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#79 発見クルベジ!~亀岡発、地球を冷やす野菜~

#事例 #農産物認証

前回の投稿で「亀岡の風景をつくるごはん」について書きましたが、わざわざ亀岡に行ったのは、クルベジが本当に売られているのか確かめたい!という目的でした。直売所4、スーパー1か所をまわったった結果、スーパーで発見することができました。

クルベジ

クルベジは農産物のエコラベルの一種で、以下のように説明されている。

クルベジとは、CO2を削減する営農の取り組みに対して、資金提供者を募り、当該営農にによる農産物に「クルベジ(Cool Vege®)」というブランドのシールを貼付して、一般の店舗で販売し、売り上げの一部が農家に還元される仕組みである。*1

亀岡市はその一例として、放棄竹林での竹炭製造と竹炭堆肥の農地施用による炭素貯留という形でカーボンオフセットを推進している。つまり、炭素貯留をクルベジというブランドにすることで、消費行動を通して地球温暖化の抑制と地域産業の活性化を図ることができるようになる画期的なエコラベルだと言える。

クルベジは炭素貯留による環境保全というコンセプトを消費者に提示しているが、そのコンセプトを消費者が適切に認知し、肯定的に受取るかが成否のカギであるという*1。

なお、クルベジ公式サイト*2によると、クルベジは亀岡のスーパー「マツモト」の2店舗で購入できる。マツモトは亀岡市・京都市を中心に京都府23店舗、大阪府に1店舗を展開するスーパーである。私がクルベジを発見したのは、マツモトうまほり店。入り口を入ってすぐのとことにクルベジコーナーが設置してあった。

以下の写真3枚は全てクルベジラベルが貼られている↓

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下の写真はクルベジと同じコーナーに設置されていたエコやさい↓

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行ったのはこのスーパー↓

炭素貯留と農業

農地の炭素循環
農地の炭素循環は以下のように略説できる。
・光合成によって大気中のCO2が固定される。
・地上部の植物残差や枯死した根が土壌にすき込まれることで土壌中に炭素として固定される。
・土壌中の微生物により分解されると大気中にCO2として放出され、一部は分解されにくい土壌有機炭素となり長期間土壌中に貯留される。

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【図】筆者作成

炭素貯留とは、このように炭素が有機物として長期間土壌に貯留することである。※Carbon Sequestration(炭素隔離)ともいわれる。これにより大気中のCO2濃度を下げること、地球温暖化の抑制が期待されている。

土壌炭素量を増やすには、土壌に堆肥や緑肥などの有機資材をすき込むこと、不耕起栽培をによって土壌有機物の分解を遅くすることが有効である。クルベジでは、竹や間伐材等の地域で使われていない資源を炭堆肥化することで土壌にすき込んでいる。

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簡単な図と説明だったが、農地における炭素貯留が温暖化と関係していることを理解できただろうか?炭素貯留とは何か、また農業と環境とどのような関係があるのかをすぐに理解・想像することは難しい。
*1の消費者行動分析においても、炭を用いた地球環境保全という考え方は、消費者にとってやや理解しにくく、購入動機に直接つながるものではなく、現状では消費者に対して有効に訴求していないと結論づけている。

農産物エコラベル

概要
農産物エコラベル(≒エコブランド)は、一連の農業生産活動、流通過程における環境配慮を消費者に提示するものである。農産物に直接反映されない価値を、ラベルを貼ることで見えるようにし購買行動にむすびつけ、環境配慮のために係るコストを内部化する仕組み(認証制度)ともいえる。(クルベジの価値は炭素貯留による温暖化抑制効果と言える。)

またこのようなエコラベルの仕組みは、単に食品や地域のブランドを表すのではなく、より多くの消費者が参加できる食を通じた自立的な地域フードシステムを実現する活動自体でもある。(太字部分*5*1引用)

環境配慮の例
〇農業生産活動における環境配慮
・有機農業
・環境負荷を軽減した農法である(減農薬・化学肥料など)
・動物福祉に配慮している(畜産)
・遺伝子組み換えでない
・…etc
〇流通過程における環境配慮 ※主にトレーサビリティに関すること
・フードマイレージ
・フェアトレード
・…etc

クルベジは「環境負荷を軽減した農法である」に当てはまる。

どんなものがあるのか?
日本国内における代表的な認証制度にはエコファーマーがある。国・都道府県が運営主体となり、持続性の高い生産方式(減農薬、減化学肥料など)に従って生産をする農家を認定し、その農家が生産する野菜に各都道府県のラベルを貼ることができるというものだ。

その他普段見かけるエコラベルには、有機JASといった国内の認証制度のほかにも、レインフォレストアライアンス、フェアトレードなど国際的に展開しているものもたくさんある。農産物エコラベルは世界中で多種多様に展開しており、そのすべてを把握することは難しい。

Ecolabel Indexという世界最大のエコラベルネットワークが公開しているデータベースには、約103個の農産物エコラベルが掲載されている(2020年1月現在)。

小売店の影響力

エコラベルは一連の農業生産活動、流通過程における環境配慮(という価値)を消費者に提示するものである。しかし、ラベルを貼っても、消費者が理解・賛同して買ってくれなければ意味がない。
エコラベル・認証制度の仕組みを考える方にも工夫が必要だ。食システムの研究や消費者行動の研究を参考にすることもできるだろう。

さらに、スーパーをはじめとした小売店がいかに売るか、また調達するかといったことも重要ではないか。都市の消費者にとっての、エコラベルに接する一番近い存在はスーパーであるから、そのスーパーがどの情報を取捨選択するのか?安全、地元産、環境に配慮している、顔の見える農産物・・・?何を強調させて売り出すののかが消費者に与える影響は大きいだろう。

ちなみにイギリスでは、スーパー独自の環境や動物福祉に配慮した農産物の調達基準を設けて自社ブランドとして販売しているスーパーが多くある。また日本でもイオンが「イオン持続可能な調達原則」を設けている。
地域独自のスーパーの取り組みとしては、徳島を中心に展開する「キョーエイ」の「すきとく市」がある。すきとく市は生産者が値段を決めて好きな量だけ出荷できるという点で農家を応援し、地産地消を広めるキョーエイ独自の仕組みである。環境配慮をコンセプトにしたものではないが、フードマイレージと食品ロスの削減という意味では大きく貢献しているだろう。

環境に配慮した農業を進めるにあたって、エコラベルだけでなく小売店が消費者に与える影響にも注目してみたい。

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キョーエイなどスーパーの取り組みについて(少し)触れている記事はこちら↓

特色あるスーパーについて書いた記事はこちら↓

参考文献

*1 岸本(莫)文紅,須藤重人,田靡祐佑,柴田晃(2017):地域の持続的な食と農を支える農産物エコブランド・スキームの開発に向けて:ランドスケープ研究vol.81(3)

*2 白戸康人:農地への土壌炭素貯留と温室効果ガスの削減のために

*3 農地による炭素貯留について

*4

*5 Kate Clancy and Kathryn Ruhf.(2010):IS LOCAL ENOUGH? SOME ARGUMENTS FOR REGIONAL FOOD SYSTEMS:Choices[Online]21⑴

*6 


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