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映画「天外者(てんがらもん)」を10倍楽しむために 令和の天外者・三浦春馬

天外者(てんがらもん)。すごい才能の持ち主。

『映画「天外者(てんがらもん)」を10倍楽しむために』としてきた一連のシリーズでは、主人公・五代友厚の思想的背景や登場人物との関わりについて、これまで書いてきました。

「天外者」で描かれる五代友厚は、幕末から明治初期にかけて激動の時代を駆け抜けた、日本を世界に並ぶ国にするために奔走した実業家です。

彼の見つめた未来、実現しようとした「世界に負けない国・日本」は当時(今でもですが)、非常にスケールの大きな思想に基づくものでした。

その「天外者」五代友厚を演じる、三浦春馬さんは、ただのイケメン俳優ではない、唯一無二の天外者であるということを、何度も言葉を変えてこの場で語ってきました。

ここでもう少し具体的にどのような点が五代友厚に重なる「令和の天外者」と言えるのか、綴りたいと思います。

役者としての才能

ドラマ「14才の母」あたりから、注目度が高まった三浦春馬さんですが、昔の作品を観る限り、若い時からドラマや映画で、繊細な表情による細かな演技をする方だったことが分かります。

しかし、実は素晴らしいのはその進化ぶりだと個人的に思っています。

10代のころの演技力も十分素晴らしいのですが、年々表現力が上がっているのです。どこがどうというのは、細かすぎてなかなか伝えづらいところがありますが、感覚的に例えるならば10代初期のころの作品は水墨画、近年の作品の春馬さんの演技は、まるで印象派の画家が描いた油絵です。

それぞれの良さがありますが、最近の作品では、観ているこちらに油絵の具を幾重にも重ねて表したような、微細なニュアンスが伝わってきます。

演じている人の感情、その人の抱えるもの、相手に抱いている複雑な感情。そして高めたスキルを十二分に発揮して、対峙する相手の演技レベルをも引っ張り上げるような、その表現力は彼自身のみならず、作品の質そのものを向上させている、そんな役者でした。



ミュージカル俳優としての才能

テレビドラマで、定期的に主演している役者さんは、それほどたくさんいません。主演映画が複数ある役者さんも少数派でしょう。ではその両方で主演を張れて、なおかつ舞台で活躍する俳優さんは?と問われて、ぱっと思いつく方は何人いらっしゃるでしょうか。

小栗旬さん、藤原竜也さん、高橋一生さんなどを思い浮かべた方が多いでしょうか。数としてはかなり少ない印象です。

では、これに「ミュージカルの主演ができる」という条件を付けくわえたら、どうでしょう。どなたか、思い浮かぶ方はいらっしゃるでしょうか。

ミュージカルというと、思い浮かぶのは井上芳雄さん、山崎育三郎さん、女性では新妻聖子さんなど、きちんと声楽を学んだ方ばかりです。

高橋一生さんも先日「天保十二年のシェイクスピア」で音楽劇をやっておられますが、拝見していないので実力の程が分かりません(Blue-rayは購入しましたので後で確認)。

三浦春馬さんは、若いころから地球ゴージャスのミュージカルに2本出演し、日本版「キンキーブーツ」では、ローラという難役を初演と再演の2回こなしておられます。

15センチはあろうかというヒールを履いて踊るだけでも大変な役を、類稀なる歌唱力と培った確かな演技力で、見事にやってのけたのです。

ヒールを履いて日常生活を送った等、彼が出演した番宣で語ったことばかりが、クローズアップされがちです。しかし、元々春馬さんは歌がお上手とはいえ「ブロードウェイミュージカルの日本上演」に恥じぬ歌唱を舞台で披露するというのは、全くレベルの違う話。非常に高いモチベーションを持って臨まなければ、なし得ないことです。

2013年夏ごろにニューヨーク・ブロードウェイで観た「キンキーブーツ」で、ローラを演じたビリー・ポーターに「雷に打たれたような衝撃を受けた」と語っており(Kinky Boots Haruma Miura Tribute movieより)、思い入れの非常に強い役だったことが分かります。

どうしてもローラを演じたいと、自らオーディションを受けて手にしたその役は、彼の俳優人生において大きな意味を持つものでした。彼を中心に作り上げられた日本版「キンキーブーツ」は、今も多くの人の胸に刻まれている、素晴らしい舞台だったのです。

その後、コロナウィルスの流行で途中休演となってしまった、「ホイッスル・ダウン・ザ・ウインド」においても主演。2020年冬には、「イリュージョニスト」の主演も控えており、三浦春馬さんはミュージカルスターとしての階段を、昇り始めたところでした。

テレビドラマで主演、映画で主演、舞台(ストリートプレイ「罪と罰」)で主演、ミュージカルでも主演。

こんな人、他にいるでしょうか?? 少なくとも私は1人も知りません。彼のミュージカルの舞台で発揮される歌の実力は、「イリュージョニスト」のトム・サザーランドが直々にオファーしたことからも分かるように、「そこらのイケメン俳優がミュージカルに出てみた」というレベルではありませんでした。

