見出し画像

バッド・ジーニアスとお父さんの愛

親の愛はすごい。どんなに間違った方向に行きそうになっても、地の果てまで堕ちたと思えても、親が受け入れ、大丈夫だと言ってくれることで救われるのだ。もちろん親だけじゃなく、そのくらい深くそのままの自分を受け入れてくれる人が一人でもいれば。

タイ映画「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」タイ映画は多分初めて観たけれど面白い。エンターテイメント度のすごく高い良作でした。

前半はコメディータッチで軽めのカンニング劇が繰り広げられて、ライトな気持ちで笑いつつツッコミながら楽しめる。けど、このままこれが続くならちょっと物足りないな、、なんて思っていたらどうだ。次々と畳み掛けるスリリングな展開へと加速していき、口元を押さえながら「え〜それはやばいよ〜」とアホな奇声を上げるしかない状態に。やっぱり、悪いことはできないですね、、完璧かと思われた計画、段取りも、いざ実行となると、そりゃそうなるよね、、と想定外のピンチのオンパレード。もう笑うしかない、そして胃が痛い。悪事に手を染める人って、こんな風に深みにはまっていくのかもしれない。自分の人生では起こり得ない(起こらないでほしい)状況を主観で味わえる「映画」って、本当に面白いな。自分の生きていない人生を味わい、そこから学ぶことができ、あらゆる人生を生きてみることができる。とりあえずカンニングはしないでおこうと思う。

ストーリーとは関係ない話だけど、歩道橋の上で主人公たちが夜中に話している場面、隙間から見える夜の道の色や聞こえてくるクラクションの音に、一気にタイの空気がフラッシュバックして、うわあ、行きタイ、、となった。タイの屋台料理や家庭料理、食事シーンなどにも期待していたけど、そういえば一切出てこなかった。室内のシーンがほとんどで、タイの空気を感じる場面が少なかったけど、なぜか歩道橋のシーンにはグッときた。

人は意外と簡単にダークサイドに堕ちる。恨み、僻み、嫉み、裏切り、失敗、絶望、、、要素は拾おうと思えばいくらでも溢れてるし降りかかる。主人公リンにとってのお父さんのような存在がいれば、きっと踏みとどまれるんだろう。リンのお父さんが良い人でほんとうによかったよ。お父さん、ありがとう。映画中で最も不運でかわいそうなことになったリンの相方バンク。彼もきっと大丈夫だろう。そう思えるラストでよかった。