ぎ姓が変わっても看取ってくれる子がおらんじゃろ。じゃけえ、この家の娘らはこの家の娘らに看取られるしかないんよ。
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