#50 Slow is beautiful ①食べる

Slow is beautiful

"遅さ"はしばしばネガティブなイメージとして使われる。ぐずぐず、もたもたしている人は"できない人"というレッテルを貼られたり、のんびりしてるは良い意味で捉えられることもあるけれど、皮肉っぽく発せられることもある。
現代社会は何においても"速さ・早さ"が求められる。それは、欲しい時に欲しいものが手に入るという私たちの需要に応えるために社会システムが変化してきたからだろう。しかしそれが私たちを急かし、苦しめ、蝕んでいる原因でもあるように思える。ミヒャエル・エンデの『モモ』の時間泥棒の話しと通じるのではないか。そんな社会へのアンチテーゼとして、slow food, slow life, slow love…等々、オルタナティブな理論をとなえる言葉がたくさん登場してきた。

『Slow is beautiful』 は、(私の解釈では)それらを"遅さとしての文化"としてまとめた本である。

ローカリゼーション

先週末、『Slow is beautiful 』の著者で文化人類学者の辻信一さんが中心となり、世界からローカリゼーションに関わる研究者や活動家らが集まりフォーラムが行われた。

午前中と午後に1コマ4つ×3コマ分の時間で、全12コの分科会が開かれていた。研究室の同期3人で一緒に行ったのだけど、各々の興味のある分科会に参加して、それぞれのところで聴いてきた話を後で共有した。そこで印象的だったのが、どの話も"食"がキーワードだったことだ。それだけローカリゼーションと食には強いつながりがあるということだろう。さらに、ローカリゼーションは食や文化だけでなく経済の話ともつながる。食は現代社会の問題に切り込んでいく上での共通の、そして根源的なテーマとしてまさに注目を浴びているということだ。

食べる

食べることは、自分の生活においてもとても大きなウエイトを占めているし、これから長い時間付き合っていく研究にも深く関わっている。
これからどんな風にテーマを掘り下げていくのか、まだわからないけれど、日々のご飯を食べることから、農業やそれに関わる文化や環境まで広い視野を持ってゆきたい。

最後に食べることに関して、最近読んだ本と詩で印象深かったものを紹介します。

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① 『食物倫理(フード・エシックス)入門:食べることの倫理学』(2019)ロナルド・L・サンドラー より

私たちは食べ物を中心とし、その周りに私たちの一生を組み立てている。食べ物を中心としてその周りで社交する。私たちは食べ物でお祝いをする。食べ物を通じて、私たちのアイデンティティーは表現される。私たちは食べ物を楽しむ。食べ物は非常に個人的であり、かつ文化的である。食べ物はまたグローバルである。

②『Slow is beautiful 』(2001)辻信一 あとがきより、『ふろふきの食べかた』長田弘

そうして、深い鍋に放りこむ。
そこに夢を敷いておいて、
冷たい水をかぶるくらい差して、
弱火でコトコト煮込んでゆく。
自分の一日をやわらかに
静かに熱く煮込んでゆくんだ。
・・・
こころさむい時代だからなあ。
自分の手で、自分の
一日をふろふきにして
熱く香ばしくして食べたいんだ。
熱い器でゆず味噌で
ふうふういって。

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今回紹介した本はこちら




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