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埋没林をめぐる冒険/2日目

2024/05/03

8時すぎコインパーキングへ。一泊1800円、歓楽街の中心部にとめてしまったのは反省。5分ほど歩けば割安なパーキングはたくさんあった。
市街に出るとはなから右折に失敗してしまった上にナビの調子が悪く、修正案を提示してくれない。一晩とめていた駐車場が案内地に設定されており、永遠に右折30mをおすすめされる。一通が多い都心部でナビなしドライブは心細い。赤信号のうちにあわててGoogleマップをひらき沿岸部の震災遺構を目的地に設定する。東に15kmすすみ、ファミマで休憩する。朝ごはんにバナナを3本。昨夜業務スーパーで安売りされていたそれらは腐りかけ寸前、というか半分腐っていたため少し変な味がする。腐ったバナナとうまいバナナは紙一重。でもお腹が空いていたから完食。余裕ができたため、ミネラルウォーターとウェットティッシュ、ペーパータオルでフロントガラスについた鳥のフンと虫の死骸を拭き取る。昨日の昼頃からずっと気になっていたのだが、時間がなくてノータッチだった。小さな羽虫や大きめの蝶(?)の体液がべっとりついている。化石燃料を1人乗りの車で大量に排出、山を拓き、土を削ってできたコンクリートの道路を使って、さらにそこらへんを飛び回る虫の命を奪って移動する意味。いつだかTwitterでみた敬虔な仏教徒は虫を踏み殺さないようにいつだって裸足で歩く。こういうことも死んだ後清算するのかもしれない。
13mの津波が荒浜地区を襲ったらしい。根こそぎはがれた家の基礎部分が保全されている。荒浜小学校は倒壊して危険なプールや体育館を除き、そのままの姿になっている。スズメの巣になっているようであたりには鳴き声が響いて、賑わっている。
綺麗に舗装された駐車場のほかには遺構と市有地の草原が広がっている。さらさらとした砂地にはスベリヒユやヨモギや謎の草(ふわふわしたパステルグリーン)がモコモコと生え、その奥には小高い丘。5.6歳の子供が親と一緒に自転車を練習している。コンクリートの上で練習すると失敗した時に痛そうだなと思う。自分は公園の砂の上で練習していたので、転んだ時に入り込んだ砂利がいまでも膝小僧に食い込んでいるので、どちらがいいとは安易に言えない。
10歳の時の大きな地震がいかに歴史化されているのかその成果と効果に驚かされた。荒浜地区は危険区域に指定され居住することは不可能になった。そうすることがいいのかよくわからない。地震学に知見はないが、おそらく関東地方でも半世紀のうちに大地震が来るとされている。荒浜地区に対する政策と同じように考えるのであれば私の実家だって危険区域じゃないのかな。行政の判断はいつだって合理的で理論的で客観性があると考えてしまいがちだけど、震災時の政策における非公式のポリティカルな関係性を学ぶべきかもしれない。システムと人間の役割について。すでに起こったこととこれから確実に起こりうることについて。など……
仙台港北ICから東北道へ。田植え前の水田にサギやカラスが獲物を狙いに集まっている。雑木林の中にフジの花がたっぷりと咲いている。
一瞬、小高い山と山の間に水田、集落が見える。こういう場所を見るとすぐさま車を降りてじっくりと観察したいのに時速100kmで進むものだから目に焼き付けることができない。もしかしたら一生行くことはないかもしれない場所を一瞬だけ掠めてしまう。近代的な移動が生み出す状況は、幸せなのか不幸せなのかよくわからん。金成パーキングで休憩。セブンイレブンがあることの安心感。小腹が空いていたのでおにぎりを、非常食用にしっとりイチゴクッキーを買う。普段甘いものを(自分でお金を払ってまで)わざわざ食べないので、何を買えばいいのか考えあぐねがち。おにぎりは足が早いし、コンビニのパンはギトギトしていて気持ちが悪い、カップ麺はどん兵衛を家から持ってきたし、
日持ちしてサクッと小腹を満たせてハイカロリー、それでいてたべて気持ち悪くならない食物に対する最適解を未だ見出せていない。カロリーメイトはパサつくし、1本満足バーはチョコチョコしいので苦手。結局しっとりイチゴチョコクッキーを選ぶ。もうよくわからん。よくわからんことばかりだ。一人旅はこうやって自分自身の責任において全てを選択、デザイン可能だからこそ楽しいし疲れるし修行になる!!!と思ってる
セブンを出ると脇にフリルのついた服を着た豆柴が飼い主と共に涼んでいる。ゆるせん。犬に服を、いや犬に機能性のない服を着せるな。もずくを買っていた時母が可愛いからとボーダーやフードのついた服を着させていたがひどくおぞましくかんじて勝手に脱がせていた。子供の頃から着せ替え人形ぽぽちゃんやらバービーやら可愛らしい服を着せられた物体、着せる行為がどうしようもなく苦手だ。犬にフリルのついた服をきせるな。可愛いという感情は注意深く扱わねばならない。
