「反対」なのに「同じ」ということもある


あけましておめでとうございます。
昨年はコロナで予想もしなかったような1年になりましたね。今年もどうなるのか分からないことが多いですが、少しでもいい年にしていきたいものです。本年もよろしくお願いします。

さっそくですが、今回は、「反対」なのに「同じ」ということについてです。

あとあ

みどり色の字も白抜きの字もどちらも「あ」で同じです。
判子にも文字が朱色になる「朱文」と文字が白になる「白文」がありますね。文字と背景の色が「反対」だけど、同じ文字です。
これは当たり前すぎる例ですが、もう少し複雑なものでも「反対」なのに「同じ」例はたくさんあります。

たとえば、ジョギングとランニングマシンを使ったトレーニングでは、身体を動かして「走っている」のは同じですが、ジョギングでは移動するのは地面の上の走っている人なのに対して、ランニングマシンでは足元のベルトが移動(回転)します。

ジョギングとランニングマシン


とくれば、次はこちらですね。

階段とエスカレーター


階段では、人が自分の力で上がっていきますが、エスカレーターでは人は立っているだけで、足元のステップが上がっていきます。ここでは「上がる」図になっていますが、もちろん「下がる」でも同じです。
固定された階段と反対に、階段のほうが「上がる(下がる)」わけですが、階段(ステップ)が上がりつづけるためには、ランニングマシンのベルトと同じように、階段が輪のようにエンドレスで回るようにしなければなりません。
ベルトとちがって階段状のものをぐるぐる回すのためには複雑な構造が必要です。すごくわかりやすい3Dアニメの動画がありました。

エスカレーターは、「人が上に移動する/下に移動する」という点は階段と同じでも、階段とは全くちがう多くの技術によって「階段の反対」が実現されています。

こんな例もあります。
今は魚を焼くときは魚用のロースターを使うことが多いと思います。でも、1960年代くらいまでの日本では、珪藻土でつくられた七輪で炭火をおこして焼くのが一般的でした。おいしく焼けるのですが、魚の油が炭の上に落ちて煙がもくもく出るので、庭や路地など屋外で焼くのが定番だったそうです。

画像4

でも、高度経済成長の中で、都市部では集合住宅が増え、急速に人々の生活様式が変わっていく中、煙の出ない魚焼き器(ロースター)が開発されました。
煙を出さないために考えられたのは、熱源を下から上にすること、つまり熱源と魚の位置を反対にすることでした。上から焼けば、油が下に落ちても煙は出ません。

七輪とロースター


でも、魚焼き器は七輪の熱源の位置をただ反転させただけではありません。熱源は電熱器で、下に落ちる油の受け皿がついていたり、それに適した形になっています。炭火をおこさなくていいので便利になり、室内で簡単に魚が焼けるようになりました。
一方、焼き上がりは七輪で焼いたおいしさには叶わないため、今では炭火や珪藻土の赤外線効果を補うなど、いろいろな改良が加えられた魚焼き器があります。
七輪と魚焼き器も、図にしてみるとシンプルですが、まったく違う技術によって作られています。

つぎに、エネルギーの入力(インプット)と出力(アウトプット)が逆になっている例です。
扇風機と風力発電です。扇風機は電力を入力して羽根を回し、風を起こします。風力発電は風のエネルギーで羽根を回し、発電します。羽根の回転を挟んで、電力と風のエネルギーのと入力と出力の向きが反対です。

扇風機と風力発電

もう一つ、エネルギーの入力と出力が反対になっている例を紹介します。水車と外輪船です。

水車と外輪船


(水車写真はphotoACさんより。外輪船の写真は、琵琶湖で外輪船を就航している琵琶湖汽船のHPから使わせていただきました。外輪を真上から見られるスポットもあるそうで、水を押して船が進む様子をじっくり観察できそうです)

水車は、川などの水の流れを板で受け止めて水車を回し、垂直に回転する運動を機械的に水平の回転に変換して、日本では精米や製粉に利用されてきました。お蕎麦屋さんに水車小屋があったりますよね。水車の回転する力を利用して石臼を回し、じっくりそばの実を挽いて作ったそば粉はおいしいそうで、今でも実際に水車を使って製粉しているこだわりのお蕎麦屋さんもあります。
最近では、水車は発電に利用されることが多くなりました。水車の回転するエネルギーで発電します。風力発電とまったく同じ原理です。
外輪船は、エンジンの動力で水車を回し、つぎつぎに水を押してその反作用で進みます。カヌーのパドルと同じ原理です(外輪船の「水車」部分も「パドル」と呼ぶそうです)。
水車は、水の流れをエネルギーとして取り出して、そのエネルギーを製粉や発電という目的に使っています。外輪船は、エネルギーを使って水車を回し、水の上を進むために利用しています。
エネルギーの入力と出力を逆にすることで、まったく違った目的を達成しています。

以上、「移動するものが反対」「熱源の位置が反対」「エネルギーの入力と出力が反対」の例を見てきました。因果関係や位置、エネルギーなど、1つの要素が逆転しているだけで、まったく異なる技術の開発につながったり、まったく異なる目的が達成されていたり、ダイナミックな違いが生まれていることがわかります。

身の回りの技術や物事についても、なにか1つの要素を逆転して考えてみると、まったく新しいものが見えるかもしれません。柔軟な発想力のために「逆さにしてみる」ことはおススメです。


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創造理論「等価変換理論(Equivalent Transformation Theory =ET理論)」による子ども向けプログラムを開発・実施。創造性は生きる力につながります。ここではET理論の基礎となる考え方や、その視点から考えたことを書いていきます。等価変換創造学会準会員。