ショートショート7 「君を助けたい」
ズボンのポケットに入ったスマートフォンが左の太ももに振動を与える。
その振動が体の中から脳に届き、頭を揺らす。
スマートフォンの画面は“親友”の屈託のない笑顔と名前を映し出していた。
遊びの誘いだろうか。
あいにく今の僕は少し忙しい。
大学の卒業論文の提出が来週に迫っている。
作業の邪魔をされたことに対する僅かな抵抗として、緩慢な動作で電話に出る。
「もしもっ」
「礼、今どこ、すぐ来て、たのむ」
僕の声を遮るように、彼が話し出す。
急に電話を掛けてきてこの態度はいかがなものか