桜と梅が共に咲く【シロクマ文芸部】参加記事
#シロクマ文芸部 お題「梅の花」参ります。
梅の花。本州では春の始まりを告げる花の1つと言えるだろう。だが、ブラキストン線の北、亜寒帯である北海道では一概にそうとは言えない。桜が咲いて梅が咲く、もしくは桜と梅が同時に咲くことが多い。ツツジもコブシも、桜と同じ4月下旬から五月上旬に開花する。
ある年の春。私はとある梅林を訪れた。白梅、紅梅が咲き乱れ、梅の香りが満ちる。春を待ちかねた北の住民が多く訪れる場所である。人混みを外れて花を眺めたい。そう思った私は、見頃の梅林を離れ、少し小高い場所に腰を下ろした。
そこにあったのは一本の桜の木。日当たりのよいその場所で、エゾヤマザクラは薄紅色の花びらを散らし、緑の芝生に覆われた上には薄紅の敷物が敷かれているように見えた。
ふと上を見上げると葉桜が見える。お昼少し前の日差しに照らされて、葉脈が美しく浮かび上がっていた。花盛りの梅林で散り際の桜、それも葉の裏を眺める酔狂な輩は私くらいなものだろう。そう独りごちる私を見おろして、桜は黙って枝を風に揺らしていた。
桜は花だけではない、その葉も美しいでしょう?
そう告げるかのように。
拙稿題名:桜と梅が共に咲く
総字数:460字(原稿用紙1枚強)
よろしくお願い申し上げます。
二枚の写真は私が撮影したエゾヤマザクラです。
拙稿をお心のどこかに置いて頂ければ、これ以上の喜びはありません。ありがとうございます。