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賄賂と仕事

【2020/05/08】

枕営業とは性的なサービスをすることにより、不当な手段で芸能の仕事を得ることです。

これは公務員で言うと裏取引、つまり「賄賂」、収賄罪にあたります。賄賂とは金銭だけでなく、債務の肩代わり・酒食の接待・就職の斡旋・試験の採点・性的サービスなど、様々な不正な利益のことを指します。要求する側が悪いのはもちろん、渡した側も同じく罪に問われます。

断れば仕事を干す、などと脅されていた場合、脅された側まで罪に問われるのはおかしいのでは?と思う方が多いかも知れません。セクハラやパワハラと同じでは?と感じるかも知れません。けれど忘れてはならないのは、枕営業をする人の裏には、また別の「見えない被害者」が発生していると言うことです。

誰かが枕営業によって仕事のチャンスを掴もうとしたとき、本来ならば、実力でその仕事をやるはずだった別の誰かは、突然意味も分からず、その役を引きずり降ろされています。枕をした人のためにわざわざ別の役をつくるような事でもない限り、予め用意されている椅子の数は決まっているからです。これは、皆が正々堂々と闘っている世界では、絶対にあってはならない不正です。

一般社会で「万引きして来い」と脅されて万引きをさせられた人がいたら、その人は「脅迫の被害者」でもあると同時に「窃盗の加害者」にもなってしまいます。勿論被害者としての側面があるため情状酌量の余地はありますが、盗んだ人の事情など、万引きされた店には一切関係ありません。本当の被害者は、万引きをされたお店の店主です。いかなる理由があろうとも、不正な手段で利益を得ることを正当化してはいけないのです。

もうひとつダメな理由は、枕を持ち掛ける側の人間に、「大きな成功体験を与えてしまう」ことです。誰か一人が枕に応じてしまうと、それに味を占めた人は、あのタレントがいけたなら、同じ事務所の若手も喰えるな?とか、あいつと仲良い子も大丈夫かな?と、その人の回りの女の子を狙うので、身近な人を危険に晒してしまいます。また、その際に「あなたの事務所の先輩のあの子はヤラせてくれたよ?断れば、あの子の立場も悪くなるんじゃない?」と、他の女の子への脅迫材料として名前を利用される事もあります。また、事務所を通さなくても勝手に個人的に連絡を取って外で会えるタレントがいることがバレたり、枕をしている奴がいるらしいぞ!という噂が外に漏れると、その人が属している業界全体の価値も全体的に下がってしまいます。枕をした人が仮にグラビアをしていたらグラビアモデル全員が、声優をしていたら声優全員が、同じようなことをして仕事を取っている疑惑をかけられて、大きな仕事に抜擢されるたびに、世間の人から疑いの目で見られるのです。これは同業者や身内を危険や偏見にさらす行為で、真面目に仕事をしている人に取って大変迷惑です。

一番の加害者は枕を持ちかけた人間であるので、枕をしてしまった人を必要以上に責めるのは良くありません。どんなに責めても、やってしまったものは取り返しがつかないのですから。

しかしだからと言って、枕営業という行為を「仕方ないもの」として認めて受け入れてしまってはいけない。自分だけ良ければいい、自分さえ仕事が貰えれば良いと言う考えは、結果として他の女の子をより恐ろしい危険に晒し、その業界の女性の地位をより貶める事になるでしょう。これから芸能を目指す幼い子供たちを護るためにも、「脅されて仕方なくではあったが、良くないことをしてしまった。」という意識だけは、辛くてもどうか忘れずにいて頂きたいし、出来れば二度と、同じあやまちは犯さないで欲しいなと思います。

もしも芸能の仕事をしていておかしな誘いを受けたり、身の危険を感じる事があったら、すぐに所属事務所や信頼出来る関係者に相談するか、証拠をとって警察に駆け込んでください。絶対に裏取引の誘いに乗ってはいけません。ちなみにフリーランスは逃げ場がありませんが、ほとんどの人は所属している事務所に言えば何とかしてもらえます。何かあってもそれで干されるような事にはならないので、安心して相談してください。そういうトラブルから守ってくれるために所属事務所がある、と言っても過言ではありません。個人的に連絡先を渡して会っていた人はちょっとだけ怒られるかもしれませんが、隠して大事になるよりは全然良いので、思い切って全部正直に話しましょう。(万が一、もし、事務所が枕に積極的な事務所であれば、すぐに移籍してください。