この時点で、すでに「天外者」と呼んで全く差し支えないと思うのですが、彼にとって「役者」というフィールドは、あまりに狭かったのだと感じさせる活躍ぶりを、ここ数年は発揮し始めていたのです。


歌手(シンガーソングライター)・ダンサーとしての才能

ご存知の方も多いと思いますが、三浦春馬さんは昨年、主演ドラマ「TWO WEEKS」の主題歌としてファーストシングルを出しています。

とても音域が広く、声量豊かな、優しく響く声。これほどの実力を持っていると知らなかった方も大勢いたのではないでしょうか。

デビューシングル「Fight for your heart」を発売する前も、ハンサムライブという、事務所主催のライブイベントでは歌声を披露していたようですので、そちらのファンの方はご存知だったことでしょう。

私は舞台2本で知りました。春馬ローラの歌う姿は圧巻でしたから、ドラマの主題歌を歌うと聴いた時、他の俳優さんが歌を出すと聞いたとき以上の期待感は、ありました。しかしそれでも、FNS歌謡祭で歌う映像を観た私は、度肝を抜かれてしまったのです。

えっと・・・ダンスも上手いとか聞いてないし。というのが第一印象。しかもあの声量で生歌歌いながらキレキレのダンスって、どんな心肺してるのさ!と続けてツッコみたくなるほどのパフォーマンス。同じFNS歌謡祭に出ていた、歌手が本業の方はどう思われたでしょう。ぜひ感想を聞いてみたかったです。

でも良く良く考えてみると、この春馬さんは「平常運転」。度肝を抜かれたのは、私の想像力の欠如によるものなんです。

だって、「キンキーブーツ」であんな靴履いてあんなパフォーマンス、見せてくれてたんですから。

その後のセカンドシングル、「Night Diver」ではコンテンポラリーダンス。これほどしなやかに踊れるとは。歌とダンスと演技力で魅せる「Night Diver」のミュージックビデオは、今までの俳優としての枠を超えた芸術作品に仕上がっていて、ますます驚きました。

セカンドシングル収録の「You&I」では、ご自身で作詞作曲をされています。詩の世界観にあふれる深い愛情、知り尽くした自分の音域にあった楽曲(どうやって作曲したのか? ギターが弾けるのでギターでしょうか)に、甘く優しい声がとても心に響きます。

そして、他のnoteでも触れましたが、春馬さんは本当に声の使い分けが巧みなのです。この曲でも声を見事に使い分けています。

初の作詞作曲とは思えないクオリティ。どこまで才能豊かなのかと、ただただ驚き、唖然としてしまうほどです。


その他の才能

47都道府県を回って、47のメイドインジャパンについて取材した「日本製」の出版、「世界は欲しいものにあふれてる」でのMCなど、活躍の場を様々な領域に広げていました。本当に、私の想像をはるかに超える領域まで、才能を発揮し続けていたのです。


すべてに共通するもの

ここまで見てきたすべての分野について、三浦春馬さんの才能が豊かであったというだけでもすごいことなのです。

でも、本当に素晴らしいのは、単に才能に恵まれていたことではありませんでした。春馬さんがその才能に胡坐をかくことなく、常に自分の目標に向かって着実なステップアップをする人だったことこそが、称賛に値すると、私は思うのです。

驚くべきことに、春馬さんの頭の中では「すべてがつながっていた」と私は考えているのです。演技のスキルを上げること、「日本製」の取材で国内の地場産業に目を向けること、歌のスキルを上げること。すべては、「血の通った日本のエンタメ産業を盛り上げるため」という彼の志のためにやっていたことだったのではないか、と。


まとめ

令和の天外者、三浦春馬さんが演じる「天外者」五代友厚。二人が重なって見えるのは私だけではないはずです。

きっと、たくさんの春馬さんのファンが二人を重ね、まるで映画「天外者」の五代友厚が春馬さんそのものであったかのように感じるのではないか、そんな気がするほどに期待が高まっています。公開まであとわずか。ワクワクしながら、当日を待ちます。


追伸 春馬くんへ

最後に一つだけ本音を言わせてね。

映画「天外者」の予告動画を観るたび、見たことのない春馬くんの姿に心震わされています。

でも、この映画の宣伝のために、いつものように一言一言丁寧に言葉を選んで紡ぐあなたの姿も、笑顔で舞台挨拶に立つあなたの姿も見られないことが悲しくて、寂しくて、悔しくてたまりません。

きっと春馬くんの心は翔平さんや西川貴教さんとともにあると自分に言い聞かせてはいるものの、本当はあなたに会いたくてたまらないんだよ。

今はただ、唯一無二の表現者・三浦春馬がみんなの記憶に残ってくれるように、「天外者」五代友厚を演じたあなたの素晴らしさが一人でも多くの人に届くように、祈り、語り続けます。それが、いまの私にできることだと信じて。

愛を込めて。

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