遥美沙樹のメヲミヒラク#09「ある男の旅」
「どうして大切な人は1人にしなきゃいけないの?」
男は言った。
その声は幾度にも渡って投げかけた問いにも感じられた。
しかし今まで男の耳の奥に届く反対論を唱える声は、聞こえなかったのだと思う。
私は返す。
「同等ではないからじゃないですか?ひとりは社会的に認めた立場があり、ひとりにはそれがない。つまりそこに格差がある。」
なぜこの話題になったのか、経緯はよく覚えていない。
12年連れ添った妻とは、もう何年もSEXしていないという、所謂よくある話からだった。
私は何故しなくなったのかと聞いた。
男は、妻がSEXがあまり好きではないようだからと答えた。
求めはしないけど、もし求められたら喜んで受け容れると言った。
いつからしなくなったのかと私は聞いた。
男は答えた。
「子供だね……。2番目の子供が出来てから…。」
それ以上はなんとなく重い空気が、具体性を物語っていた。
しかし男は機転を返した。
「でも、今でも妻のことは愛しているし、たまに子供預けてデートもするし、結婚生活にはなんの不満もないんだよ。SEXはないけど、きちんと繋がっていると実感しているし毎日充実しているんだ。」
男と女は、生活という運命を共有すると、その領域にたどり着くのか…。
生活は妥協の連続という。
家庭は社会だという人も。
そこにある愛とは、どんなものなのか私は知らない。
しかし私はひとつの疑問を男に投げかけた。
「じゃあSEXはどこで処理してるんですか?」
風俗でも、セフレでもワンナイトでもないと彼は言った。
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