先程は無名のタレントの話をしましたが、逆にもう既に売れている有名な人や、ハリウッド大物女優クラスでも性被害にあう場合があります。これは主に自分の起用している女優を異性としても気に入ってしまい・または最初から狙っているタレントを番組にキャスティングしておき、その現場での立場と権力を笠に着て手を出そうとするものです。女優側は恩義があるためとても断りづらく、また既に起用されて売り出してもらっている立場でもあるので、莫大な売り込み費用を返還することも出来ず、言うなりになるしかない場合が多いです。このパターンは #MeToo で多く告発されており、「仕事と引き換え」ではなく「先に仕事を提供し、後から身体を要求する」という最も卑怯で卑劣な脅迫です。

プライドを傷つけられたら、正しく抗議しましょう。芸能人は自分自身が商品なので、自分の値段を決めるのも、どの人に買って貰うかを選ぶのも、すべて自分自身です。

商品だけじゃとても買う気にならないな〜、オマケとして性的サービスでもしてくれないとな〜…なんて事をのたまうふざけた客に頭を下げてまで、あなたという商品を買ってもらう必要はありません。実体のない美味しい話や、夢のような甘い嘘に騙されないでください。それは特別扱いをされているのではなく、「性的サービスをしないと商品価値がない」と馬鹿にされ、心の中で笑われているのです。買いたくないと言っている人に、むりやり自分を売りつけても何の得にもなりません。干され上等。その言葉を突きつける勇気を持ちましょう。芸能界にもいろんな人がいます。きちんと正当な対価を払って、自分を買ってくれる人を探しましょう。

脅されても、おそれることはありません。その時はその界隈で干されたとしても、その人はすぐにあなたのことなど忘れて次のターゲットを探すでしょう。ここだけの話ですけど、めちゃくちゃ怒らせても、無名なら、3年ほど潜って静かにしておけば終わります笑 知名度のある女優なら自分のプライドとメンツを賭けて全力で潰してくる人もいるかも知れませんが、普通、無名のタレントを干すことに、誰もそこまでの労力はかけません。

悔しさや怒りを実力に変え、何年かかっても、必ずその人を見返してください。どんな悪評があっても、実力さえ確かなら、使いたい!と手を挙げてくれる製作者は大勢います。大勢の、「本気でものづくりをしている人」たちが、この世界の土台をしっかりと支えているのです。

昨今、良く「女性の地位向上」と言う言葉を目にしますが、女性の地位は男性ではなく、女性自身が決めるものです。自分を卑下し、自分の身体を安売りしながら、性的搾取してくる相手を責めているだけでは、問題は解決しません。

「私は自信もないし、才能もないけど、性的接待でも何でもするので仕事をください」という人間がいたら、起用する側も「え~。そんなに品質に自信のない商品を起用したくないな。じゃあ何でもやってもらおうか」となりますが、どんなに今は売れていなくても「私には価値がある。才能もある。それを言えるだけの努力もしている。私という商品の価値を理解して、将来性を高く買ってくれる人と一緒に仕事をしたい。」と言っている人のまわりには、「へえ、どんなものなのか、一度買ってみようかな。」という好奇心旺盛な人間が集まります。(もちろん男性が被害にあうこともあります。男性の方も同じです)自分に自信を持てるように努力し、周囲によい人間を集め、ホンモノを求める人を着実に増やしてゆくことが、枕営業を求めるような人たちを、業界から駆逐することにもつながります。

頑張っている他人のために、おなじ業界で働く人たちのために、誰もが安心して働ける社会をつくるために、そして何より自分の未来を守るために、毅然と枕を断る勇気を持ちましょう。自信と誇りを持って、堂々と仕事をしましょう。食べて行けるのはほんの一握りの厳しい世界ですが、だからと言って、不正がはびこるようなところにしてはいけないのです。

売れている人はみんな枕ぐらいやってるよと世迷言を言われても、絶対に信用しないでくださいね。

春名風花🌸

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