眠気を催しながらも13時30分ごろ事前にチェックしておいた安めのコインパーキングに到着する。駐車下手すぎて2台も待たせたけど2台とものんびりと待ってくれた(ように見えた)。つくづく思う、駐車能力とはクリエイティブスキルだ。狭い空間のなか事前に効率よく駐車するための車輪の軌道を頭の中でえがき同時にハンドルを切り、周囲の車と人に気を配る作業は創造力と機転に満ちた人間でないと難しい。冷や汗をかきながら車を止めて、北上川の上流の川(名前忘れた)沿いに歩いて、目当ての古道具やと書店へ向かう。途中櫻山神社という素敵な神社が街中に現れ、お参りをする。20円ポイ。昨日に引き続き快晴、気持ちがいい。仙台よりも盛岡の方が好きだ。仙台はゴチャついているが、盛岡はビルや公共施設のデザインがシンプルで洗練されている。街の中に川が2本流れている。いずれも鮭が産卵のため北上するらしい。川沿いには枝垂れ柳、土手の下には丈の長い青い草がさわさわと風に揺れ、たんぽぽがぽつぽつとはえている。近所の喫茶店が河原に椅子とテーブルを出している。絶対5月の素敵な気候のせいもあるだろうけどここに住んでみたくなった。冬は長いだろうし、夏は暑いだろうがこの街はいい街である気がする。川沿い裏通りの古道具やにはピンとくるものなし、そのままBOOKNERDへ。独立系書店はよくいくからまあ品揃えはこんなもんよねって感じ。金太郎飴化しつつある、個性を狙ったら無個性?
100万年書房の『速く、ぐりこ!もっと速く!』を手に取って読む。ぐりこさんの人生の進め方があまりにも自分だったので衝動買いする。
冷麺を食べるためバスに乗って盛岡駅方面へ。人気店のため案の定16組ほど並んでいる。でも回転率は悪くなさそうだし、予定よりもはやくついている。加えて道中聞いたキキカイカイの「行列のその先へ」論が面白かったため普段は並ばない行列にチャレンジしてみる。やることはたくさんある。リュックの中には論文が詰まったiPadがあるし、日記も書きたいし、ぐりこのエッセイも買ったばかり。ちょっと考えて日記にする。周りの人の会話が聞こえる、韓国の人が多い。盛岡の方言は仙台よりも抑揚が少なく、発声が低い音だ。30分ほどで入店。お腹が空いているので大盛りを頼もうか迷う、不安になって量を店員の方に聞くと「まあいけるんじゃないの」的回答をもらったので大盛り中辛にする。
今まで冷麺は焼肉の後に食べるもんだとばかり思っていたがここでは単品注文もできる。
麺が普通の冷麺の1.2倍の太さ、スープは牛骨ダシでほのかに甘さを感じる。中辛だからそこまで辛くない、酸味の多いキムチをスープの中でかき回すと味が変わる。網目のついた焼き肉と薬味の乗ったゆで卵、薄切りにされたスイカで味変しつつ、たべすすめる。麺の全長にして60cmほどで満腹になり残す。無念。
バスに乗って金田一駐車場まで戻る。盛岡のバスはわかりやすくてたすかる。ローカルバスにのるのってSuica使えなかったり両替できなかったり謎の整理券システムだったり毎度よそもんであることを痛感させられることがおおい。
眠い気がして目を閉じてみるけれどやはり寝れない。旅に出てから仮眠を取ろうとしても取れない。カフェインとってないのにな。
十和田湖バックパッカーズを指定して盛岡インターから高速道路へ。雲がだんだんと増え、不穏な雰囲気。だが雲間からさす陽光が美しく、車を止めてじっくりと楽しめないのが悔しい。盛岡を抜けると一気に車が減って運転がしやすい。ペースメイカーする人が少なくなるから80制限のところ120とか出してビュンビュン。ナンバープレートを見る限り、地元の人っぽい。
新緑、山なり、曲線、橙色の空、本当に綺麗な瞬間が瞬く間に後ろに過ぎ去っていく。
夕方を過ぎると眠さの峠を越える。だからポッドキャストを聴き始めることができる。(いつも入眠用に何かしら聞くことが多いので、ポッドキャストは眠気を誘って危険なため基本的に歌える音楽を流している。)
メモ:芸人系、ラランド面白い、令和ロマン微妙、ゆりやん微妙、霜降り面白い、Aマッソ面白い、金属バット理解不可能
十和田から降りると暗い。暗い、のにクソデカフキの写真をとったり、ローカルスーパーを物色するものだから十和田湖への道に辿り着いた時には日が暮れている。こわ。
後ろからヒッチャーみたいな殺人鬼きたら怖い、死にたくない。間違えてカーブ曲がり損ねて谷底に落ちるのも怖いし、死ななくとも側溝にハマって山中で夜を過ごすのも怖い。怖いものを頭の中で上げていくともっと怖くなる。しまいには後部座席に誰か座っていたらどうしようとかオカルティックな方向性にビビり始める。まあ怖かったけどラランドが相変わらず下世話だったからよかった。
十和田湖綺麗だった。日が暮れて完全に空が闇に包まれるまでの群青色の時間を眺めることができた。ただ展望台に赤い車が一台止めてあってデザイン的におそらく男性が乗っていそう。襲われたらたまらんと思ってさっさと退散した。男性であったらこんな心配しなくて済むのだろうか。
宿に着くと受付に先客、初老の女性。ロビーには中央アジア系の顔立ちのおじさん、奥の廊下には横綱くらい幅のある欧米系の男性とやや狭くした女性。なんだここは。今までドミトリーは基本的に自分と同年代の若い人々ばかりだったので面食らう。廊下の水道では父方の祖父のような痰の吐き方をする男性がいるしビビる。まじか。なぜ……
隣のホテルの日帰り入浴利用、500円。お得だ。
帰って洗濯、乾燥機を回す。殺伐とした宿泊者間の雰囲気を感じていたがすれ違いざまにおばさんが挨拶してくれた。2段ベッドの私の下に陣取っているおばさんは怖い。普段の生活であまり出会わないタイプは怖くなってしまうのだろう。無駄に怒られたくないので共用スペースで夜ご飯を食べる。
あしたはたなべくん、来るらしい。始発にのって9時30分について10時からオンラインミーティングらしい。なんなんだそのスケジュールは。にしても話し相手が欲しくなってきた頃だったのでありがたい。物言わぬメモよりも生身の人間が楽しい。

 

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