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真夏の夜のあつ苦しいおケツ

だんなさんが入院した夜。
だんなさんの正妻は自分だと信じるジャックラッセル嬢2歳は、だんなさんの突然の不在がどういうことなのか理解できず、理解できない理由も理解できません。(お嬢さんは自分が何でも理解できると信じています)
強気なアスリートなのに根はさびしがりやのお嬢さんは、仕方なく私に距離を寄せてきます。ただし、くっつけてくるのはおケツ。
柴犬とは違ってこのジャックラッセル嬢の毛は薄くて短い。だから彼女の体温が地肌からじかに伝わってきます。冬ならば、幸福感に包まれながらうっとりほおずりしたことでしょう。しかし真夏の夜のあつ苦しいおケツのせいで、私はその晩眠れませんでした。
いや、そもそもこの暑苦しいおケツと添い寝しなければならなくなったのは、だんなさんの不在のせいでした。
私はおケツに問いかけます。ねえこの感情を一言で表すとなんだろうね。心細い。ああそれ。なんて素晴らしい日本語でしょう。私の心が、妙にか細くなっているのが自分でもよくわかります。
もしこのままこんな風に一人になったら~みたいなことばかり考え何度も寝返りをうちました(ジャックラッセル嬢を起こさぬよう)(ちなみに黒柴は、私の足元の定位置で平常モードで爆睡中)
ああそうだったと、ふと思い出しました。こんな風に、枕に頭をつけたままあれこれものを考えると、悪い方へ悪い方へとろくてもないことばかり考えるものなのです。気をつけなければいけないよと、作品のなかで登場人物に言わせたこともあるし、noteでも偉そうに書いたはず。深~い呼吸を繰り返し、楽しいことだけ思いだそうとがんばります。
四日目。
驚いたことに普通に眠って普通に起きました。つまり、暑苦しいおケツにもだんなさんの不在にも慣れてきました。つくづく思いました。人間とは、適応する生き物なのです。(適応してきたからこそここまで生き延びたとも言えるか)
憧れだったテレビドラマの一気見も、この際やってしまいましたよ。録りためていた芋たこなんきん。
楽しい。
でも、やはりなにかが足りません。パンがうまく焼けたのにおいしいと言ってくれる人がいない。カボチャが収穫できたのに共に喜んでくれる人がいない。ピアノもウクレレも聞いてくれる人がいない。
大谷くんが逆転スリーランを打ったのに、ハイタッチする相手がいない。

つまんない。

と、声に出してぼやいたら、昼寝中のジャックラッセル嬢を起こしてしまいました。焼きたてクッキーのチョコチップがのってないところをお裾分けするはめに。
おケツのしっぽを右に左に振ってもらえて、うれしかったよ。



ありがとうございます。サポートして下さったあなたのおごりでゆっくりお茶を頂きながら、次は何を書くか楽しく悩みたいと思います😊