古本100円均一棚の前に立っている時に考えること

古本屋の均一棚は面白い。日に焼けて、角が擦れて、茶色い斑が浮き出ているような種々の本を首筋を日に焼かれながらじっと見つめて手に取って序説を読み、目次を確認し、著者のプロフィールを知り、また戻してを繰り返し、疲れ切って棚を離れることを思い立ったところで、今まで気にもとめなかったような背表紙が訴えかけてくる。引き抜くと自分の過去がその本の現在とパチリと繋がる。忘れかけていた熱が呼び起こされる。レジまで持っていき、あらかじめ数百の本に適用されている金額を払う。どれを選んだって金額は同じである。しかしそこにたどり着くまでの思考と流した汗が出会った本を強化する。それは未読本かさなる棚の奥にも、健忘症に取り憑かれた薄っぺらい記憶の波にも呑まれることはない。

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