観点を変えると、違う世界が見える
こんにちは。
今回は「観点」について考えてみたいと思います。
まずは、次の動画を見てください。
最初は山の上にある道が見えると思います。
山に見えていた絵を180度回転させると、終わりには谷に見えます。
次の写真は2つのものをそれぞれ上から写したものと、横から写したものです。上から見たときには、どちらも「カップっぽい」同じような形ですが、横から見ると違った形、違った用途(湯呑とワインカップ)ということが分かります。
同じものでも、見方を変えると見えるものが変わってくるのです。
私たちは通常、一目見ただけで、湯呑かワインカップかを見分けることができますが、それは、無意識のうちに複合的・立体的に見ているからです。ある視点からものを見るということは、他の要素を排するということでもあるのです。
ものごとについて、ある視点から見えるものだけに限定することは、多くの情報をすてることでもありますが、一方、だかからこそ、異なるものとの「同じ」を見つけることができるとも言えます。
たとえば、次の写真のように、湯呑もワインカップも卓球ボールも、上から見た形に限定すれば、「同じ」です。他の要素を排して、その視点で見えるものだけに限定すると、まったく違うもの同士にも「同じ」を見つけることができるのです。
見方(視点)を変えることが、創造的な発想力に必要な理由がここにあります。
ET理論(等価変換創造理論)では、異なるものの中の「同じ」を見つけるための「視点」のことを「観点」と呼んでいます。
「観点」がなければ、異なるものの中から「同じ」を見つけることはできません。先に説明したとおり、見るものを限定して、どういう点で「同じ」なのかを明確にする必要があるからです。たとえば、蝶の口と同じ何かを見つけようとするときに、観点を「収納方法」とし、見方を限定すれば、「同じ」ものとして、糸や賞状などいろいろ見つかります。
また、たとえば、同じ蝶の口について、観点を「機能」とすると、ストローや給油ポンプなどと「同じ」が見つかります。
どちらの観点でも、もっと探せばもっといろいろなものが見つかると思います。(このあたりのことは、「異なるものの中から「同じ」を見つける力が発想力を伸ばす」に書いています)。
こうして見つける「同じ」とは、上の図で言えば、「イコール」の部分で、ある観点から抽出(抽象化)した「本質」(ある観点での本質)です。
ですから、「観点」を変えることは、同じものの中から別の「本質」を見出すことです。
そして、その「本質」によって、「同じ」である異なるものも変わってきます。
観点という、本質を抽出するための軸があるから「本質」が定まる。だから、その「本質」が「同じ」ものを見つけることができます。つまり、観点があるから、異なるもの同士をつなげて見ることができるのです。
また、このように考えることもできます。
単独では、そのものに関する観点は無数にあり、したがって本質も無数にありますが、別のものとの「同じ」が見つかると、観点と本質が定まります。
たとえば、ツバメの赤ちゃんについて「ある観点での本質」を見つけようと思えば、「鳥(観点:生物の種類)」とか「赤ちゃん(観点:成長段階)」とか、「かわいい(観点:見た目の印象)」とか「エサを親からもらう(観点:栄養の獲り方)」とか「くちばしが黄色い(観点:外見)」とか、「ピーピー鳴く(観点:主な行動)」とかいくらでも見つかります。
それが、たとえば「ツバメの赤ちゃんの口」と「がま口財布」との「同じ」が見つかると、「大きく開閉するしくみ(観点:口の開閉のしかた)」という観点と本質が定まります。
つまり、特定の観点を決めて、そこから本質を抽出し、異なるものの中にそれと「同じ」を発見することもできる一方、逆に、直感的に異なるもの同士の「同じ」を発見することで、新たな観点と本質が見出されることもあるのです。
じつは、これと同じようなことが「ひらめき」の瞬間にも起きています。多くの革新的な発見や発明では、このことが起きています。
りんごが落ちたことから万有引力を発見
お風呂に入るとお湯があふれたことからアルキメデスの原理を発見
などなど。
このnoteでもこのようなひらめきによる開発の事例を紹介してきました。
板チョコからカッターナイフを発想
洗いものの皿に浮かんだ油からガラス製法を発想
保冷用の蓄冷剤からアイスクリームメーカーを発想
タコの酢の物からバスケットシューズを発想
どの場合も、偶然目に入ったあるもの(あること)と、まだ存在していないもの(まだ明らかになっていないこと)の間に「同じ」を見つけたと同時に、新しい観点と本質を見出しています。
このような例を見ると、「異なるものの中から『同じ』を見つける」ことは、単独でものごとを見るだけでは気づきにくい観点や本質を見つけ、革新的な発想を得るチャンスになるかもしれないことが分かります。
あるものについて、「見方を変えると見えるものが変わる」と言えるならば、「『観点』を変える(見つける)と、違う世界が見える」と言えるのではないかと思います。
以前紹介したウォークマンの開発では、もともとあったポータブルテープレコーダーについて、「いつでも音楽を楽しみたい」という新しい観点を導入したことで(ほとんど、それだけで)、まったく新しい歴史的な製品が生みだされました。
創造性にとって新しい観点を見つけることが非常に重要というのは、この例が示すとおりです。
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