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衝動に従え #センセイを捨ててみる。
15時45分。
予感がした。
隣の席の同僚が口を開く。
「センセ、今日私4時に帰っても――――」
思った通りだ。
どう見積もっても、今日は早く帰りたい日のはずだ。
1週間の疲れがたまっているんだから。
同僚の言葉を制するように畳みかけた。
「いいね。オレもそう思ってた。帰るぞ、4時に。」
(その先は言わせない)
どんな使命感に駆られるとそう思うのかよくわからないが、
とにかく、2人の教師の思いがシンクロしたのは確かだ。
「え~、帰るの~? オレもそうしようかな~」
他の同僚も乗っかった。
(伝播し始めたな)
今日の仕事は終わった。
来週の予定も確認済みだ。
パソコンをロッカーにしまい、
退勤簿をクリックする。
16時00分。出だしは上々だ。
暑さにやられた車に乗り込み、床屋へと走らせる。
行先はもちろん、千円カットだ。
妻と娘は美容院だが、オレは千円カット。
虐げられているわけじゃない。
小遣いの問題だ。
店のドアを開け、予約簿に名前を書き、
1,300円を券売機に入れ、チケットを受け取った瞬間だった。
「お待たせしました。どうぞ」
間髪入れずに声をかけられた。
待ってなどいない。
ふと店内を見ると、待機客が1人もいない。
いつもは4,5人は必ずいるのに。
(待ち時間ゼロだなんて。もしかしてツイてるのか?
帰りにアイスでも買ったら「当たり」が出るかもしれない)
ささやかな喜びを夢想しながら席に着く。
「いつものように、両サイドと後ろを3ミリでいいですか?」
「はい。暑くなったんで、夏バージョンでお願いします」
「わかりました。夏でいきます」
目を閉じる。
この店には全幅の信頼を置いている。
20分後に目を開けた時、
私は「夏」になっているはずだ。
チョキチョキチョキチョキ。
鋏の音と、容赦なく顔面に降り注ぐ髪。
帰って風呂に入ることだけを考え、その時を待つ。
「お待たせしました。こんな感じですが」
合わせ鏡で確認する。見事だ。「夏」以外の何ものでもない。
「弘法モデルを選ばず」と言うが、千円カットはあなどれない。
店を出た瞬間、肩で風を切って歩き始める。
改めて、床屋の偉大さを垣間見た思いだ。
誰も見ていないのに、客を調子づかせる力を持っている。
帰宅して、ドアを開けようとした瞬間、
内側からカギを開ける音がした。娘だ。
「あれ? わかった?」
「そんな気がした。」
16時45分。
この時間に父親が帰ってくると思っているところが恐ろしい。
いや、私の早上がりが家族にも定着したと考えるべきだろう。
「散歩に連れてく。リードつけといて」
そう娘に言い残し、
短パンに履き替え、
風呂の予約をして愛犬とお出かけ。
(10分で決める)
何を決めたいのかよくわからないが、
そう誓った私は近所のショートコースを選んだ。
草むらを抜け、川沿いを歩き、橋を渡る。
灼熱の西日に照らされて、
愛犬は舌を出し、私はドロドロ状態。
帰宅と同時に、大音量で17時を知らせるチャイムの音が鳴り響く。
田舎でよく聞く、アレだ。
そしてこの音は、愛犬にとっては晩メシの合図。
「こいつにメシ食わせてやって」
そう言い残し、風呂場へ直行。
湯船に浸かって時計を見ると、17時05分。
わずか1時間で、すべての夢が叶った。
こんなささやかな夢なら、何度でも見ることができる。
やり方は簡単だ。
衝動に従え。
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思いつきと勢いだけで書いている私ですが、 あなたが読んでくれて、とっても嬉しいです!