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おかえり

7月から新しい仕事を始めた。今までの仕事とは違って、週4〜5の8時間勤務の仕事。前の仕事と勤務体系も違うし、職種も違う。わたしが仕事を始めた日は三連休に被っていたので、忙しかった。そこから世間は夏休み、お盆休みに突入し、なんだか毎日てんやわんやで、小学生ぶりに毎日気絶するように眠りについていた。

 お盆休みが終わってひと段落ついた時、松本へ行くことになった。約1ヶ月前母校の文化祭に行った以来の松本だった。1ヶ月。そんなに時間が経っているわけではないのにずいぶん前に行ったきり、のような感覚だった。あまりに今までと違う新しい日々に心と身体が集中しすぎていたのかもしれない。
 
 松本はわたしにとって面白い街。街が面白いというより、そこにいる人が面白い。松本で出会った人は、みんなそれぞれの中で大切にしているものがある人たちだと感じている。それはこだわりだったり、好きなものだったり、ライフスタイルだったり、色々だけど、大事なものを真剣に、大事に抱えている人たちは面白くて、楽しい。
  大事にしたいものをきちんと大事にすることは案外難しい。他人に簡単に否定されることもあるし、否定されることを恐れて、自分から大事なものを蔑ろにしてしまうこともある。忙しくなると忘れがちになるし、扱いも雑になりやすい。そもそもそれが自分にとって本当に大事だったのか?とか余計なことを考えたりもしてしまう。

 ふらふらと松本を歩いていて、ふと思い立ち、栞日に行くことにした。中野道さんの写真展を見に行きたかったのだ。昨年の展示はタイミングが合わずに行けなかったので、今年も展示があると分かった時に絶対に行こうと心に決めていた。1ヶ月刻みで足を運んでいた栞日も久しぶり。
 展示スペースには入り口に中野さんの文章とずらりと並んだ写真に一台のパソコン、感想メモと中野さんの写真集が置いてあった。写真をゆっくり見て、パソコンに目をやる。パソコンには映像が流れていた。その映像を見終えて展示室を見渡した時、鼓動が少し早くなって、泣きそうになった。そして唐突に「わたしはここが好きだ」と思った。バタバタとすぎる毎日に気を取られて忘れていた、わたしの好きな場所。この場所が、ここで出会った人や過ごした時間がかけがえのないものだと、思い出すことができた。
 生活が変わっても、形が変わっても、わたしにとって大事なものは大事なものだ。わからなくなってしまったら、もう一度そこに戻ればいい。何度だって出会える。人に気持ちは移り行くものだけど、大切にしたいことの多くは変わることはないんじゃないかと思う。色々と考えすぎてしまうわたしだからこそ、何度でも戻ってこよう。大事なものが大事だという事実は常に自分の中にあるのだから。

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